1. PHPオンライン
  2. 社会
  3. 「外国人が増えると治安が悪化し、賃金が下がる」は本当か? 外国人問題の実像を探る

社会

「外国人が増えると治安が悪化し、賃金が下がる」は本当か? 外国人問題の実像を探る

海老原嗣生(サッチモ代表社員 、大正大学表現学部 客員教授)

2026年02月05日 公開

「外国人が増えると治安が悪化し、賃金が下がる」は本当か? 外国人問題の実像を探る

2025年夏の参議院選挙を機に、突如として主要な政治テーマとなった「外国人問題」。雇用ジャーナリストで「外国人問題」に詳しい海老原嗣生氏に、その実像を様々な角度から解説して頂きます。

※本稿は『外国人急増、日本はどうなる?』(PHP研究所)より一部を抜粋・再構成したものです。

 

タブーだった外国人論争が突然、花盛りに

日本全体が外国人に対してナーバスになっています。

2025年夏の参議院選や同年秋の自民党総裁選では、多くの政党や政治家が「外国人問題」について語り、公約的なものを掲げました。もともと日本は島国であり、他国から海で隔てられているため、外国人に対するアレルギーはことのほか強いといえるでしょう。

移民問題に詳しい上林千恵子氏(法政大学名誉教授)は、「外国人問題を口にすれば、イデオロギーの左右双方から袋叩きに遭う」(「HRmics24号」リクルート発行)と語っています。純血を重んじる右派、人権的な問題や国内労働者の待遇悪化を憂う左派、双方から「移民」は厳しく論じられるため、この問題を正面から語ることは、半ばタブー視されてきたのです。

ところが昨今、不法滞在する外国人に対し、ネット論壇が大いに盛り上がりを見せています。その発端は「クルド人問題」でしょう。これは、2023年7月に起きた「川口クルド人病院騒動」がきっかけでした。クルド人男女のトラブルから傷害事件が発生し、彼らが担ぎこまれた病院周辺において、集団で小競り合いが続いた――結果、殺人未遂などで逮捕者が発生しましたが、結局、全員不起訴となりました。ここから地方議員たちが「彼らを野放しにするのか」と意見表明し、マスコミの注目度も高まっていきます。

この諍いに、正面から討論する場を与えたのがネット番組のABEMAプライムでした。ひろゆき、山田邦子、河野太郎代議士、奥富精一(川口市議)、諸井真英(埼玉県議)、そしてジョーカー議員こと河合ゆうすけ(戸田市議)など、錚々たるメンバーが集まり、繰り返されたこの番組で、激論が交わされます。

正直に言って、私も当初は、「人種ひとくくりで悪と決めるのはヘイトでは?」「長期在留者の生活や人権はどうする?」とリベラル側の視点も携えつつ視聴していました。ところが、途中からマヒルジャン氏なるクルド人をはじめとした同国人が、「日本人の理解が足りない」「日本人はもっとクルドを勉強すべきだ」と公然と批判するようになります。さすがにこれには閉口せざるを得ませんでした。

 

2%の不法滞在外国人よりも、98%の正規外国人を考える

こうしたセンセーショナルな情報に煽られたため、外国人問題は変な方向に話が逸れていきます。参政党が「日本人ファースト」を唱え、「外国人優遇」を論います。ネット論壇ではこの主張に支持が集まり、つられて、与野党関係なく外国人問題が参院選のメインテーマの一つとなり、その流れが自民党総裁選にまで引き継がれました。

ただし、彼らの多くは、「不法滞在外国人」についてしか語っていません。日本に中長期在留する外国人のうち、不法滞在者は2%にとどまっています。98%を占める正規在留者について、どのような政策を打つべきかの議論はあまり多く交わされていません。

 

外国人就労が賃金低下を招く? 外国人が増えると治安が悪化する?

わずかに日本保守党のように「日本人の賃金を下げるから、外国人の就労を全面的に認めない」方向を打ち出した政党もありますが、この主張自体、かつて左派から発せられた論調。右派代表の日本保守党から出てくることが皮肉に思われます。あのひろゆき氏も同様に、外国人の不法就労により(建設解体作業などの)単価が下がり、日本人業者が不遇を託っていると言います。

「外国人が増えると治安に問題が起きる」という声もよく耳にします。確かに、人口当たりの犯罪発生数は、在留外国人の方が日本人よりも若干高い。ただ、それは数割程度の差であり、分母となる人口の取り方次第で差は僅かとなり、逆転する罪種もあります。その程度のものなのです。ところが、不法滞在者に限ると、犯罪発生率は、ケタ違いに高い。

つまり、「外国人の犯罪」も、やはり「不法滞在者」の問題であり、正規に在留している外国人とはあまり関係ありません。

 

人権派の性善説では説明できない難民申請問題

一方で、リベラル側の人権配慮についても、疑問に思うことはあります。たとえば、「日本は難民認定が少なすぎる」という主張。表面上の認定率は確かに低い。ただし、日本はかつて、難民認定率がそれほど低くはなかったという事実もあります。極端に数字が下った原因としては、2010年の難民認定制度変更で、申請から半年すると「就労が許可される」ようになったことが挙げられるでしょう。

以後、急激に難民申請は増えました。改正直前にあたる2007~2009年の平均申請数が年1300件弱なのに対して、2017年には1万9629件と、15倍以上に増えました。しかも申請が急増した国の多くは、もともと難民申請が少なかった(中にはゼロも!)国ばかりです。

つまり、「明らかに就労目的としか考えられない」難民申請が、認定率を下げたと考えられます。そして、これら難民申請急増国に、国外退去忌避者や長期仮放免者が集中してもいます。性善説ばかりで現実を甘く見てはいけないということでしょう。

 

外国人問題に真摯に向き合わねばならない2つの理由

私は、2つの理由で、日本に在留する外国人とうまく接していくべきだと考えています。

1つ目の理由は、言わずと知れた日本の人口構造の問題です。あと数年すると65歳になって退職していく世代と、22歳になって新規就労する世代の人口ギャップは毎年100万人にもなり、それが何年も続く――もう、雇用延長や遊休労働力の活性化などでは全く足りない状況になる。過去の人材補給策も、2020年以降、ほぼ、うまくいっていません。自動化・合理化ではとても追いつかないほどの、人口減となります。

そう、「労働人口の崖」が眼前に迫っている。こんな状況で、排他的な風潮を強めていれば、いざ、人手が足りなくなった時、どの国の人も助けてくれはしないでしょう。

2つ目の理由は、将来、日本に危機が訪れた時、日本人を受け入れてくれる国があるか、という点。国力の低下で日本がそんな局面を迎えるかもしれないし、天変地異があるかもしれません。とまれ、そんな苦難に遭遇した折、迎え入れてくれる国があってほしい。

たとえば、ポーランドはロシア革命時に同国に取り残された子供たちを、日本が救護したことで、以来、日本愛がことのほか強い。トルコは、1890年に和歌山沖で座礁した軍艦エルトゥールル号に対し、日本がやはり必死の救助を施したことから、親日国となりました。台湾が、旧植民地時代の善政により親日的なのは言うまでもないでしょう。

良き施しを受けた国は、100年経ってもその恩を忘れません。逆もまた然り。だから、在留外国人との前向きな関係を望みたい。

関連記事

アクセスランキングRanking

前のスライド 次のスライド
×