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デジタルデトックスのすすめ〔2〕僕もデトックスを実際にやってみた

米田智彦(編集者)

2014年02月19日 公開 2024年05月28日 更新

 

<仕事の質もデトックスで向上>

メールの確認は1日2回だけにする

 僕はデジタルデトックスの具体的な方法として、メールをチェックする回数を制限して、1日に朝夕の2回としました。

 現代のビジネスシーンは、まさにメールの嵐です。僕自身、とにかく来たメールは早く返さなくてはと、メールが届く度にチェックして、スマホでその場で打ち返すことも少なくありませんでした。

 しかし、よくよく考えてみてれば、それほど火急に返さなければいけないメールは1日にどれほどあるでしょうか?

 スマホで仕事用のメールを送受信している方もいると思いますが、それこそ24時間体制で対応を迫られていると、勝手に思い込んでいるだけなのです。メールを見過ごすことはよくありませんが、急ぎの用件であれば、電話があるものです。

 1日2回と制限することで、少ないメールのやり取りで連絡が済むように、ひとつひとつの文面を丁寧に書くようになりました。そうすることで先方のメールの回数も少なくて済むので、互いにメリットがあると思います。

 メールに限らず、必要な情報を検索したり、クラウド上にあるメールや文書、画像を取り出すことにネット接続は必要ですが、仕事の質を上げるのは必ずしも優れたネット環境だけではない、という当たり前のことを思い出しましょう。

 同時に複数の作業をこなしていくことが「よし」とされる風潮がありますが、メール1通を丁寧に書いて相手にきちんと意図を伝えることや、ひとつの文書をミスがないように、論理的に書くことは、マルチタスクとは逆で、いかにその作業に集中できるかにかかっています。僕も、ブラウザを立ち上げながら原稿を書いていると、ひっきりなしにメールやSNSのメッセージが入り、その度に集中しているモードを解いて、返信をしたり、チャットをしたり、たまに電話したりで、結局、集中すれば1、2時間あれば書ける文書を丸1日かかって完成させたなんてこともありました。この「分断される時間」というのが、なにより曲者だったのです。

 そして人の集中力がつづく時間はそれほど長くない、ということを頭に叩き込んでおいた方が良いでしょう。1日8時間働くからといって、その間集中しつづけることはできないと最初から思っておくべきです。人間が生きていくために消費するカロリーである基礎代謝のうち、大脳が消費する割合は全体の約20%にものぼるそうです。

 脳はただでさえエネルギーを消費するわけですから、それをいかに効率良く作業のなかで分配していくかが仕事の質を上げるカギになるのです。

 メーラーを常時接続にしないというのは、集中する時間の分断を避けるために効果的です。集中モードのことを、僕は「思考の井戸に降りる」とよくいっています。深い井戸の底で熟考するような精神状態です。夢中になって何かに取り組んでいて、我を忘れるような状態を「フロー状態」と呼びますが、フロー状態はそれほど長くもたず、とても貴重だという強い認識を持っています。

 ですので、マルチタスクで「ながら仕事」や「ながら勉強」は一見効率的なようですが、フロー状態に辿り着いてはいないので、あとから読み返すと、散漫な文章を書いてしまっていることが多いのです。

 メールを制限することで必然的に、連絡の基本が電話になりました。

 もちろん、エビデンスを残さなければならない場合など、メールの方が適した連絡手段となる場面もあります。しかし、この場合も電話で話したあと、「先ほどはありがとうございました。……」と確認のメールを後送すれば済む話です。

 メール中心のコミュニケーションだと電話をするのが億劫になる、ということは僕も経験があります。「相手が忙しかったら申し訳ない」とか「電話で話しかけるのは怖い」といった感情が浮かんでくるのは当然だとも思うのですが、実はメールでやり取りをつづけた結果、些細な言葉尻の揚げ足取りのやり合いになったり、問題が複雑化することも多いものです。

 電話でのコミュニケーションを主体とした結果、やり取りが複雑にならず、相手の雰囲気を知ったうえで提案や相談ができることが多く、スムーズな意思確認ができるようになり、連絡の行き違いや誤解が生じることもなくなりました。

 

<書籍紹介>

デジタルデトックスのすすめ
「つながり疲れ」を感じたら読む本

米田智彦 著

「ムダな時間」「面倒な人間関係」など、ネット上のストレスをすっきり整理する方法を伝授。かしこく使えば、もう疲れない!

<著者紹介>

米田智彦

(よねだ・ともひこ)

編集者

1973年、福岡市生まれ。青山学院大学卒。研究機関、出版社、ITベンチャー勤務を経て独立。フリーの編集者・ディレクターとして出版からウェブ、ソーシャルメディアを使ったキャンペーン、プロダクト開発、イベント企画まで多岐にわたる企画・編集・執筆・プロデュースに携わる。2005年より「東京発、未来を面白くする100人」をコンセプトにしたウェブマガジン「TOKYO SOURCE」を有志とともに運営。数々の次世代をクリエイトする異才へのインタビューを行う。2011年の約1年間、家財と定住所を持たずに東京という“都市をシェア”しながら旅するように暮らす生活実験「ノマド・トーキョー」を敢行。約50カ所のシェアハウス、シェアオフィスを渡り歩き、ノマド、シェア、コワーキングなどの最先端のオルタナティブな働き方・暮らし方の現場を実体験。2013年、その内容をまとめた 『僕らの時代のライフデザイン 自分でつくる自由でしなやかな働き方・暮らし方』(ダイヤモンド社)を出版。共著に『これからを面白くしそうな31人に会いに行った。』(ピエ・ブックス)、『USTREAMビジネス応用ハンドブック』(アスキー・メディアワークス)、編集・プロデュース作品に『混浴温泉世界 場所とアートの魔術性』(河出書房新社)、『マイクロモノづくりはじめよう「やりたい!」をビジネスにする産業論』(テン・ブックス)、『セカ就!世界で就職するという選択肢』(朝日出版社)等がある。

 

 

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