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[「トヨタ式」の原点]トヨタが「現場」でずっとくり返してきた言葉

2013年07月12日 公開

若松義人(カルマン社長、「トヨタ式」のコンサルタント)

《PHPビジネス新書『トヨタが「現場」でずっとくり返してきた言葉』より》

 

「トヨタ式のものの見方や考え方、行動の仕方」は、仕事や人生に役に立つ

  「アベノミクス」のお陰なのか、長く低迷していた日本企業の業績が回復へと向かいつつある。トヨタ自動車もリーマン・ショックと大規模なリコール以降、数字の上では厳しい状況が続いていたが、2013年3月決算では国内単体でも黒字を計上し、2014年3月決算の見通しを見る限りは、リーマン・ショック以前の状態へ戻りつつあるようだ。

 リーマン・ショック以前のトヨタの成長スピードは、凄まじいばかりだった。生産台数、販売台数ともに世界一に向かって急伸し、工場も世界各地で次々と建設された。そして念願の世界一に手が届いたところで遭遇したのがリーマン・ショックであり、その後に続く大規模なリコールだった。

 大変なダメージだった。さらに追い打ちをかけたのが東日本大震災であり、トヨタに限らず、日本のモノづくりが受けたダメージは計り知れないものがあった。1950年、トヨタが倒産の危機に瀕した際、責任をとって社長を退任した創業者・豊田喜一郎氏は「100年に1度か2度しかない危機のための準備」の大切さを説いたが、100年に1度の危機が次々と襲いかかったとあっては、さすがのトヨタにとってもそこから立ち直るのは決して簡単なことではなかった。

 危機の中にあって再生の道を探るトヨタが拠り所にしたもの、それこそが長い年月をかけて磨き上げた「トヨタ生産方式」(以下「トヨタ式」)だった。リーマン・ショックからしばらく経った頃だろうか、トヨタのある関係者からこんな言葉を聞いたことがある。

 「私たちには帰るべき場所がある」

 トヨタの受けたダメージはたしかに大きかったが、幸いなことに、トヨタにはトヨタ式という帰るべき場所があった。トヨタ式自体に間違いがあったとすれば問題だが、トヨタ式と急成長の過程でやってきたこととの間に生じたズレが不振の原因だとすれば、どこに帰るべきか、何を守るべきか、何を変えればいいのかは簡単に答えを出すことができる。

 やるべきことがはっきりしていれば、あとはそれを断固実行できるかどうかだけである。

 トヨタ式の原点は、市場が求める必要数をいかに良く、早く、安くつくるかという「限量生産」である。これはモノづくりに携わるすべての人の原点なのだが、多くの人は好景気の中ではこうした原点を忘れてつくり過ぎに走り、不景気の中ではなすすべもなく立ち尽くしたり、すべてを一気に解決してくれる万能薬を求め、神風が吹くことを願ったりするものだ。

 しかし、大切なのはどんな時代であれ、モノづくりや商売の原点をしっかりと見つめ直し、愚直に守り実行していくことである。

 本書 『トヨタが「現場」でずっとくり返してきた言葉』 は、過去にはトヨタの躍進を支え、リーマン・ショック以降はトヨタに復活をもたらすことになった「トヨタ式の原点」を、トヨタで代々語り継がれた言葉の数々によって紹介することを試みたものである。日本企業を取り巻く環境は少しずつ改善されつつあるが、残念ながら日本のモノづくりを取り巻く環境そのものが改善されたわけではない。

 日本のモノづくりはグローバル社会の中で依然として厳しい状況にあり、うかうかしていると日本からモノづくりの場が失われるという危機的状況にある。トヨタの言葉はいずれもモノづくりの現場から生まれたものであり、言葉そのものが私たち1人ひとりに「何をすべきか」「どう考えるべきか」を教えてくれるものとなっている。

 なかには随分と厳しいものもあるが、その厳しさは「人間の知恵」の素晴らしさ、「人間の可能性」を信じるが故の言葉でもある。

 人間はすごい。人間の知恵には限りがない。読者の皆様にも、是非自分自身の知恵の素晴らしさ、自分の可能性の大さを信じていただきたい。そして、日本という国がもつモノづくりの力を信じていただきたい。

 本書に紹介した「トヨタ式のものの見方や考え方、行動の仕方」は、仕事をするうえでも、人生を豊かに生きるうえでも、きっと役に立つはずです。

 そして、日本という国がつくる力を取り戻すことを心から願ってやみません。

 

<本書 『トヨタが「現場」でずっとくり返してきた言葉』 では、100の言葉をご紹介しています。その一部をご覧ください>

 

想いを「見える化」せよ。

 トヨタ式において「見える化」はとても大切なキーワードの1つである。

 工場では、生産は計画通りに進んでいるのか、遅れているとすればどのくらいの遅れがあるのかが、パッと見ただけでわからなければならない。不良品をはじめとする問題が起きれば、すぐにみんなに見えるようにする必要がある。

 「見える化」は工場だけで使うものではない。働いている人の能力は「星取表」によって見えるようにするし、プロジェクトの進行状況などもみんなに見えなければならない。

 見えなければ誰も問題に気づかないが、見えれば問題に気づいて知恵も出てくる。

 「見える化」の1つに「想いの見える化」がある。

 ある企業トップは、生産現場を日々歩くなかで、生産改革をしなければ企業として生き残ることができないと考えるようになった。改革のアイデアはあったが、その想いはなかなか社員には伝わらなかった。

 そこで、企業トップは理想の工場をイラストに描き、理想の生産ラインをフィギュアなどで模型にした。すると、言葉では伝わらなかったことが、少しずつ社員に伝わるようになった。「ここはこうしたらもっと良くなりますよ」といった知恵も出るようになった。

 想いを言葉だけで伝えるのには無理がある。想いも「見える化」してはじめて伝わる。

 

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