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なぜ、皮膚は掻けば掻くほど「無性に」かゆくなるのか?

2014年10月24日 公開

菊池 新(皮膚科医、医学博士)

《PHP新書『なぜ皮膚はかゆくなるのか』より》

 

「イッチ・スクラッチサイクル」とは

 かゆみを語るうえで、もっとも重要な問題がある。それが、「無性にかゆくてたまらない状態」を引き起こす最大の元凶である「イッチ・スクラッチサイクル(itch-scratchcycle)」だ。

 「イッチ(itch)」とは「かゆみ」、「スクラッチ(scratch)」は「掻く」という意味である。そしてイッチ・スクラッチサイクルとは、「かゆい」→「掻く」→「掻いた部分が傷つく」→「傷ついた部分に炎症が起きる」→「症状が悪化する」→「もっとかゆくなる」→「さらに掻き壊す」→「掻いた部分がもっと傷つく」→……という悪循環のことを指す。

 要は、掻けば掻くほどかゆくなるということだ。

 イッチ・スクラッチサイクルについて説明する前に、大前提となる皮膚の基本構造について簡単に書こう。

 皮膚は、「表皮」「真皮」「皮下組織」の三層構造になっている。

 表皮は、一番外側で外界と接している部分。真皮はそのすぐ内側にあり、コラーゲンなどのタンパク質がその大部分を占めている。皮下組織は、皮膚の三層構造のうちもっとも内側にある組織で、大部分が皮下脂肪からなる。なお、表皮の一番外側の外界と接している部分は、「角質層」と呼ばれ、皮膚のバリア機能を果たしている。

 かぶれや虫刺されなどは、表皮で起こる。また、じんましんは真皮で起こる炎症である。一口に「皮膚の炎症」といっても、病気によって違いがあるのだ。

 

 イッチ・スクラッチサイクルに話を戻そう。イッチ・スクラッチサイクルは、特にアトピーのようなアレルギー性のかゆみに深く関係している。

 図の左、「かゆみ」の部分を見てほしい。

 アレルギーで最初に起きる反応は、「マスト細胞の脱顆粒」である。「マスト細胞」や「脱顆粒」についての詳細は次章に書くが、ここでもごく簡単に説明しておこう。

 たとえば花粉のアレルギーのある人が、花粉と接触すると、全身のどこにでも存在するマスト細胞に花粉の分子がくっつき、それに誘発されてマスト細胞中の顆粒が放出され、中にあったヒスタミンが組織中にばらまかれる。するとかゆくなる。これが「かゆみ」の始まりである。

 そして、「掻破は」つまり「掻く」「掻き壊す」が起こり、「表皮細胞が傷つく」。すると今度は、傷ついた表皮の細胞を修復するために、「サイトカイン」と呼ばれる「インターロイキン1(IL-1)」や「腫瘍壊死因子α(TNF-α)」といった化学伝達物質が出てくる。そしてこれらのサイトカインが出ることで、炎症が起き、「皮膚炎の悪化」を呼ぶ。

 また、サイトカインが出たことで、「軸索反射」という反射も起きる。軸索反射についても、改めて次章で書くが、かゆみを増幅するしくみの1つと考えていただきたい。

 掻いたことで、さらにその部分の炎症が強くなる。そして、「皮膚炎が悪化」し、さらに「かゆみ」が増す。そしてさらに掻き壊す。これを延々と繰り返していけばどんどん皮膚炎は悪化し、かゆみから抜け出せなくなっていくだろう。

 無性にかゆくてたまらない、掻いても掻いてもすぐにまたかゆくなる。つまり、このイッチ・スクラッチサイクルを抜きにして、かゆみは語れないのだ。

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