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地道力~EARTH創業者・國分利治が明かす「成功の方法論」

國分利治(アースホールディングス代表取締役)

2013年09月19日 公開 2023年01月05日 更新

《『[新版]地道力 目先の追及だけでは、成功も幸せも得られない!』より》

 

真似て真似てその先にあるのが「個性」

 自分の会社経営が成功した一番の理由は、従来の赤字店を譲るというパターンではなく、頑張った店長にオーナーになってもらって黒字店を譲る……という独自のフランチャイズオーナー制度の導入だと思います。

 やはり、自分のオリジナルの方法を見つけることが成功への一番の近道だと言えるでしょう。こう言うと、無から有を生むような難しい話だと誤解されやすいのですが、それは違います。

 フランチャイズオーナー制度を導入する際、私が最初にやったことは、セブン・イレブンやマクドナルドなど、すでに成功を収めているシステムを徹底的に研究することでした。

 「どうにかして、今あるものが美容院経営に使えないものか?」

 そのことをずっと考えていたのです。

 例えば、導入時の当社のフランチャイズ料は8%(現在は5%)なのですが、これは美容業界の常識からすると比較的高い相場です。一般的には3%くらいですから、かなり高いとも言える。ただ、加盟する側から見た時、「安いから加盟する」というのと「高くても加盟したい」というのとでは、当社の収益性に対する評価も、仕事に対する姿勢や意欲も全然違ってきます。本部側にしても、「8%を高いと言わせないように、しっかりとバックアップをしなければ」といういいプレッシャーになります。このようなさまざまな要素がある中で試行錯誤の末に辿り着いたのが、8%という数字だったのです。

 フランチャイズ自体は既存のシステムです。そこに8%だったり、黒字店を譲るといった、私の経営哲学を加味することで、周囲の方から「國分のオリジナル」と言っていただける、システムができ上がっていったのです。

 「人を大切にする」ということは、どんな時代でも変わることのない不変の経営哲学です。けれども、ではどのように人を大切にするかという具体的な方法論は、時代背景や職種、相手のタイプによって変えていかなければなりません。その部分にオリジナリティがなければ、「人を大切にする」ことはできません。

 オリジナリティは個性と言い換えてもいいと思いますが、個性についてこんな話を聞いたことがあります。落語家志望の若者がいます。彼は自分には個性がないと悩み、ある師匠に相談する。その師匠は彼に、こう言うのです。「とにかく最初は、自分が大好きな落語家を徹底的にモノマネしなさい。一語一句、声の大きさや声質、その表情や指の動きまで全部コピーするつもりでやりなさい。続けていると、どう頑張っても同じようにモノマネできない部分が出てくるはずです。それがキミの個性なのだ」と。

 当社のフランチャイズオーナー制度も、まったく同じです。私が尊敬する起業家の著書を何度も読み返し、フランチャイズ制度について学びました。ただ、やがて、彼の経営者としての理念は尊敬できても、どうしても同じようにはしたくない(したくてもできない)部分が出てくるのです。最初は、なぜそう思うのか、自分でもよくわかりません。しかし、そこさえなんとかなればうまくいく予感がある。今度はポイントを絞って、その部分だけを集中して考え続けます。すると、何かのきっかけで、「あ、こうしたらいいのではないか」という仮説が閃くのです。

 自分の個性とは、なかなか自分では気がつけないものなのだと思います。個性がないと思っているのは自分だけで、人から見たらものすごく個性的な人というのは、至るところにいます。

 オリジナルなやり方として顕在化させるためには、仕事でも趣味でも、自分の興味のあることに、どれだけ夢中になって集中できるかにかかっていると思います

 「自分には個性がない」と嘆く人の多くは、ただ単に、時間の経つのも忘れて夢中になれるほど好きなものがないだけかもしれません。

 

あなたは目的地も決めずに旅行に出かけるのか

 「人を育てる」ということは、20代の頃から私の中に漠然とした目標としてありました。フランチャイズオーナー制度を取り入れてからは、それは私にとって、より明確な目標となりました。

