ときどき巷で話題になる「高学歴なのに仕事ができない人」。本来は能力が高いはずなのに、なぜ職場で力を発揮できないのか。
12月に新刊『学力よりコミュ力』を刊行したお笑いコンビ・ロザンの菅広文さんは、学力が高い人ほど"問題を出される環境"に慣れているため、社会に出たときに自ら課題を見つけられず、結果として指示待ちになりがちだと指摘します。
では、社会人として自分の得意を見つけ、活躍の場を広げていくにはどうすればよいのか。詳しく話を聞きました。
「高学歴なのに仕事ができない人」が存在する理由
――タイトルにあるように「コミュ力」が今回の書籍のテーマですよね。冒頭で、学生までは"学力"、社会人になると"コミュ力"、そして社会人の後半になってくると再び"学力"が大切になる、と書かれていたのが印象的でした。
学生は学力、社会人になったらコミュ力というのは、一般的な共通認識としてありそうです。一方で、社会人後半になると学力が必要、というのは、なぜそうお考えになるのでしょうか?
【菅】学生のときって「問題が出される」じゃないですか。それを解くのが学力だと思うんです。
でも、社会人になると、どこに問題があるかを自分で発見しないといけない。ここはコミュ力の領域やと思うんですね。
で、その見つけた問題を「どう解決するか」という段階になると、もう一回"学力"が必要になる。問題さえ出てしまえば、それを解くのは学力なんです。
――どこに問題があるかをみんなで探るのがコミュ力で、それを解くときに"学力がものをいう"んですね。
【菅】そうですね。仕事って、そういうものなんちゃうかなと思っています。
「学力が高い人ほど」、出された問題を解くことには慣れているんですけど、「問題を作ること」には慣れていないことが多いんです。
「なんでこの人、学力は高いのに仕事はあんまりできへんのやろ?」って思う場面ってあると思うんですよ。
問題を解いた経験がたくさんあるからこそ、「問題を見つけられない」という側面もあるし、「問題出され待ち」になってしまうところもある。
つまり、指示待ち人間になってしまう。
――指示されたらすごく動けるけれど、自分からは動きにくい、という状態ですね。
【菅】そうそう。でも、40代くらいからもう一回花が咲くんちゃうかな、とも思うんです。
それまでに蓄えた学力や経験が、そこで一気に効いてくるタイミングがあるんじゃないかなと。
――花開くまでの間、学力の高い人は、どのようなことを意識したらいいと思いますか?
【菅】やっぱり「(仕事上の)問題を探すこと」じゃないですかね。
それ自体を「問題を探すという問題」として捉えるのもありだと思います。
自分の得意なほうに持っていくのは、人生で一番いい方法やと思ってます。
今、「仕事ができない」と悩んでいる人がいたとしたら、「問題を探すこと」をまず自分の課題にしてみるのは、すごくいいんじゃないかなと思います。
できないことをできるようにしても“元々できる人”には適わない
――菅さんはご自身のことを"中学歴"だとおっしゃっていますね。そのなかで培われたのが、「すぐにできそうなことは取り入れて、継続する」という方針とのこと。その考え方に行き着いた経緯や、きっかけは何だったのでしょうか。
【菅】やっぱり、芸人の世界にいるからやと思いますね。
うちの世界って、基本的に「長所を伸ばす」しかやりようがないんです。短所は捨てる。逆に短所が長所になったりもするんですけど。
できないことをできるようにしても、もともとそれが得意な人には、どうしても敵わないじゃないですか。だから、「自分ができることをいかに早く見つけるか」が勝負なんです。
20代のときなんて、周りも「菅が何ができるのか」がわからないから、何でもさせてくれるんですよ。それが吉本の強みでもあると思うんですけど。
「菅さん、これどうですか?」「これ、やってみませんか?」と、ロケでも企画でもいろいろ振ってもらえる。やっていくなかで、「これは向いてるな」「これは向いてないな」が見えてくる。すごくいい経験をさせてもらいました。
最終的に、道案内の番組も含めて、「向いているものだけが残っていった」感じですね。
――選択肢をたくさん与えてもらえたのですね。
【菅】社会人も、最初のうちはいろいろやらせてもらえることが多いと思うんです。その中で「自分が得意なもの」を見つけるのが一番いい。
ただ、「得意なもの」と「自分が好きなもの」を混同しないほうがいい。
――それはどうしてですか?
【菅】例えば、営業があまり好きじゃなかったとしても、会社から「営業をやってほしい」と言われたら、それは「営業が向いてる」ってことなんです。
「できること=好きなこと」ではない。もちろん、その二つがイコールなら最高ですけど、そうじゃない場合も多い。
だから、まずは「やってみる」。意外とやっているうちに好きになったりもしますからね。
菅さんが“自分の得意分野”に気づいたきっかけ

――菅さんご自身は、「自分の好き」とはギャップがある仕事を頼まれたことはありますか。
【菅】MBS「よんチャンTV」の番組「道案内しよ!」なんか、まさにそうですよね。
最初は「なんやこの企画」と思いましたもん(笑)。
あれ、実は前日ぐらいに決まった企画なんですよ。それまでにも何回か別の企画をやっていて、あんまりうまくいかなかったんです。
たとえば「雪国に行って、ほっぺたが赤い子を探してくる」とか。「頭から湯気が出ている子を探す」とか、そういう企画をいろいろやっていて。
その中の一つとして、「道に迷っている人を探して助ける」っていう企画が出てきたんです。
正直、「これもまたあかんのちゃうの?」「道に迷ってる人なんかおる?」って思ってました。まだスマホもそこまで普及していない15、6年前の話なんですけどね。
――普段、道に迷っている人をあまり意識しないですもんね。
【菅】そうなんですよ。でも、ロケで街に出たら、地図のところに人がけっこういて、「むっちゃおるやん」と。
やってみたら、「あ、俺、知らない人と喋れるんだ」「初対面の人と話すの、そんなに苦手じゃないな」と気づいて。
それまでロケの経験はあまりなくて、どちらかというと「決まった相手」と喋る仕事が多かったんです。でも、道案内のロケをやってみたら、「あ、これは向いてるな」と思えたんです。
「見つけてもらった長所」でもあるし、「自分で気づいた長所」でもある。そういう意味で、すごく大きなきっかけになりました。
――ちなみに、初めて会う人と話すとき、観察しているポイントや、会話のきっかけにするために意識していることはありますか。
【菅】僕は爪を見ますね。
爪を見ると、ある程度その人の仕事がわかるんですよ。
女性の方で爪が短く整えられていたら、だいたい看護師さんか美容師さんなんです。
だから、目を見るのが苦手な人でも、爪を見るのはけっこう有効なんじゃないかなと思います。
僕はロケのとき、パッと爪を見て「この人、こういうお仕事かな」と想像して、そこに話を持っていくことが多いですね。
ロケ以外で、普通の仕事や生活で意識していることという意味で言うと......やっぱり「挨拶」ですかね。
すごく基本的なことなんですけど、しっかり挨拶すること。それが一番のコミュニケーションかな、と思います。
(取材・編集:PHPオンライン編集部 片平奈々子)








