1. PHPオンライン
  2. 生き方
  3. 欧米でも人気が上昇中! 簡単にできて心が満たされる“クラフトフルネス3選”

生き方

欧米でも人気が上昇中! 簡単にできて心が満たされる“クラフトフルネス3選”

SHOWKO(陶芸家)

2026年02月12日 公開

欧米でも人気が上昇中! 簡単にできて心が満たされる“クラフトフルネス3選”

ものを作ること。掃除などをして生活環境を整えること。気にいったものを家に迎え入れ、メンテナンスして長く使うこと...。そうした手を動かして心を満たす習慣を「クラフトフルネス」と呼びます。

手を動かしてその瞬間に没頭することで得られる喜びや幸福感があると語る、陶芸家・アーティストのSHOWKOさん。本稿では、家庭や旅行先などでも実践できるクラフトフルネスの方法を紹介いただきます。

※本稿は、SHOWKO著『クラフトフルネス』(クロスメディア・パブリッシング)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

折り紙を折る

幼いころ、クラスのみんなで千羽鶴を折りながら、何かに願いを込めた経験を持つ人は多いでしょう。折り紙は海外でもそのまま「ORIGAMI」として親しまれ、日本文化の象徴として高い人気があります。私自身、学生時代に海外を訪れた際、折り紙でいろんな形を作るだけで、子供たちにすぐに親しまれ、人気者になったことを覚えています。

日本の身近な文化である折り紙は、紙一枚というシンプルな素材から、多様な形を生み出す独特の構造を持っています。複数枚を組み合わせたり、色の配色を楽しんだりすることもでき、平面から立体へ変化する不思議な感覚が想像力をかき立てます。

特に、子供時代の遊びとしては、端と端を合わせてきれいに折り、筋をつけることで指先の繊細な動きや集中力を養い、同時に記憶力や空間認識力を鍛えるトレーニングでもあります。

折り紙を折って箱にしたり、千羽鶴を折ったりして、同じ形を何度も作る反復練習をしながら平面が立体になっていくことを楽しむ。無駄をそぎ落とし、平面から立体、立体からまた平面に変化する構造。

折り紙は近年、単なる日本の伝統的な遊び以上のものとして、さまざまな分野で注目されています。ファッションブランド、イッセイミヤケの作品には折紙工学を用いたデザインのものがたくさんあります。三浦公亮博士の作られた「ミウラ織り」は、対角線をつまんで広げるだけで大きな面積が展開する仕組みです。

これも、宇宙開発の太陽光パネルへの展開が期待されています。保管の時も場所を取らず、展開すると美しさも兼ね備えている。折り紙は、反復練習と構造に日本の哲学と美学を学ぶことができる、身近なクラフトと言えるかもしれません。同じように、スポーツの基礎トレーニングや音楽教育も、動きを繰り返し体に覚えさせてから応用技術に進みます。

しかし、大人の日常生活で折り紙を折る機会は減ってしまいました。折り紙の成り立ちやその奥にある文化的背景を知ると、久しぶりに手に取って折ってみたくなるかもしれません。

 

文章を書く

手紙に限らず、文章を書くことも、クラフトに近い感覚があります。私も今まさに、この文章を書いていますが、本を執筆する際は、読者の目線に立って、相手が理解しやすいように書く必要が出てきます。

たとえば、仕事のメール一つを取っても、相手によって言葉遣いや情報の出し方を調整しないと、誤解を招くことがありますよね。料理で味付けを微調整したり、洋服を着こなす際に場面や気温に合わせてコーディネートを変えたりするのと同じように、文章も相手や目的に合わせて「調整」するのが大切です。

たとえば、私の分野では陶芸の専門用語などが使われますが、業界が違うと当然伝わりません。自分や自分のまわりの人だけが暗黙の了解で知っていることなのか、そうでないのかを把握して、文脈を飛ばして書いてしまうと、伝わらないところの前提を肉付けしていく必要がでてきます。

私が執筆するとき、まずはざっくりとした内容を、目次や短い文章で書き、その後、その説明を追加してきます。最初は、自分だけが理解できる文章でも問題ありません。料理でいう下ごしらえの段階です。そして、その後、再度読みながら細かな言い回しを調整していきます。

最初のラフを作るときは、0→1の作業なので、衝動的に書いてもいいのですが、そこから何度も読み返しながら、不要な言葉をそぎ落とし、伝わりやすい順番に並べ直します。文章を黙読して、そのリズムや言葉の連なりを感じながら、心地よくさらさらと読めるかも大切になってくるのです。そして文章を丁寧に磨き上げていきます。