 優秀な人材の育成は、口で言うほど簡単なことではありません。まだ正解は見つかっていませんし、どこにも正解などないのかもしれません。

 私が今、経営者を目指す若い社員に口を酸っぱくして言っているのは、「目的・目標を持て」ということです

 この話をする時によく例に出すのが、旅行です。目的地を決めずに旅行に行く人はまずいません。旅行に行く時は、まず目的地を決めます。海外なのか国内なのか? 国内なら、温泉でのんびりしたいのか、遊園地で思いっきり遊びたいのか、それとも美味しい海の幸が食べたいのか? 目的を考えて行き先を決めてホテルを予約します。次は、新幹線で行くのか飛行機で行くのか、あるいはクルマなのかを決めて、必要ならチケットを取ります。旅行ガイドを買ってきて観光名所を調べたり、ネット検索で、人気のスイーツ店の口コミ情報を集めます。これくらいのことは誰でもやっていることです。けれど、旅行なら誰でも普通にやっていることが、人生となると、途端にできなくなるのです。

 ここ数年の傾向でしょうか。旅行会杜が企画する「ミステリーツアー」が人気のようです。出発当日まで行く先がわからないので、どこに連れて行かれるのかわからないドキドキ感が人気の理由だそうです。

 私は社員たちに皮肉を込めて、

 「人生を『ミステリーツアー』にするな」

 と言っています。

 一般の方は、「美容院で働く人は皆、『美容師』という明確な目標があるのでは?」と思われるかもしれません。でも、そんなことはありません。美容師は一生続けられる仕事ではないのです。美容師として一番脂がのるのは28歳だと言われています。28歳でピークを迎えるのが美容師なのです。あとは下がるだけです。その後の人生はどうするのか? 業容院の経営者になりたいというのなら、開店予定地はどこで、どのくらいの規模の店を、いつ出すつもりなのか? その時のために、ちゃんと貯金をしているのか? ほとんどの場合、そうした具体的な質問に答えを持っていないのが残念ながら実情です。

 旅行会社のミステリーツアーは、それが参加者の趣味に合うかどうかはわからないにしても、取り敢えずどこか楽しいところに連れて行ってくれるのでしょう。食事も、何科理かは店に行くまでわからないにしても、一応、決まった時間に何かを食べることはできます。終わりの時間も決まっています。すべて添乗員の言う通りに動いていればいいのですから、ラクはラクです。

 この「ラク」というのが、人生をミステリーツアーにしてしまう最大の要因です。

 会社が9時半に始まるといったら、9時半にタイムカードが押せるように来る。8時に会社が終わると言えば、8時になったら帰る。そして後の時間は、楽しいフリータイム。この人は、「8時に仕事から解放されるため」だけに一日を過ごしているのです。一日を、どれだけラクに過ごせるかという、超短期スパンで考えて行動しているのです。

 これはまさしく、将来の目標がないからです。

 目標もなくラクに過ごした毎日など、そんなものをどんなに積み重ねていっても、人生という長い旅行ではどこにも辿り着けないし、何の充実感も得られません。

 人生は旅行と同じです。楽しい旅行をするには、まず最初に目的地を決めなければ目的地に行けないように、将来の目標を決めなければ、楽しい人生などありはしないのです。

 あなたの人生は、ミステリーツアーになってはいませんか? これを機に、再点検してみてください。


<書籍紹介>

地道力[新版]   
目先の追求だけでは、成功も幸せも得られない!

國分利治 著 
本体価格 1,300円

成功の秘訣、それは「コツコツと続けること」。夢ではなく、目標を持ち、それに向かって日々前進することの大切さを説いた一冊。

 

<著者紹介>

國分利治(こくぶん・としはる)
美容グループ・株式会社アースホールディングス代表取締役
1958年生まれ。福島県出身。工業高校電気科を卒業後、地元の縫製工場に就職。19歳のとき、美容院の経営者になることを目的に上京し、東京・新宿の美容室に住み込みで就職。1年半後には店長、5年後には17店舗を管理するマネジャーとなる。その後30歳で独立。葛飾区に「Hair&Make EARTH(アース)1号店」をオープンする。大型店舗展開で業績を伸ばし、約10年後には16人のフランチャイズオーナーを育て、総店舗数も100に達する。2007年にはロンドンにも進出。2013年8月現在、日本全国に221店舗を展開。フランチャイズオーナー54名、総従業員数約2700名。100名の経営者づくりを目指している。愛車はフェラーリ。

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