お面をつけた書店員さんに囲まれる雨穴氏
ビルボードジャパン総合書籍チャート「JAPAN Book Hot 100」で初週1位を獲得した『変な地図』(双葉社)。授賞式後半では、報道陣による質疑応答が行われ、覆面ホラー作家・雨穴(うけつ)氏が率直な言葉で質問に答えました。
「まさか一位になるとは思っていなかった」

初週で総合1位を獲得した感想を問われた雨穴氏は、「まさか自分が一位になるとは思っておらず、すごく驚きました」と率直に語りました。そのうえで、「すごく運が良かったなと思っています。本当にありがたいことです」と、感謝の言葉を添えました。
顔を出さずに活動する作家として、今回"歴史に名を残した"ことへの受け止めを問われると、「初めての一位を、こういう形で取ってしまったという意味では、ちょっと罪深いことをしてしまった気分です」と回答。
そのうえで、「次に受賞した作家さんにも、何かお面をかぶっていただいて、ウルトラマンでもアラレちゃんでもいいので、ビルボードの一位といえばお面、という変な伝統を作っていただけたら」と提案し、会場を和ませました。
手作りのお面は「高級品の紙粘土」
お面についての質問が及ぶと、「手作りです」と即答。材料については世界堂で購入したことを明かしつつ、「紙粘土は、100均のものもいいんですが、ドラッグストアのクリエイトで売っている紙粘土が少し高いけど質がいい」と具体的に説明。「一応、高級品です」と付け加えると、報道陣から笑いが起こりました。
スペアについては「これだけです。割れたらもう私は終わりです」と語り、慎重に帰るよう声をかけられる一幕もありました。
作家業について、「脳内を裸にするような作業ではないか」という質問には、「お面をかぶっているので、あまり恥ずかしくはないです」と回答しました。「素顔だったら、あの人あんな本を書いて、あんなことを考えているんだと思われて恥ずかしいと思います。そこはお面をかぶっていることのアドバンテージだと思っています」と述べ、匿名性が創作を支えていることを明かしました。
文章だけでは戦えない 合わせ技で立ち向かう

挿絵や図版、動画、音楽など多彩な創作活動をしていることを問われると、「ものを作るのは昔から好きです」としたうえで、文芸の世界での立ち位置について語りました。
「本屋では、私の本も東野圭吾さんの本も同じ値段で並びます。値段という一点では同じ土俵に立たされる。そのとき、文章だけでは戦えないと思いました」と率直に語り、「自分が持っている力を全部使って、イラストやお面、動画、音楽も含めて、合わせ技で立っていこうと考えています」と説明しました。
影響を受けた作家としては、横山秀夫氏の名を挙げました。「硬派な文体や、モブキャラクターに至るまで人生を掘り下げる筆致に衝撃を受けました」と語り、「自分には同じことはできない。だから真逆で攻めようとスタンスを決めるきっかけになりました」と振り返りました。
昨今の考察ブームについても触れ、「私自身も考察好きです」と前置きしつつ、「考察するのもしないのも含めて、広い気持ちでエンタメを楽しんでほしい」と語りました。
「1600円は決して安くない。それでも私の本を手に取っていただいけるのはありがたい」としたうえで、「考察でも何でもいいので、骨までしゃぶり尽くしてください。元を取ってください」と語りました。
ブックチャート創設の意義については、「文芸は音楽やマンガに比べてブームを作りづらいため、ランキングがあることで盛り上がるきっかけになる」と評価しました。子どもの頃にオリコンチャートで盛り上がった経験を引き合いに、「本も若い方を含めて盛り上がってほしい」と期待を寄せました。







