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部下指導のコツ~「きみに任せた」がなぜこれほど部下に嫌がられるのか?

本田有明(本田コンサルタント事務所代表)

2014年04月22日 公開 2022年07月12日 更新

 

なぜ「悪魔のセリフ」になるのか

イヤな言葉としてあげた人たちに聞いてみたところ、この言葉がつかわれるのは主に次のような場面であることがわかった。

(1)上司がその仕事の責任をとりたくないとき。
(2)どうでもよい雑用レベルの仕事を与えるとき。
(3)上司自身がきちんと理解できていない仕事を丸投げするとき。
(4)ほかの人に任せると文句が出るような仕事を押しつけるとき。

すべてに共通するのは上司の逃げ腰である。これでは「信頼関係を表す魅力的な言葉」とはいえない。右の4項目に、それぞれ言葉を補ってみると、上司のホンネが透けてくる。こういうことだ。

(1)「きみに任せた。--いいか。つまり責任はおまえにあるってことだ」
(2)「きみに任せた。--どうせその程度の仕事しかできないだろうから」
(3)「きみに任せた。--おれにはよくわからないが、適当にやってくれ」
(4)「きみに任せた。--おまえならおれに文句などいえないはずだから」

浮かび上がってくるのは、結果責任の転嫁、見くびった態度、説明責任の放棄、厄介ごとの押しつけ、などである。こうしたことが言外に察せられるから、「きみに任せた」は悪魔のセリフともなるわけだ。

会社より官公庁の研修のほうでこれらの指摘が目立つのは、組織の指示・命令系統がはっきりしていて、タテの力関係が支配的だからだ。会社では下位の者が上位の者に意見をしたり、激しく衝突したりするのは日常茶飯だが、官公庁ではそれほど頻繁ではない。「きみに任せた」という熨斗をつけて、乱暴に仕事を投げてよこす上司が少なくないのである。

 

「~だから、きみに任せた」という習慣を

では「きみに任せた」というセリフは口にしないほうがよいのか。

そんなことはない。イヤな言葉としてあげる人がいる一方で、より多くの人がやる気をかきたてられる言葉として快く受け入れているのだから。

上司の側は、次の2点をきちんと確認していえばよい。

・ほんとうに前向きな気持ちで述べているのか。
・誤解の余地があるときは言葉を補っているか。

言葉を補うとは、こんな文脈で考えてみるということだ。

「~だから、きみに任せた」

「~」の部分にていねいな説明を加えれば、上司の思いが部下に伝わる。納得するかどうかは、日頃のコミュニケーションのあり方にも左右されるが、少なくとも「きみに任せた」と丸投げするよりずっとよい結果につながるはずだ。

・「きみなら、この程度の仕事はひとりでこなせると信じている」
・「緊急事態なので、どうしてもやってくれ。責任はおれがとる」
・「むずかしい仕事だけれど、自分もサポートするつもりだから」
・「本来は○○くんの仕事だが、どうしてもやりくりがつかない」

こうした説明をしたあとで「だから、きみに任せた」と続ける。単に言葉の問題ではない。心の問題がそこにひそんでいるのだ。

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