人はどれだけ有益な内容であっても、読み進めるうちに関心を失ってしまうものです。では、資料を最後まで読んでもらうためには何が必要なのでしょうか。本記事では、読み手の興味を持続させる「ストーリー構成」の考え方を、書籍『入社1年目から差がつく 資料作成』より解説します。
※本稿は、グロービス, 堤崇士著『入社1年目から差がつく 資料作成』(東洋経済新報社)より一部抜粋・編集したものです。
人はすぐに関心がなくなる
資料を読んでいて、途中で読まなくなってしまったり、他のことに関心が移ってしまうのは自然なことです。
人間はすぐに関心がなくなります。それでは、興味を持続させるためには何が必要でしょう。
例えば、皆さんは就職活動や転職活動をしたときに、会社案内などを一生懸命読んではいませんでしたか。
それは、就職や転職をするにあたって、重要だと感じたからだと思います。同様に、就業規則の変更や残業時間の変更などがあった際にも、それらの資料を読みますよね。
このように重要性や必要性を感じると、興味は持続します。
しかし、資料のすべてが重要かつ必要な情報であるとは限りません。そこで、「ストーリー」の出番です。資料にストーリーがあると、違和感を抱かせることなく最後まで読み続けてもらえます。
我々は脚本家ではありませんから、劇的なストーリー展開を考える必要はありません。読み手の興味を持続させるための自然な話の流れになるように構成しましょう。
シンプルに 「はじめ→なか→おわり」を意識してみてください。特に、「全体から部分へ」「過去から未来へ」「既知から未知へ」の3つに気をつけるといいでしょう。
「全体から部分へ」
「全体から部分へ」というのは、まず全体像を押さえてから細部に移ることです。
例えばウィキペディアの構成を見ると、まずは概要で全体像を押さえ、そこから細部へと移ります。
このように資料作成の際は、最初に資料の全体像を示し、その後細部に移るように構成します。
全体像を最初に押さえる必要性を感じてもらうために、次のようなメッセージを例に考えてみましょう。
皆さんは次の文章を読んで、どのように感じますか?
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様々なスポーツを経験すると神経系、呼吸器系、筋骨格系などをバランスよく強化できます。また、1つのスポーツだけでは同じ筋肉や関節に負担がかかり、慢性的なスポーツ障害の原因となってしまいます。加えて、例えばサッカーは得意でも野球はまったくできないなどということはよくあることです。自分に合った生涯付き合っていけるスポーツがきっと見つかります(滋賀レイクス, 2020)。
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正直なところ、何の話かよくわかりませんね。おそらく、「何の話だろう?」と思いながら読んだのではないでしょうか。
そこで、最初に全体像を表す一文を加えてみました。
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私たちは、小学生を対象に、季節ごとに異なるスポーツを行う「シーズンスポーツ」スクールを開設しました。様々なスポーツを経験すると神経系、呼吸器系、筋骨格系などをバランスよく強化できます。また、1つのスポーツだけでは同じ筋肉や関節に負担がかかり、慢性的なスポーツ障害の原因となってしまいます。加えて、例えばサッカーは得意でも野球はまったくできないなどということはよくあることです。自分に合った生涯付き合っていけるスポーツがきっと見つかります(滋賀レイクス, 2020)。
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いかがでしょうか。おそらく全体像を最初に述べたことで、わかりやすくなったと思います。
これは、全体像を先につかむことで安心してそのあとに続く文章を読むことができたからです。
一般的に、私たちは情報を処理する際、全体を捉えた上で細部を理解するトップダウン型と、具体的な言葉や数字を取り込んでから意味全体を類推するボトムアップ型を使い分けて処理しています。
「全体から部分へ」というのは、トップダウン型の情報処理の仕方を利用したものです。読み手は全体像がわからないと、「今はどの部分を話しているのか?」「私が知りたい部分には触れてくれるのか?」と不安にな
ります。
実際の資料作成では、冒頭に「エグゼクティブサマリー」や「本日の概要」を用意しましょう。これらが資料の全体像となり、そのあとの展開が進めやすくなります。
「過去から未来へ」
2つ目に意識してほしいことが「過去から未来へ」です。
ストーリーは過去、現在、未来の話を混在させずに、過去から現在、そして未来へと、時間の流れに沿って展開することを意識しましょう。過去の話をしながら未来の話を入れたり、未来の話をしているところで急に現在の話になったりすると、読み手は「今、自分はどこにいるのか?」がわからなくなってしまいます。

例えば、在宅勤務についての文章を書く場合、①これまでの在宅勤務はどうだったのか(過去および現在)、②在宅勤務の目的は何か(未来)、③在宅勤務制度導入の懸念点は(未来)と、過去および現在から未来へとストーリーが展開するとわかりやすくなります。
慣れてくれば、過去→現在→未来の流れに沿った展開だけではなく、未来→現在→過去や、現在→過去→現在→未来といった展開でも読み手を混乱させないストーリーをつくれるようになりますが、まずは、過去→現在→未来の流れに沿って展開できるようにしましょう。
「既知から未知へ」
最後に意識してほしいのが「既知から未知へ」です。
読み手がすでに知っていることをきっかけにして、未知の情報へと展開していく流れをつくりましょう。
まったく知らない話から始められてしまうと、読み手はそこで思考が止まります。読み手と一緒に進んでいくために、既知の情報は何かをまず特定し、そこから徐々に未知の情報へと展開していきましょう。
そのためにも資料の構想で触れたように読み手の分析が重要になってきます。特に読み手がテーマについて、何を知っていて、何を知らないのかを把握しておく必要があります。
例えば、皆さんの会社で新しい経費精算のシステムを導入すると想定してください。
「新しいシステムでは領収書の自動読み取りや経費項目の選択がこのように変わります。△月▢日より導入されます」と、いきなり言われても困りますよね。まずは既存の経費精算システムの話をした上で、新しいシステムの話に入るほうがスムーズです。
「既存のシステムでは領収書のPDF添付後に手入力していただく必要があり、お手間をおかけしていました。また経費項目もどの項目にしたらいいかわかりにくいというお声をいただいていました。そこで新しい経費精算システムを導入します。新しいシステムによって領収書の自動読み取りが可能となり、経費項目の選択もシステムによって自動で選択されるようになります」
こちらのほうが、現状(=既知)が理解された上で、新しいシステム(=未知)のことに触れられており、理解しやすくなります。
「既知から未知へ」は、資料によく記載される「背景」を最初に述べることと、同じです。
読み手が置かれている状況を背景にしているスライドは、よくありますよね。これは、資料の出発点を「背景」=既知としてスタートし、未知へと導いていく展開です。
このように、ストーリーは、「全体から部分へ」「過去から未来へ」「既知から未知へ」の3つを意識して、展開を決めていきましょう。そして、大まかな展開が決まったら、資料作成に取り掛かります。









