「論理思考」はパズルで身につく! ~ 演繹・帰納・アブダクションを学ぶ ~
2013年10月03日 公開 2023年01月05日 更新
《『すべての論理思考はパズルが教えてくれる』より》
なぜ論理思考が重要なのか
私たちは、日常生活や仕事の中で、数多くの状況判断を行っています。どのような交通手段を使って会社に出勤するかといった単純なものから、山積みの仕事をどの順番で片付けていくのが効率的か、次の会議で提案する企画をどうするか、部下に任せる仕事をどれにするかなどといった複雑なものまで、てきぱきと正確に判断を行わなければなりません。毎日は、このような状況判断の連続で成り立っています。
たいていの判断は、論理的にではなく、直感的に行われます。時間がないときは、スパッと直感で物事を判断するしかありませんから、それが最善でしょう。しかし、少し立ち止まって考える余裕があるときは、はたしてどうでしょうか?
「ウェイソンの選択課題」という有名な心理学の実験をご紹介しましょう。次のようにカードが4枚並んでいます。「カードの一方の面に母音があれば、その裏側には必ず奇数がある」ということを証明するためには、最低何枚のカードを裏返さなければならないでしょう? 直感で2枚を選んでみてください。
実験では、75%以上の人が「E」と「7」のカードを選ぶことが明らかになっています。しかし、実はこの判断は誤っていて、正解は「E」と「4」なのです。もう一度じっくりと論理的に考えてみましょう。
証明しなければならないのは、「カードの一方の面に母音があれば、その裏側には必ず奇数がある」という命題です。この反例となるのは、「片側が母音なのに、もう一方の側が偶数」であるようなカードだけです。反例が存在しないことを示せば、命題は証明できたことになりますから、母音の書かれている「E」のカードと偶数の書かれている「4」のカードを裏返せばよいわけです。少し考えれば、だれでも納得できるはずの問題です。
直感は素早い判断を行うときにはとても便利なのですが、実は非常に多くの誤りを含んでいます。ですから、直感だけに頼って生きていくのは危険です。事業に失敗したり、株で大損したり、ダメ男や悪女にひっかかったりするのは、たいてい誤った直感を信じて深みにはまってしまうことからきています。特に、複雑で高度な現代社会を生き抜くためには、野性的な直感は当てにならない場合のほうが多いことでしょう。
そうは言っても、私たちは直感的に物事を判断してしまいがちです。ハーバード大学の学生によって行われた面接に関する興味深い実験結果があります。面接試験技法の訓練を受けた試験官が15~20分かけて面接を行ったときの評価判断と、訓練を受けていない人が面接開始時の挨拶の様子だけをビデオで見たときの評価判断が、ほとんど一致するというのです。これは、もはや面接試験の中身にほとんど意味がないということを示しています。適切な判断を行わなければならない面接官ですら、第一印象という直感で人を判断してしまっているということです。
判断の精度を高めるためには、直感を鵜呑みにしてはいけません。論理思考(ロジカルシンキング)を磨き、直感の誤りを修正していく努力をしなければなりません。特に、情報が非常に多く手に入る現代では、論理思考が確実な道しるべとなってくれるはずです。