シングルマザーとして子育てに全力を注ぎ、コロナ禍をきっかけに高校再入学・大学進学という学び直しを経たタレント・スザンヌさん。大学2年で起業し、卒業論文のテーマにもなった「地域創生と旅館再生」は、机上の研究ではなく、現実の挑戦そのものでした。古着リメイク事業から始まり、熊本の老舗旅館「龍栄荘」の再生へ。そして今、女性として、自分の人生を切り開いてきたスザンヌさんが多くの女性たちに伝えたい思いを聞きました。(取材・文/吉澤恵理、写真/スザンヌさんInstagramより)
大学2年で起業。古着リメイク事業『Style Reborn』に込めた“再生”の思い
卒業論文のテーマは、「地域創生と旅館再生」。
ですが、それは机の上だけの研究ではありませんでした。実は、スザンヌさんが起業したのは、大学2年生の時だったのです。
「大学で学んでいるうちに、やっぱり自分でも何か形にしたいっていう気持ちがどんどん強くなっていったんです。
最初に始めたのは、古着のリメイクを中心としたアパレル事業で、『Style Reborn(スタイルリボーン)』と名づけました。
Rebornには、『再生』という意味があり、一つのものを、その世代だけで終わらせず、次の世代へつないでいきたいっていう思いがありました」
もともとファッションが好きだったことに加え、新しい価値を生み出したいという思いも強かったといいます。
ですが、実際に事業として始めてみると、理想だけでは進まない現実にも直面しました。
「一点ものって、本当に時間も手間もかかるんです。作るのにもすごく時間がかかるし、その一点のために写真を撮ったり、説明を書いたり、全部手作業みたいな感じで…。
でも、その分を全部価格に反映できるわけじゃない。ビジネスとして成立させる難しさをすごく感じました。好きだけじゃ続けられないんだなっていうのは、すごく勉強になりました」
難しいながらも試行錯誤し、実店舗を持つことを考えるようになりました。
「ネットだけじゃなくて、実際に人が来て、空間ごと楽しめる場所を作りたいなっていう思いがずっとあったんです。そこでアパレルショップとカフェを併設できるような物件を探し始めました」
「旅館をやるつもりは全然なかった」スザンヌさんが熊本の老舗旅館と出会った日
そんな時に出会ったのが、熊本の老舗旅館「龍栄荘」でした。
「最初は、本当に旅館をやるつもりは全然なかったんです。古民家っぽい雰囲気が素敵だったので、ここでカフェとアパレルができたらいいな…くらいの感覚でした」
ところが、内覧を進めるうちに、地域の人たちから次々と龍栄荘への思いを聞くようになります。
「ここで結婚式をしたとか、出産をしたとか、『家族の思い出の場所なんです』って話してくださる方が本当に多くて、地域の方たちにとって、すごく大切な場所だったんだなって知ったんです」
さらに、前オーナーから旅館への思いを直接聞いたことで、気持ちは大きく動きました。
「前オーナーさんは、本当は息子さんに継いで欲しかったそうなんです。
でも、息子さんが病気で亡くなられてしまって、旅館を閉めることになったと聞いて……。
これは誰かが残さなきゃいけない場所なんじゃないかって思うようになりました」
「待ってたよ」地域の人たちの声が、旅館再生への覚悟を決めさせた
そして驚いたのは、自分の気持ちより先に旅館再生の話が地域に広がっていたことでした。
「私はまだ、買いますとも言っていない段階だったんですけど、『スザンヌさんが旅館を再生するらしい』っていう噂がもう広がっていて、えーっ!っていう感じでした(笑)」
地域の人たちからは、「この日を待っていた」と握手を求められることもあったそうです。
「『待ってたよ』とか、『本当にありがとう』って言っていただくことも。これは中途半端な気持ちじゃできないなって思いました」
こうして、スザンヌさんが地域の思い出をつなぐ旅館再生の挑戦が始まりました。
ですが、その道のりは決して簡単なものではありませんでした。
床を剥がしたら土だった…想像を超えた改修工事と、お金の勉強
「最初は本当に手探りでした。旅館をやるなんて、自分でも想像していなかったので。旅館業の許可、保健所、消防、改装工事など、初めてのことばかりでした。
床を剥がしたら下が土だったんです。今の基準だと許可されないので、そこにコンクリートを流して、床を作り直して。本当に大工事でした(笑)」
約半年の改修工事、想像以上に費用もかかりました。
しかも当初は、借入をするという発想すらなかったそうです。
「その時は、自分でできる範囲でやろうっていう感覚だったんです。借りるっていう頭が全然なくて。でも今思えば、もっとお金の勉強をしておけばよかったなって思います(笑)」
それでも、地域の大切な場所を残したいという思いが、前に進む力になっていきました。
「KAWACHI BASE -龍栄荘-」として再生してから2年がたった現在、熊本県内だけでなく、東京や名古屋など全国各地から宿泊客が訪れるようになりました。
「ゴールデンウィークには多くの宿泊客でにぎわい、少しずつ地域に根づく場所になってきていることを実感しています。
現在は、旅館に併設する形で、念願だったアパレルショップもスタートしました。
週に1〜2回は現地へ足を運び、宿泊客の皆さんへのあいさつや、スタッフとの打ち合わせを行っています」
外の掃除やゴミ拾いも欠かさないといいます。
「そういう時間もすごく大事だなって思っています。ちゃんと自分の目で見ることを大切にしていきたいです。
今は、スザンヌがやっている旅館だから来てくださる方もいると思います。もちろん、それもありがたいです。
でも、これからは、そこで働く人とか、空気感とか、龍栄荘そのものが好きで、また帰ってきたいって思ってもらえる場所にできたらいいなって思っています」
スザンヌさんが女性たちに伝えたい「やりたいと思ったら、一歩踏み出す」ということ
女性として、自分自身の人生を切り開いてきたスザンヌさんだからこそ、今、多くの女性たちに伝えられる言葉があります。
「私は、その時々で優先順位を決めてきました。子育てを優先する時期、仕事を頑張る時期。全部を完璧にやろうとしなくてもいいと思うんです」
以前の自分は、「資料請求をして満足するタイプだった」と笑います。
「でも、資料請求しているだけじゃ何も変わらないなって思ったんです。やりたいって思ったら、やっぱり一歩踏み出さないと何も始まらない。
行くなら行くしかないし、始めたなら卒業するしかない。とりあえずやってみるってすごく大事なんだなって思いました。
一歩一歩でも、着実に踏み出していくこと。それがすごく大事なんじゃないかなと思います」
子育てをしていると、自分のことは後回しになりがちです。
ですが、子どもが成長していくように、親もまた、新しい挑戦をしていい。
スザンヌさんの歩みは、そんな前向きなメッセージを静かに届けてくれていました。





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