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「企画-設計-実施」のプロセス図で仕事・成果のスピードを“劇的に”上げる

西村克己(芝浦工業大学大学院客員教授/経営コンサルタント)

2013年08月15日 公開 2024年12月16日 更新

《『仕事が劇的に速くなる! フレームワーク 7』より》

【お悩み解決のための基本的考え方】
まずマクロを把握し、そしてミクロに移る

 

 私は序章で、「問題解決能力が高く、かつそのスピードが速い人は、まず水平思考を行い、次に垂直思考を行っている」という旨の話をしました。この水平思考と垂直思考に似た考え方に、マクロとミクロというのがあります。

 マクロとは「全体、概要」、ミクロとは「部分、詳細、個別」という意味です。

 問題解決をするときには、まず水平思考によって問題の洗い出しを行います。そしてたくさん出てきた問題の中からもっとも重要な問題を見つけ出したうえで、垂直思考に移ることが大切になります。これと同じで、仕事の段取りを組むときにも、マクロを把握したうえで、次にミクロに移ることが大切になります。

 提案書を作成するのであれば、まず作成の目的を明確にしたうえで、その目的を実現するために必要な項目を洗い出していきます。そして必要項目がしっかりと含まれている提案書の目次案を作成します。また、項目の中から、重要度が高い項目と低い項目の優先順位づけを行います。そして締め切り日の数日前には提案書を完成させることを目標に、スケジュールを組んでいきます。これらがマクロ段階で行っておくべきことです。

 

■せっかちな人ほどムダな仕事時間が多い!?

 こうしたマクロ段階の作業を省いて、いきなりミクロから始めたらどうなるでしょうか。

 まず「なぜその提案書を作成するのか」「どのような提案書を作成しなくてはいけないのか」という目的や目標が曖昧なまま仕事に取り組むことになりますから、提案書が仕上がった後になって上司から「これでは方向性がまったく違う」とダメ出しをされるリスクが高まります。するとゼロから提案書を作成し直さなくてはいけなくなります。

 また、提案書に盛り込むべき必要項目を確認しないまま仕事に入ると、後になってヌケやモレに気づくことになります。さらに、重要度が高い項目と低い項目の優先順位づけを事前に行っておかないと、優先順位が低いものに必要以上に時間を取られるようなことが起き、時間のロスにつながります。

 せっかちな人ほど、マクロを省いていきなりミクロから始めがちなのですが、かえってムダな仕事時間が増えてしまうことになるわけです。

 マクロからミクロに物事を進めていくことは、提案書の作成に限らず、すべての仕事、すべての思考の基本です。

 たとえば訪問営業をする場合、手当たり次第に顧客を訪問しても、成功率は上がりません。自分が担当している営業エリアにはどのような顧客候補がいるのかを把握し、訪問する業種や企業規模を絞り込んだほうがムダ足を減らすことができます。全体を把握してから部分に取りかからないと、的外れの努力が増えてしまうのです。

 

■マクロを把握しておくと全体と部分との関係がつかみやすくなる

「マクロ→ミクロ」の順番で仕事を行うことのメリットはもう1つあります。それは、常に全体と部分との関係を把握しながら、仕事に取り組むことができるようになるということです。

 マクロを省いてミクロから仕事を始めると、その仕事が全体の中でどのような位置にあり、どれぐらいの重要度を持ったものなのかがわからないままに仕事に取り組むことになります。これは地図を持たないまま森の中を歩くようなものです。行き当たりばったりで歩き続けることになりますから、仕事の森の中で迷子になってしまうリスクが非常に高くなります。

 つまり、マクロを把握するということは、仕事の地図帳を手に入れるようなものなのです。旅に出るときに地図が欠かせないように、仕事をするときにはマクロを把握することが欠かせません。

 ちなみに「マクロからミクロ」は、仕事の段取りを組むときだけではなく、わかりやすい文章、わかりやすい話、わかりやすい資料を作るときにも役立ちます。

 たとえばプレゼンテーションの場面でも、まず全体像を先に提示しましょう。すると、部分の話に入ってからも聞き手は「いま全体の中のこの部分について説明しているのだな」と理解しながらプレゼンを聞くことができます。もちろんプレゼンの資料についても、全体と部分との関係がはっきりとわかるようなものにします。

 

【フレームワークを使ってお悩み解決】
プロセス図で業務を「見える化」する

 「マクロからミクロ」で仕事に取り組むプロセスは、もう少し細かく「企画-設計-実施」や「概要-詳細-具体化」に分解することもできます。さらに細かく「企画-基本設計-詳細設計-調達・開発-導入・運用」にブレイクダウンすることもできます。

 「企画-設計-実施」のフレームワークに提案書の作成を当てはめて説明すると、提案書のテーマやコンセプトを考えるフェーズが「企画」、提案書に盛り込むべき必要項目や構成を考えるフェーズが「設計」、スケジュールを立てて実行に移すフェーズが「実施」になります。

 提案書の作成のように、それほど複雑ではない仕事に1人で取り組む場合は、「マクロからミクロ」あるいは「企画-設計-実施」の手順で仕事を進めていくことを、頭の中で意識しておくだけで十分だと思います。

 しかし、より複雑な仕事、たとえばチームで大規模プロジェクトに取り組む場合などは、自分たちの仕事を「企画-基本設計-詳細設計-調達・開発-導入・運用」のレベルにまでブレイクダウンします。そして「企画」や「基本設計」といったフェーズごとに、やるべきことを書き込んだプロセス図を作成することが重要です。


<書籍紹介>

仕事が劇的に速くなる! フレームワーク 7

西村克己 著
本体価格1,500円

フレームワークはたくさんあるけれど、どれを使えばいいの?――そんな方に朗報。成果を生み出す7つのフレームワークを一挙公開。

<著者紹介>

西村克己

(にしむら・かつみ)

芝浦工業大学大学院客員教授、経営コンサルタント

東京工業大学経営工学科大学院修士課程修了。富士フイルム株式会社を経て、1990年に日本総合研究所に移り、主任研究員として民間企業の経営コンサルティング、講演会、社員研修を多数手がける。2003年より芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科教授、2008年より同大学客員教授。専門分野は、経営戦略、戦略的思考、ロジカルシンキング、プロジェクト・マネジメント、仕事術など。著書に『ロジカルシンキングが身につく入門テキスト』『仮説力が身につく入門テキスト』『戦略構想力が身につく入門テキスト』(以上、中経出版)、『問題解決トレーニング』(イースト・プレス)、『1分間ドラッカー』(ソフトバンククリエイティブ)、『[図解]論理的な考え方・話し方・書き方の基本が身につく本』『戦略思考トレーニング』『図解で思考する技術』(以上、PHP研究所)など多数。

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