何が起こっても一瞬で対処できる「一流の上司」になるには
2015年02月04日 公開 2015年02月04日 更新
《『何が起こっても一瞬で対処できる上司が使う50のキーワード』より》
一流の上司と二流の上司は何が違うのか
上司とは技術職です。
それは様々な状況に応じて、必要な手法を使い分けて、部下やほかの組織を巻き込んで成果を上げていくことが求められるからです。
職人的な感覚で、原料を活かして配合し、道具やタイミングを使い分ける。決してマニュアル通りにいかないのは技術職も上司職も同じです。
私はインバスケットというツールで、1万名以上の管理職や経営者、つまり上司職の方の教育に当たってきました。
インバスケットは1950年代にアメリカ空軍で活用された究極のアウトプット型の教育ツールです。軍の教育機関で、戦場に送り出す前の兵士に武器の使い方や戦い方、様々な状況での対処法などを教え込み、実際にその知識が現場で活用できるかを測定するために作られたのです。
つまり、知識が実際に使えるかどうかを試すためにインバスケットは生まれたのです。
今はインバスケットは日本の大企業の多くで、リーダーや管理職の昇格試験や教育ツールとして活用されています。
活用目的はアメリカ空軍と同じです。
知っている知識が実際に現場で使える、つまりアウトプットできるかを評価するツールなのです。
上司の仕事には答えはありません。
それは部下も個性を持ち、様々な価値観やポテンシャルを持っているからです。
ですから、部下指導術のようなマニュアルを読んでも、部下を実際に使えなければ意味のない無用な知識です。
インバスケットでも部下に対する行動や、上司としての判断、周りの組織に対しての折衝力を試します。
しかし、多くの方がインバスケットでショックを受けます。
それは知っているはずの対処法が使えないまま、どのように対応してよいのか混沌とするまま、事態に流されるからです。
回答する方も、通り一遍の回答しか書くことができず、周りの方の対処法を知ったり私からのフィードバックを受け、自らの対処法の選択肢の少なさに落胆されるケースも多いのです。
上司職には正解は存在しません。
ただいえるのは、自分の対処法の選択肢が1つしかなく、それが正解と思い込んでいる上司は成果を生み出すことはできません。なぜなら先ほど述べた通り、技術職としての使い分けができていないからです。
これでは二流の上司です。
例えば部下が退職の相談をしてきたときに、ひたすら慰留をする。これは二流の仕事です。退職の話が出たときに相手の意思を尊重して喜んで送り出してやる。これも選択肢でしょう。または、本質的な背景を探り、そこをつぶしてこれ以上退職者の出ない風土を作るのも、上司職として持つべき選択肢です。
つまり、使い分けができてこそ一流の上司なのです。
では、一流の上司と二流の上司は何が違うのか。それは持っている手段が多いか少ないかです。
野球でもいかに速いストレートを投げられたとしても、それだけでは投手は務まりません。様々な変化球が使えて初めてプロとしてマウンドに立つことができます。
つい最近まで上司は、部下を持ちながら経験値でそれを学んできたり、先輩の上司から教わりながら一流の上司になってきました。
しかし、今は職場から伝承という言葉も消えて、かつ、上司として多様化する部下や環境、マネジメント範囲が広がる中、失敗という経験を積みながら一流の上司になるという猶予はありません。
ですから、本書では最低限上司として持っておいていただきたい選択肢をお伝えしていきます。そのうえで使い分けていくと、今まで解決できなかった問題でも必ず突破口が見えるはずです。
さらに、本書ではその選択肢を、実際の現場で思い出して使っていただくために「キーワード」でお伝えします。
それは私がインバスケットの回答を採点しているときに、あまりにも上司として知つておくべき言葉を知らない方が多いと気づいたからです。きっとぼんやりとは知っていても、明確な言葉がとっさには出てこないのです。
例えば、ある管理職の方からは判断をする際に悩んでしまって、判断ができないと相談を受けました。
なぜ悩むのか、それは判断がYES・NOのどちらかを決めることだと思っているからです。
実は「承諾」「却下」以外にも「保留」や「延期」「条件付き承諾」などといくつも判断例はあります。
悩んだときや困ったときはこのようなキーワードを知っておくだけでも解決や打開への突破口になるのです。
もちろん、そのキーワードの中にはすでに知っているというものもあるかもしれません。
しかし、実際にそれを使えていないのであれば、ぜひ使えるキーワードにしていただきたいのです。
現職の上司の方は今の上司業の振り返りとして、これから上司職になる方は、シミュレーションとしての言葉の辞典として活用していただければ著者として幸せです。
繰り返しになりますが、言葉や知識を覚えるだけでは全く意味がありません。
1つでも気になるキーワードがあれば、職場で使ってその反応を楽しんでください。
そうすることで、あなたが一流の上司と呼ばれる日も近くなるでしょう。
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