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生き方

誰からも必要とされていない...ネガティブ思考に陥らない“メタ認知”の鍛え方3選

衛藤信之(心理カウンセラー)

2025年12月26日 公開

誰からも必要とされていない...ネガティブ思考に陥らない“メタ認知”の鍛え方3選

何かに失敗したとき、誰かから批判されたとき、「自分はダメなんだ...」と必要以上に自分を責めてしまうことはありませんか?そうしたときには別視点で物事を見たり、考え方を変えたりすることが大切だと、心理カウンセラーの衛藤信之さんは語ります。

自分の言動や表情、態度を客観的に観察する。これを心理学では「メタ認知」と呼びますが、日常でも意識すれば鍛えられるとのこと。本稿では、衛藤信之さんの著書『傷つかない練習』より、不安な感情に左右されないための「メタ認知の鍛え方」を紹介します。

※本稿は、衛藤信之著『傷つかない練習』(大和出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

些細なことでずっと落ち込むときのリセット術

誰かに批判されたとき、頭の中で「全員に否定された」とイメージを膨らませてしまうことがあります。でも、実際には、それはひとりの意見に過ぎません。「この人の意見=世界の意見」ではない。つまり、「この人がそう思っている」だけであって、「世界がそう決めた」わけではないのです。

僕はよく「所詮、この人の意見でしかないからね」と、インナー心理カウンセラーから冷静に声をかけてもらいます。このサポートの言葉は、感情の炎を一歩引いて眺めるためのスイッチになります。

<リセットを早くするための3ステップ>

①事実と解釈を分ける

「今感じていることは事実か? それとも私の解釈か?」とインナー心理カウンセラーに問いかけてもらいます。

②土俵から降りる

相手が感情的でも、同じ土俵で応酬しない。目的を見据え、話題を「どうすれば解決するか」に戻します。

③ 別視点を探す

出来事を別の角度から見直す。「ステキな人ならどうするか」「どんな立ち振るまいか?」を考える。

 

「失敗というレッテル」を終わらせる

多くの人は、物事がうまくいかなかったとき、すぐに「失敗した」と自分にレッテルを貼ります。しかし、その「失敗」という言葉は事実ではなく、出来事に対する解釈です。解釈の仕方を変えるだけで、同じ経験を「成長の材料」に変えることができます。

有名な話ですが、トーマス・エジソンは電球を完成させるまでに何千回もの試行錯誤をくり返しました。記者が「何度も失敗して大変でしたね」と尋ねたとき、エジソンはこう答えました。「失敗したのではありません。うまくいかない方法を1000通り発見したのです」

同じ出来事でも、「失敗」と呼ぶか「発見」と呼ぶかで、その後の行動は大きく変わります。失敗というレッテルは、過去の一点を切り取って未来をせばめてしまいます。ひとりのマイナスな評価を、世界の評価にしないことは大切です。

ある女性が第一志望の会社に不採用となり、「私は社会に必要とされていない」と思い込んでいました。詳しく聞くと、応募したのはその会社だけ。それなのに、その一社からの不採用を「社会全体からの否定」と拡大解釈していたのです。

恋愛でも同じです。ひとりに振られたことを「誰からも愛されない」と結びつけてしまう。冷静に考えればそんな証拠はどこにもないのに、感情は失敗というレッテルに絡め取られてしまいます。心理学では、こうした思考パターンを「過度の一般化」と呼びます。一部の経験を全体に当てはめてしまう傾向です。

・一度のミスを「私はいつもダメだ」と決めつける

・ひとりの否定を「全員に嫌われた」と解釈する

この歪みを修正しない限り、「ダメな自分」は何度でも再生されます。ですから失敗を「終わり」とせず、「通過点」に変えるためには、次のように言葉を置き換えます。

・うまくいかなかった→新しい改善点を発見しただけ

・認められなかった→別の場で試す機会が生まれた

・否定された→違う視点から見直すチャンスだね

こうすると、感情は落ち込みよりも前進のエネルギーに変わります。

<失敗の書き換え法>

①最近「失敗」と感じた出来事をひとつ書く

②そこから得られた学びをひとつ挙げる

③その学びを生かせる次の機会を考える

このワークをくり返すことで、「失敗=価値の低下」ではなく、「失敗=材料の追加」という感覚が身についていきます。

 

「人生はプロセスであって、ゴールではない」ことを知る

多くの人は、人生を"どこかに到達するための旅"のように考えています。就職、結婚、昇進、マイホームの購入......。こうした節目に到達すれば「もう安心」「これで幸せ」と思いたくなるものです。しかし実際には、そこに到達した瞬間から次の課題や悩みが現れます。人生は一本道のゴールではなく、続いていくプロセスそのものなのです。

ある男性が、職場で「誰からも嫌われない人間になること」を目標にしていました。最初は周囲と良好な関係を築けているように見えました。ですが、彼の心は常に疲れていました。なぜなら、この目標はゴールのないマラソンのようなものだからです。好き嫌いの他人の心はコントロールできず、また全員に好かれることは不可能です。

この状態は、心理学でいう「条件付き自己価値」と呼ばれます。「〜されなければ自分に価値がない」と思うと、行動や人間関係は苦しさでいっぱいになります。

・成功しなければ価値がない

・多くの人に認められなければ人生に意味はない

・誰かに愛されなければ、人生は砂漠だ

これは「他人軸」の生き方です。大切なのは、他人との比較ではなく、過去の自分との比較です。

・去年より少し冷静に話を聞けた

・昨日より落ち込む時間が短くなった

・前回よりも感情をコントロールできた

こうした小さな変化こそが、プロセスを歩んでいる証です。「人生は、過去の自分を少しずつ超えていくための旅」だと捉え直すことができます。他人の目標や価値観に自分を合わせても、本当の満足感は得られません。

登山家は頂上だけを目指しているわけではありません。道中の景色や空気、仲間との会話、体力を使う充実感。それらすべてが「登山の楽しさ」だと知っています。人生のプロセスも同じです。思いがけない回り道や困難も、そのときの自分を形づくる大切な一部。それを味わい尽くす人ほど、心はしなやかに育ちます。

プロフィール

衛藤信之(えとう・のぶゆき)

心理カウンセラー、公認心理師、日本メンタルヘルス協会代表

幼少期に心理学に興味を持ち、アメリカで臨床心理学やサイコセラピーなど、多くを学ぶ。アリゾナでネイティブ・アメリカンと生活をし、生きる上での大切なことを知る。理論中心の心理学の学派を離れ、カウンセリングの現場で感じたことを提供している。代表を務める日本メンタルヘルス協会の卒業生は30年で5万人超え。
主な著書に、『心時代の夜明け―本当の幸せを求めて』(PHP研究所)、『イーグルに訊け』(飛鳥新社)、『今日は、心をみつめる日。』(サンマーク出版)、『「ほんとうの幸せ」の見つけ方』(サンマーク文庫)、『こころの羅針盤―人生を迷わないために…』(毎日新聞出版)など。

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