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伊藤塾塾長のメソッド・「考える力」をつけるには

2014年12月22日 公開

伊藤 真(弁護士、伊藤塾塾長)

《PHP文庫『伊藤真の考え抜く力 思考力を磨く90のメソッド』より》

 

理解する、記憶するのは何のため?

 「考える」ことの意義を、もう少し追究してみましょう。

 人間の知的作業は、次の4つのプロセスからできあかっているのではないかと私は思っています。

 理解する→記憶する→考える→表現する

 そもそも人は、頭のなかに何も情報や知識がない状態で「考える」ことはできません。「理解」と「記憶」は、考える前段階として必ず必要になってきます。

 しかし、いくら情報や知識を記憶したところで、それは単に「知っている」だけにすぎず、何かを考えるための道標にはなりません。試験問題で正しい解答を欄に埋めるだけならともかく、自分の頭で論理を組み立てるには、必ずある問題について「自分なりに理解する」というプロセスが必要になります。

 たとえば「法律」というものについて考える場合、まず押さえなければならないのは、「どうしてその法律ができたのか」という、先人が考えた理屈になります。それがわからないと問題の本質がつかめません。

 法律以外でもそれは同じことです。たとえば「相対性理論」という有名な理論がありますが、そもそもどのような問題を解決するためにこの法則があるのかを知らなければ、試験問題には答えられても、物理の諸問題を考察したり、あるいは新しい技術を生み出したりする際に、この法則を使いこなすことはできないわけです。

 これら先人が考えたことを自分の頭のなかで再構成し、考えるための素材としてストックしておく、これが「記憶」です。

 ですから本来の記憶の使用法とは、「年号が1年違う」とか、「綴りが1文字違っている」とか、そのような些末な問題を指摘するためではないのです。そのような細かいことは辞書でもインターネットでも代替可能なわけですから。

 むろん記憶したことを完全に忘れてしまっては意味がありませんが、正確に覚えていることよりも、むしろ自分がある問題を考えようとするときに「この問題はこういうふうに理解すべきだったな」と、それを思考の道具として使えるか否かが重要になります。

 考える際に必要な最低限の素材と道具を手に入れる。これが「理解」であり、「記憶」ということなのです。

<ポイント>
まず「先人が考えたこと」を理解してみる

セオリーや過去の蓄積を「勉強」する

 「理解」や「記憶」のために必要なのは、「勉強」です。

 しかし、「試験のため」に勉強するならともかく、私たちは「自分を伸ばそう」とか「もっと可能性を広げよう」という先の見えないことに対しての勉強に関しては、積極的でない傾向があります。このような姿勢は結果的に自分の成長を阻むことになります。

 たとえばどのような仕事であっても、その仕事で「セオリーとされていること」があるでしょうし、その仕事の先人が確立したノウハウがあります。これらをまったく修得せずして、「面白い仕事ができない」とか「自分には難しい」と思考停止しているのは本末転到です。まず「基礎」として、それらをしっかり身につけることが出発点でしょう。

 けれども現実には、常に「セオリーどおり」、「先人のノウハウどおり」やっていたのでは、うまくいかないこともあります。しかしだからこそ「セオリー」や「過去のノウハウ」を勉強して土台にすることで、自分で考え、そこにプラスアルファを乗せていくわけです。その結果、「自分らしさ」や「自分が面白いと思えるような仕事のやり方」が見えてくるのです。

 これは個々の知識や情報に関しても同じです。

 「自分には企画能力がない」「プレゼン能力がない」と嘆きながら、その実、「どんな企画が成功しているのか」を調べようとしないし、「どんなプレゼンがうまくいっているか」も研究していない人が多いように見受けられます。

 確かに最終的には「いかに自分独自の思考ができるか」が重要になるのでしょうが、誰だって土台に何もない状態からオリジナルな思考ができるわけもありません。「理解し、記憶する過程」というのは、いくらやってもやりすぎるということがないと言っていいほど、とても重要なことなのです。

 それでも多くの人が、知識や勉強が役に立たないと誤解しているのは、「せっかく身につけた情報が役に立たない」とか、「知識が使えない」ことを実感してしまうからかもしれません。しかし、そのようなことは当然で、情報や知識はあくまで「素材」でしかなく、そこから結論を導きだすのは、自分自身の「考える作業」だからです。

 「役に立つ知識」をという目的で、「正解」ばかり集めようとしている人は、結局ムダなことに時間を費やすことになるでしょう。

 「最近の新司法試験合格者は、与えられた案件とよく似た事例の判例を検索する能力には長けているが、自分の頭で考えない」とある先輩実務家が嘆いていました。ロースクールで「考える勉強」という名の下に正解を探す訓練ばかりをしてしまった人が実は多いのです。

<ポイント>
勉強は記憶するためにだけやるものではない!

 

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1日5分、「考える時間」を確保せよ >

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