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部下指導のコツ~「きみに任せた」がなぜこれほど部下に嫌がられるのか?

本田有明(本田コンサルタント事務所代表)

2014年04月22日 公開 2022年07月12日 更新

 

部下をやる気にさせる「きみに任せた」の使い方

「きみに任せた」はうれしい言葉、でもイヤな言葉

切れ者の上司は部下の仕事を奪ってしまうことが多い。もちろんこれと正反対のタイプもいる。過干渉の上司である。

ディレーラー(脱線する人)の特徴にも含まれていたが、部下に仕事を任せたものの任せきれず、しつこく干渉してしまう。あるいは指示か細かすぎ、どうでもよいことにまで「このやり方でやれ」と強制してかかる。部下の側にしてみれば、自分はまったく信頼されていないのだと感じる。

「指示はていねいに与えよ」とは、どの管理者本にも書いてあることだが、それは具体的にわかりやすくという意味であって、部下の創意工夫を封じてしまうことではない。

業務の進捗ぶりを確認することも大切だが、すべてに先まわりをして「あれはしたか、これはしたか」と追及するのは、やる気を伸ばす部下指導ではない。それでは失敗を未然に防ぐことはできても、部下の心を萎縮させ「指示待ち族」にしてしまう危険性が高い。

ひとりでは何もできない最低ラインの部下は別として、任せたかぎりは次の報告の時期が来るまで、黙って見守る忍耐力も上司の要件である。切れ者の上司はなかなかこれができない。スピードに乗るのは得意なのだが、部下のスピードに合わせて待つというのがどうも苦手なのだ。そのため多くの上司は、重要度の高い仕事は自分で処理したいという誘惑にかられる。

では、とにかく任せればそれでよいか。管理者本に書いてあるとおり「きみに任せた」といって、口を出さなければよいのか。

そう単純にはいかない。そこがロボットとは違って、さまざまな心の綾がある人間のむずかしいところだ。

筆者が行っている研修でアンケートをとってみると、上司からいわれたうれしい言葉として「きみに任せた」は必ずベストスリーに入る。たしかにこれは上司と部下の信頼関係を示す魅力的な言葉に感じられる。

しかし一方で、「きみに任せた」は、上司からいわれたイヤな言葉としても、しばしばランクインしているのだ。民間の会社でもちらほら見られるが、官公庁での研修のほうで、より顕著に認められた。どういうことだろうか。

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