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会議で意見を通すテクニック

佐々木常夫(元東レ経営研究所社長)

2014年05月28日 公開 2024年12月16日 更新

会議で意見を通すテクニック

多忙な中でも会議には出席しなければならないし、自信のある意見は極力通したいところ。東レ経営研究所の社長時代、東レ本体のさまざまな部署の事業部長から会議用発案書の作成代行を依頼されるほどの会議強さを誇った佐々木常夫氏の、会議で輝くテクニックを紹介。

※本稿は、佐々木常夫 著『人を動かすリーダーの話し方』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

【準備】 会議の時は15分前に席に着く

・当ててほしいときは目立つ席に座る

私は会議が始まる15分前には会議室に入るようにしていた。

理由は2つある。1つは誰よりも早く会議室に入れば、席を自由に選ぶことができるからだ。

私は自分にとって重要度が低い会議には極力出席しないようにしていたが、立場上やむを得ず出なければいけないものもあった。そんなときは書類の入ったクリアファイルを会議室に持ち込んで、会議そっちのけで「内職」に励んでいた。

しかし「内職」が偉い人に見つかると大目玉を食らうことになる。そこで偉い人の席から死角になる席を、早めに行って確保するようにしていたのである。半日ほどの無用な会議の中で、大きな仕事を2つはこなすことができたから、これは大きかった。

また逆に「今日は偉い人に自分の意見をちゃんと聞いてほしい」というときには、やはり早めに行って、その人の目の前の席を確保するようにしていた。会議中に誰よりも目立つ席に座って、いかにも意見を言いたそうな顔をしていれば、当ててくれるものである。

・会議前の15分間をシミュレーションに充てる

私が15分前に会議室に入っていたもう1つの理由は、その日の会議の配布資料に目を通すためである。

みなさんの会社はどうかわからないが、東レの場合は会議のときに配られる資料がかなり多かった。そこで私は会議前の15分間を使って、資料を一通り読み、その日の会議のポイントをつかむようにしていたのである。

場合によっては配布資料が用意されていないこともあったが、そんなときは常に持ち歩いているファイルから書類を取り出して、会議が始まるまでの間「内職」をしていればいいだけのことである。

この15分間が、私にとっては前項「会議は予測のゲームである」で話した予測の時間に当たった。この時間を使って「今日の会議のポイントはこの部分で、きっと○○さんはこういう発言をするから、私はこう言おう」というふうにシミュレーションをするのである。

こうしたシミュレーションは、繰り返せば繰り返すほど予測精度が上かっていくものである。

一方、私以外のほとんどの人は、会議開始時間ぎりぎりになって会議室に飛び込んできていた。当然資料に目を通す余裕はない。そのため会議が始まり、担当者の説明を聞いて、ようやく概要を把握できる。だから自分の意見を言うときも、相手に反論するときも、常にぶっつけ本番で臨まなくてはいけなくなるのである。

私と彼らの違いは、15分前に会議室に入ったか、直前になって入ったかというわずかなことである。しかし、このわずかな違いが、大きな違いとなって表れてくるのである。

だからみなさんも会議で自分の意見を通したければ、ほんの小さな手間も惜しまないでほしい。

 

【資料】 シンプル=わかりやすい=採用される

・勝つためにはムダな説明を受けている暇はない

戦時中は大本営陸軍部で作戦参謀、戦後は伊藤忠商事の会長を務めた、瀬島龍三さんという人がいる。

この人が部下に報告をさせるときに徹底していたのが、資料は1枚、要点は3つにまとめさせるということだった。

「戦争もビジネスも、勝つためには最短コースで決断を下さなくてはいけない。だからムダな資料を読んだり、ムダな説明を受けている暇はない」というのが瀬島さんの考え方だった。

私も瀬島さんほどではないが、会議に提出する資料は必ず5枚にまとめるようにしていた。

東レの経営会議では、20枚や30枚も資料を作成して提出するのが当たり前だったから、5枚というのは異例の少なさだ。

経営会議では、いつも3時間程度の会議時間の中で、3~4件の案件を検討する。つまり1件あたりの検討時間はわずか1時間弱に過ぎなかった。

その短い時間の中で、提案者が資料について説明をし、メンバーで議論をおこない、そして結論を出さなくてはいけない。

するとせっかく30枚もの資料を用意しても、途中で飛ばしながら説明をしないと時間オーバーになってしまう。その結果、部分部分をつまみ食いするような、要領を得ない説明になりがちだった。

・資料が少ないから質の高い会議が可能になる

一方、資料の枚数を少なくすれば、枚数内に収めるために、余分な情報を削ぎ落としてコンパクトにまとめなくてはいけなくなるため、要点のみを抽出した内容になる。

するとメンバーも資料にざっと目を通すだけで、内容のポイントを的確につかむことが可能になる。

また資料が少なければ説明時間も短くて済む。私の場合はいつも20分程度で説明を終えていたため、残りの40分をじっくりと議論の時間に費やすことができた。

つまり資料の枚数が少なければ、内容を的確に把握したメンバーによる本質的な議論を、十分な時間をかけておこなうことが可能になるわけだ。質量ともに充実した会議になるのである。

こうしたこともあり、私が自分で資料を作成して会議に臨むと、いつも極めて高い確率で提案が採用になっていた。

やがて社内では、「佐々木が作る会議用の発案書は、わかりやすくて通りやすい」という評判が広がっていった。

東レ経営研究所の社長時代には、東レ本体の、さまざまな部署の事業部長から会議用発案書の作成代行を依頼されていたぐらいである。

資料も説明もシンプルなほうがわかりやすい。そしてわかりやすければ採用されやすいのである。

「シンプル=わかりやすい=採用される」の法則である。

 

著者紹介

佐々木常夫(ささき・つねお)

佐々木常夫マネージメント・リサーチ代表取締役

1944年秋田市生まれ。6歳で父を亡くし、4人兄弟の次男として母の手ひとつで育つ。1969年東大経済学部卒業、同年東レ入社。30代前半に倒産しかけた会社に出向し再建。1987年社長のスタッフとして経営企画室で経営革新プログラムを担当。1989年繊維の営業でテグス(釣り糸)の流通改革を断行。1993年プラスチック事業企画管理部長。2001年取締役経営企画室長。2003年東レ経営研究所社長。2010年同社特別顧問。2013年より佐々木常夫マネージメント・リサーチ代表取締役。著書に『会社で生きることを決めた君へ』(PHP研究所)などがある。

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