大声で社歌を歌い、同僚は脱走...パワハラを乗り越えた起業家が語る「損して得取れ」の精神
2026年02月05日 公開
「2050年に大学進学者は3割減」という衝撃の未来。大学は、そして学生はどのように生き残ればよいのか。「卒業生の活躍こそ大学の指標」と語る明星大学客員教授が、卒業生の奮闘と学生への教訓を伝える。
※本稿は、西山昭彦著『明星大学生はうまくいく』(PHP研究所)を一部抜粋・編集したものです。
大学の指標は「卒業生の活躍度」にあり
大学というビジネスモデルはみな一緒であり、学部再編など戦略面での差別化は限られている。そのなかで重要なのは、何といってもいかに顧客、イコール学生の成長を図れるかである。
「学生の成長」の指標は、「在学中の成長値」(=卒業時-入学時の差)、そしてそれが発揮される「卒業後の活躍度」にある。明星大学卒業生の社長のうち、自ら起業した人が相当数いる。
本稿では、その起業家社長の1人として、キズナプラス株式会社代表取締役・齊藤公平氏の話を紹介したい。読者の皆さんが生涯のキャリアを考えるうえで、得るものが多いストーリーである。人生、無駄なことは1つもないことの証明でもある。
高離職率の企業でスキルを磨き続ける
【齊藤】私が就職活動をする時期は就職氷河期と呼ばれ、大学を卒業して就職活動をしても、80%も就職できない時代でした。そんな時代だったので、そもそも就職活動をしないで、フリーターや留学に流れる人がいました。
大学卒業後、大きなお金が動く仕事がしたくて、商社やメーカー企業を狙って就職活動をしていました。内定は複数いただけましたが、シュレッダーを開発した会社に入社しました。同期が150人ぐらいいて、私は営業部に配属されました。
研修合宿は1週間、山梨県の河口湖で行なわれました。富士の樹海エリアを1日中走り、大きい声で社歌を歌う。財布と携帯を合宿中触れない。朝起きると数名が脱走して、2度と会えなくなりました。入社後に気が付いたのですが、離職率が非常に高い会社でした。
研修後は、就業時間よりも早い出勤を求められ、会社掃除から始まる。軍隊のような朝礼が毎朝、行われていました。スーツを着て都内を走り続け、飛び込み営業で1日50件訪問、高額なシュレッダーを売り込む。日々同期が退職していくなか、私は営業スキルを磨き続けました。
シュレッダーの大きさや重さ・性能を丸暗記し、セールストークを磨く。結果を出す先輩社員に売れるコツを教えてもらう努力を重ね、営業成績上位にいました。
完全なパワハラの日々
ただ、私はけっきょく入社して10カ月で、初めて就職した会社を退職してしまうことになります。
転勤がないことを確認して入社したのにもかかわらず、四国か東北への異動の話が出始めたことと、仕事でミスをしてしまい罰金を支払うことになったことで、モチベーションが落ちてしまいました。
生きるために仕事を求め、求人があった三鷹にあるベンチャー企業に入社しました。この会社が私にとって、キズナプラスの前身になります。
小さいオフィスに数名しかいない。製造業派遣を行なうなか、IT部門を立ち上げ、拡大を考える会社です。ここでは営業役員の鬼軍曹にこき使われました。完全なパワハラの日々です。
でも、営業成績にはこだわりました。新しいお客様を開拓するというのを期待されて、少しずつ大手の電機メーカーの仕事を受注しました。運がよく、臨時ボーナスが出るような大型契約も受注しました。
ITバブルがはじけ、鬼軍曹が退社。私は、営業としてトップになりました。100人を優に超える規模の会社になり、営業チームはありましたが、私が実質、売り上げのほとんどの数字を握っている状況でした。限られた時間で成果を出すために、大きい仕事を意識的に狙っていったのです。
独立を決意
この絶頂期に、私は会社を辞めることになります。
長く仕事をしていると、だんだん会社方針に違和感が生まれ、ちょっとずつ気持ちが離れてしまいました。会社のスタートは、資産家が出資して設立。ドライな性格の社長で、人を大切にしないようなことがあり、私の好みではありませんでした。
私は思い切って独立を決意しました。同僚の親友に相談したら、同じようなことを考えており、2人で独立することになりました。
経営者の知識は乏しいので、独立を支援してくれる会社に相談。事業計画書作成の助言をもらいつつ、創業中期計画を作成、約1年かけて起業の準備をしっかりしました。経営は1年目から黒字でした。1年の年度末で従業員数は16名。
紆余曲折ありながら10年が過ぎ、1度も赤字を出したことがなく、従業員は何倍にも増えました。
困ったという声に対し、ITを活かして問題を解決し、社会貢献をしたい。近い未来、キズナプラスが開発したサービスが皆様の生活を明るく豊かにできることを願っています。
後輩に訴えたいこと
頑張ったことに無駄はない。いつか活かされる時期が来る。今しか経験できないことに全力で取り組み、1日1日大切にして楽しんで下さい。
運は偶然ではない。日頃から人間力を磨き、運を引き込む力が必要。目先の損得で動くのではなく、無駄だと思えるようなことでも頑張っていると、よいことが舞い込みます。「損して得取れ」の精神を持ってほしい。
じつは、あのパワハラの鬼軍曹と今でもお酒を飲んでいるんです。
すごいスパルタだったんですけど、逆にそこでスパルタを受けられたからこそ、今こういう舵取りができている、と思えるようになりました。当時は「離職率が高いのはあんたのせいでしょ」という気持ちでしたけど。
最後に、社会人になってこそ、勉強は大事。人間、死ぬまで勉強する気持ちは必要。仕事を通じて学べることを大いに楽しんで下さい。
齊藤社長は今「明星大学経営者ネットワーク」の幹事として、社長業のかたわら、全国に社長の輪を作り、志のある後輩に経営者をめざす道があることを訴えている。このように、活躍する卒業生が自発的に卒業生の中に新しい波を作ることで、卒業生が活性化し、大学の発展に結びつく。大学だけではできない大きな力になっていることは明らかである。







