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「瓦礫の下で亡くなった親友より、しんどいことはあるか」大震災を経験した安田大サーカス団長安田の問い

団長安田(安田大サーカス・お笑い芸人)

2026年03月06日 公開

「瓦礫の下で亡くなった親友より、しんどいことはあるか」大震災を経験した安田大サーカス団長安田の問い

当時住んでいた実家のある兵庫県西宮市で、阪神・淡路大震災を経験した安田大サーカス 団長安田さん。
お笑い芸人として活動を続ける一方で、防災士の資格を活かし、各地での講演やイッツコムの番組「イッツコムおうち防災のすすめ」への出演など、防災の知識を伝える取り組みを続けています(イッツコムでは当番組をはじめ「イッツコム防災Action」と題し3月、4月に防災の大切さを発信)。

震災では、当時最も親しかった親友を亡くしました。

今回は団長安田さんに、その経験が形づくった人生観や、防災をめぐる家族とのコミュニケーションについて、率直に語っていただきました。

 

正解はないからこそ、伝えるのが大事

――家族やパートナーと防災の情報を共有することも大事だと思います。団長安田さんはご家族に対して、伝え方や話すタイミングについて、何か意識されていることはありますか。

【団長安田】例えばですけど、「逃げる場所はあそこ」とか、「ペットも連れて行けるか」とかですね。うちはペットを飼っているので。

あとは、地震が来た時に「ここ、ちょっと危ないな」という家や場所、ありますよね。「これ、崩れへんかな?」みたいな。

「あそこの家と、あそこの家の前は(震災があったときに)ちょっと怖いから、何かあったらすぐ離れなさい」とか、そういう話はしています。

大阪でもブロック塀が倒壊して女児が亡くなってしまう事故がありましたけど、「それを予想しろ」と言われてもなかなか難しい。
でもせめて、古い家とか、「ここ危ないぞ、この塀は」とか、なんとなく自分の見える範囲伝える。

逃げる方向が右か左か、それだけで助かる命と助からない命が分かれるかもしれないので。

――ということは、日常的にお子さんたちとも共有されているんですか。

【団長安田】そんなにしょっちゅう防災の話をしているわけでもないです。

自分が思った時に、「学校行くまでのあの道、ちょっと怖いで」とか、そういう話をする。

子どもは、「ああ、そうやね」だったり、「知らんし」くらいの反応だったりしますけど(笑)。
でも、言っとくことが大事かなと思っています。

よくあるじゃないですか、防災を啓発する映像で、立派な家族が出てきて、娘も息子もちゃんとしてて、

「お父さん、お母さん、こういう時はこういうものが必要なんだね」
「うん、分かった。勉強になったよ」

みたいな。

でも、実際そんな家族、ほぼないと思ってます。現実は「あー、はいはい」みたいな感じですよ。

だから、親としては「言う」だけでもいいと思うんです。完璧じゃなくていい。

僕の防災の講演も、8割は全然違う話をしてます。
「2割だけ聞いてくれたらいいです」くらいのスタンスでやってるんです。

――番組を見ていると、防災って「想像力」なんだなと感じます。次に何が起こるか、一歩先を想像することで守れることがあるんだなと。

【団長安田】正解があって、正解がない世界ですよね。

子どもにも言ってるんですけど、例えば「おはし」。
小さい子には「押さない」「走らない」「喋らない」って教えるじゃないですか。

でも、走らなあかん時もあるし、喋らないって言っても、目の前で友だちが倒れてたら、先生にちゃんと伝えなあかん。

だから、「これは基本なだけで、全部の正解じゃないよ」っていうのは、結構言ってます。

 

「寝ている間に瓦礫に埋もれて亡くなるより、しんどいことはない」

――阪神・淡路大震災で亡くなられた親友の方について伺いたいと思います。
その方とは、どのようなご関係だったのでしょうか。

【団長安田】親友は山口恵介というんですが、小学校1年生から中学校まで同じでした。
僕は高校で鳥取に行ったんですけど、地元に帰ってきたら一緒に遊んでいましたし、社会人になってからも、よく一緒に出かけていた友達です。

本当によく笑ってくれるやつで、「プロの芸人になれ」って言ってくれてました。
「吉本行け、吉本行け」って。結果的に別の事務所を選んでしまったんですけど。

――20歳でご友人を亡くすというのは、衝撃もあったのではないかと思います。

【団長安田】友達を亡くすっていうのが初めてで、今、年齢を重ねてから誰かを失うのとは、また違う感覚だったと思います。
しかも突然でしたし、顔が腫れ上がった状態で対面することになって。
その光景は、今でもかなり鮮明に覚えています。

――その経験は、団長安田さんの芸風や、人前に立つ姿勢にも影響していると感じる部分はありますか。

【団長安田】ありますね。

雪山で半袖でクイズをしたり、24時間自転車に乗ったり、何分潜れるかやったり、正直、しんどいロケもたくさんあります。

その中で思うのは、「恵介よりしんどいことを、俺はまだしたことがないな」って。
寝ている間に瓦礫に埋もれて亡くなるより、しんどいことを、今まで経験したことがない。

そう思うと「これくらいならやれる」って、なりふり構わずできる。そういう意味で、背中を押してくれている存在やと思ってます。

 

やりたいことはすぐにやる、でも頑張りすぎない

――震災の後、なるべく寝ないようにしていた時期があったと伺いました。

【団長安田】恵介が「寝たまま起きたくても起きられずに亡くなった」って考えた時に、「死んだら一生寝なあかんのや」っていう考えが、自分の中にあったんです。

当時は、夜中にアルバイトに行って、そのままネタを書いて、また別の仕事に行ったりしていて。
寝ることが、もったいないと思っていたんですよね。

その生活を続けていたら、「いつ寝ていいのか分からない」状態になって、途中でバッと起きてしまったり、不眠症みたいな状態になってしまって。
病院に行ったら、「完全な睡眠障害ですね」と言われました。

それが震災の影響なのか、その後の生活の影響なのかは分からないですけど、そういう考え方で生きてきたのは事実です。

今は「睡眠は大事」と思って生活してますけど、当時は本当に「寝るなんてもったいない」と思ってました。

――震災の経験が、その後の人生観や価値観として残っているものはありますか。

【団長安田】「やりたいことは、すぐやろう」です。後に残していたら、できへんで、と。

「死ぬよりしんどいことって何やろ?」って思いながら、いろんなことをやってきました。

ただ、無理しすぎたらあかん、っていうのも、阪神・淡路大震災の後から思ったことです。

震災の時、「うち来なよ」「うちで生活しなよ」って迎えてあげても、結局、どこかで揉め事が起きるんです。避難していた視聴覚室の中でも、揉めている人たちがいました。
そこで「じゃあ俺が全部やるわ」ってなると、どんどん潰れていく。

困っている人がいたら助けなあかん。でも、いきなり全部を引き受けるんじゃなくて、まずは自分と家族から、そして周りへ。

その順番を間違えると、だんだん壊れていくんですよね。

だから、「頑張りすぎない」。
コツコツが勝つコツ。

頑張らなあかん時やからこそ、頑張らない。それが大事やと思います。

(取材・執筆・撮影:PHPオンライン編集部 片平奈々子)

プロフィール

団長安田(だんちょうやすだ)

安田大サーカス・お笑い芸人

お笑いトリオ「安田大サーカス」のメンバー。お笑い芸人としてテレビやイベントで幅広く活動し、明るく親しみやすいキャラクターで多世代に支持を得ている。防災士の資格を取得し、自身の「阪神大震災」の被災経験をもとに、防災啓発にも取り組む。

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