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「U理論」とは?

中土井僚(プレゼンシングインスティチュートコミュニティジャパン理事)

2014年02月13日 公開 2015年04月23日 更新

 

 U理論のもう1つの大きな功績は、直感に代表されるアーアィストやアスリートたちの内的プロセスがイノベーションと関係があるという事実を見出したことです。それは個人にとどまらず、集団にも当てはまるとした点もU理論の独自性です。

 オットー博士は、「出現する未来」から学び、イノベーションを創り出していくプロセスを図のようにUのモデルで表現しています(図表0-2 U理論の3つのプロセス)。

U理論は大きく言うと、この3つのプロセスによって成り立っています。

 1 センシング:ただ、ひたすら観察する

 2 プレゼンシング:1歩下がって、内省する。内なる「知」が現れるに任せる

 3 クリエイティング:素早く、即興的に行動に移す

 これは、1のセンシングから2のプレゼンシンクの状態にたどり着いたときに未来が出現し、そこから得た直感やインスピレーションに、1人もしくは複数で形を与えることでイノベーションが現実化していくということを表しています。

 この説明だけでは、まだ何のことかわかりにくいかもしれません。あるいは、「これはまさに自分がやってきたことだ」とか「昔、自分はこういう体験をしたことがある」という方もいらっしゃるかもしれません。くわしくは、本文でエピソードとともに解き明かしていきますので、今は「そんなものなのか」と思っていただければ結構です。

 

 U理論は、2007年に原書“Theory U Leading from the future as it emerges”が出版され、2010年11月に『U理論――過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術』(英治出版)として日本語版が出版されました。私はあるご縁をいただいて、日本語版の翻訳に携わらせていただきました。

 同書はこれまで順調に重版をしており、おかげさまで多くの読者に恵まれています。しかし、600ページを超える学術書であるため難解な部分も多く、多くの方々にU理論を活用していただくためには、もっとわかりやすく、かつ実践の方法にも目配りがきいた入門書が必要であると感じていました。

 また、私自身もエグゼクティブコーチ、ファシリテーターとして数多くの企業、組織、個人を対象に、U理論に基づく変革に携わらせていただき、この理論の主眼である対症療法に終わらない「本質的な変容」の体験を得ることができました。本書ではその体験を踏まえながら、U理論をわかりやすく紹介するとともに、実践の現場で得た知見やワークを数多く紹介していきます。

 

 U理論は、過去の延長線上にはない新しい「何か」を生み出そうとしたり、新しい展開を迎えたいと願う方であれば、どなたでも参考にしていただくことが可能です。

 

 U理論は、不確実性が高く先の見通しがつかない現代に、新しい可能性の道を照らし、変革を実現する道しるべとなってくれると確信しています。本書がU理論との出会いの機会となり、1人でも多くの方のターニングポイントに貢献するものとなることを願ってやみません。

 


<書籍紹介>

人と組織の問題を劇的に解決するU理論入門

中土井僚 著 

人と組織を劇的に変える新手法「U理論」を、原著の訳者で企業変革の実績がある著者が、現場のエピソードを盛り込んで、その本質と実践法をわかりやすく解説します。使える手法満載。

<著者紹介>

中土井僚

(なかどい・りょう)

オーセンティックワークス株式会社 代表取締役。社団法人プレゼンシングインスティチュートコミュニティジャパン理事。特定非営利活動法人 日本紛争予防センター理事。フリュー株式会社 社外監査役。広島県呉市出身。同志社大学法学部政治学科卒。組織変革ファシリテ一夕一。U理論をベースとしたマインドセット転換による人と組織の永続的な行動変容を支援する“組織進化プロセスコンサルティング”を行なう。経営陣の分裂、部門や立場の違う者どうしの利害対立、上司・部下の関係をはじめとした職場の人間関係の悪化を自発的な解消に導き、それを“機会”に変えるフアシリテーションにより、行動変容と組織変革を支援している。過去に手掛けた組織変革プロジェクトは、業績低迷と風土悪化の悪循環が続いていた化粧品メーカーのⅤ字回復や、製造と販売が対立していた衣類メーカーの納期短縮など50社以上に及ぶ。大学卒業後、アンダーセンコンサルティング(現:アクセンチュア)に入社し、コンサルタントとして、ITを活用した業務プロセス改革や顧客戦略プロジェクトなどの組織・人材設計を行なう。情報システムによる業務効率化だけでは解決しえない人と組織の課題に取り組むべく、組織・人材開発業界に転身。当時日本ではまだ黎明期であったコーチングと出会い、パーソナルライフコーチとしての活動を開始、2005年に独立。エグゼクティブコーチとして、一部上場企業の経営者を中心に意思決定支援を行なう。株式会社野村総合研究所の社内ベンチャーであるIDELEA(経営者の意思決定支援事業であるエグゼクティブコーチングと組織開発事業)の立ち上げに協力する。2007年より、U理論をベースにした個人向けのリーダーシップ開発プログラムの提供を行ない、U理論実践者である「チェンジ・オリジネ一ター」の育成と支援活動も手掛けている。
訳書に『U理論――過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生みだす技術』(C・オットー・シャーマー著、中土井僚・由佐美加子訳、英治出版)がある。

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