これは、料理の味を、塩などで微妙に調えるような繊細な作業です。ですので、私の書いている文章は、言葉を道具にして細かく編み込み調整していく面に関しては、工藝の職人的な要素があるものなのかもしれません。

また、日常の他の習慣でも、こうした「丁寧さ」が養えます。文章を書くという行為は、対象やテーマが変わっても、常に「伝える」「受け取る」という橋渡しの役割を担います。そのため、日々の暮らしやもの作りと同じように、観察力や丁寧さが試される場面が多くあります。

たとえば陶芸であれば、手にした土の違いや釉薬の微妙な色の変化に気づくことが、作品の完成度を大きく左右します。文章も同じで、少しの言葉遣いや文脈への配置が、相手の感じ方や理解の深さに影響を与えます。

さらに、身の回りの物を観察することも大事です。たとえば、毎朝のコーヒーを淹れる時間。豆を挽き、湯を注ぐ間、ゆっくりと流れる時間に集中し、五感を働かせることで、心も落ち着き、集中力が高まります。このような「没頭」の瞬間が、文章を書く集中力の土台にもなります。

また、道ばたの葉っぱの色づきや、手に取った器の手触りの違いに気づくことで、感性が磨かれ、文章に深みや説得力が生まれます。日々の何気ない気づきが、言葉選びや表現に生きてくるのです。

文章を書くことは、自分自身と向き合う時間でもあります。ですから、日常のさまざまな習慣を通じて育んだ観察力や丁寧さを、ぜひ文章に活かしてみてください。

そして、文章を仕上げるときの「これでいい」という区切りをつける瞬間は、まるでクラフトの作品に最後の磨きをかけて完成させる瞬間のような感覚。終わりを決めることで、初めて作品として立ち現れます。クラフトのように、手紙を書いてみてはいかがでしょうか?

 

石を集めてみる

私は、旅先で必ず、河原や海辺で気になる石を拾います。一番気になる石を選び、石で石を割って中の美しさを愛でる。または近くの川で洗って色の変化を楽しむ。まるで地球のアルバムを1ページめくるような感覚で、その石の歴史に想いを馳せたりしています。

考えてみれば、陶磁器の粘土も地層の積み重ね。つまり石と陶器は"いとこ"みたいな存在です。石材加工で最も頻繁に使われる道具は、ハンマーの一種である「石頭」と、石を削るためのノミです。

ノミは先端が尖っており、それを石に当てて、石頭で叩いて割っていきます。石はとても長い年月をかけて出来上がった、地球の一部でもあるので、本当にさまざまな表情を見せてくれます。石は種類も多く、たとえばマグマが冷えて固まってできた火成岩や、砂や泥、生物の殻などが積もって固まった堆積岩、火成岩や堆積岩が、熱や圧力でさらに変化してできた変成岩など、それぞれのとても沢山の種類があります。

石の職人は叩く感触で、硬さや割れ方がわかる。小物製作では柔らかい石をあえて選び、独特の温もりや風合いを出すこともあります。

たとえば、鉱物の中では柔らかいとされる大理石の彫刻。パリのルーブル美術館で見たミロのヴィーナスは、その衣服や身体の部分が、石だということを全く感じない柔らかい質感を表現していました。

逆に硬いからこそ表現できることもあり、知らない世界の底なし沼に触れてしまったような感覚があります。灯籠を楽しんだり、ノミを使って石を掘ったりすることはハードルが高いかもしれません。ですので、まず海岸や河原に行ったら、石を選んでみるのはいかがでしょうか?近くに河原があるなら月に一度、"マイ石"を見つける日にしてみるのもいいですね。

気になる石を拾うと、地球と対話をするようです。いくつか選んだあとは、家に持ち帰り、箸置きやペーパーウェイトなどに使用することもできます。同じように見える物、また日常的に目にしていた物の違いを知り、美しさを見出すという機会になると思います。

プロフィール

SHOWKO(しょうこ)

陶芸家

陶芸家。アーティスト。京都にて340年もの歴史がある茶道具の窯元「真葛焼」に生まれ、茶道をはじめとした日本文化が日常にある家庭で育つ。陶芸修行を経て、京都で自身の工房をスタート。2009年に法人化し、「読む器」をコンセプトとした陶芸ブランド「SIONE」を立ち上げる。その後、直営店をオープンし、世界各地にも活躍の場を広げる。また、現在は工芸の哲学を活かした感性をひらく宿「うたひ」を開業。著書に『感性のある人が習慣にしていること』(クロスメディア・パブリッシング)、『私らしい言葉で話す』(CCCメディアハウス)、『心に気持ちのよい風を通す』(大和書房)など。

関連記事

アクセスランキングRanking

前のスライド 次のスライド
×