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ジョブズ、J・K・ローリング...優れたリーダーの失敗談にみる「成功の秘訣」

佐々木繁範(経営コンサルタント/スピーチライター)

2015年03月27日 公開 2023年02月01日 更新

スピーチ

※本稿は、佐々木繁範著『なぜ、優れたリーダーは「失敗」を語るのか』(PHPビジネス新書)から一部を抜粋し、編集したものです。

 

3人の失敗談の共通点

考えつくされた失敗談がいかに心に刺さるかということは、これらのスピーチ(註:本書38~p.71に掲載)を読むことで実感していただけると思います。

では、優れたリーダーはなぜ、自らの失敗を語ることにしたのでしょうか? その正確な理由は本人たちに聞いてみなければわかりませんが、いくつかの手がかりから想像することは可能です。

スティーブ・ジョブズは、2011年、亡くなった直後に出版された公式自叙伝において、スタンフォード大学のスピーチは、実は、自分の子供たちに向けて伝えたいと思った内容であることを明かしました。

死が迫っていることを知っていたジョブズは、この機会に、自分の人生における最大の学びを、子供たちに残しておきたいと思ったのでしょう。また、そのくらい真剣に考えた内容を、社会に巣立つスタンフォードの学生にも伝えたいと思ったのでしょう。

オプラ・ウィンフリーは、スピーチの中で、劣等感を感じたり、苦しい状況に追い込まれていたり、人生が上手くいっていないと感じたりしている人たちに向けた話であり、いわば、悩める学生寮の後輩のためのスピーチであることを伝えています。

J・K・ローリングは、スピーチの中で、次のように語っています。「私たちは、成功への欲望の他に、失敗への恐怖によっても突き動かされるかもしれない。実際に自分自身もそうだった。

しかし、大学を卒業してから21年間で学んだ大事なレッスンは、失敗は、不必要なものを取り去ってくれる貴重な経験であり、私たちの人生に恩恵をもたらしてくれるものである。社会に巣立っていくに際して、このことを胸に刻んで欲しい」

このように、自分の子供たちであったり、学生寮の後輩であったり、社会に巣立つ前途有望な若者たちであったり、本当に大切な人たちが、これからの人生を幸せに、悔いなく生きていくために大切なことを、自分自身が実体験から学んだレッスンを通じて、伝えようとしていることがわかります。

 

3人のリーダーが語った教訓

実際に、3人が伝えようとした人生の教訓を整理すると、次のようになります。

◆スティーブ・ジョブズ

・点と点はつながる。すべての経験は、その時にそれが将来、何の役に立つかわからないが、いつか必ず他の経験とつながって、意味を持つ。そのことを信じて、心の声に従う勇気を持て。

・アップルからの追放という手痛い経験のおかげで、成功者の重圧から解放され、挑戦者の身軽さを感じることができ、その後のクリエイティブなビジネスの立ち上げが可能となった。

・仕事で本当に満足する方法は、心から愛する仕事をすること。愛することに取り組んでいれば、どんな困難も乗り越えられる。だから、愛することを仕事にしろ。妥協せずに、探し続けろ。何が愛する仕事かは、心が知っている。

・今日が人生最後の日だと思えば、周囲に惑わされずに、自分にとって、真に重要なことが見えてくる。他人の期待や、失敗や恥を恐れながら生きるのではなく、自分本来の生き方をしろ。それは、内なる声と直感が知っている。

◆J・K・ローリング

・失敗は、自分の本質が何であるかを見つめさせてくれ、そうでないものを一切、ふるい落としてくれる。

・失敗のおかげで自由になれた。どん底まで墜ちた経験が、人生を立て直す強固な土台となった。

・失敗は、内なる安心感を与えてくれた。失敗のおかげで、自分には強い意志と、想像以上の自制心と、大切な友人がいることに気づくことができた。挫折から這い上がって、賢く、強くなれたと知ることで、これからも生きていけるという気持ちを持つことができた。

・逆境に遭遇することで、自分自身のことや、人の絆の大切さを知ることができた。苦しみから得たこの知識は、どんなものより価値があった。

・人の幸せは、何を手に入れたか、何を達成したかで測れるものではない。履歴書や資格は、人生の良し悪しを表すものではない。

・誰しも、人生において、失敗を避けることはできない。慎重に生き過ぎた場合は、失敗を免れるかもしれないが、そうした挑戦を避ける生き方自体が失敗と言える。

・人生は、困難で、複雑で、誰も完全にコントロールすることはできない。このことを謙虚に受け止めることで、人生の浮き沈みを生き延びることができる。

◆オプラ・ウィンフリー

・仕事で自分に課す基準を上げ続けていけば、誰でもいつか必ずつまずく。

・世の中に、失敗というものは存在しない。失敗というのは、私たちが、より自分らしくあるべきということを教えてくれ、その方向に向かわせるために存在する。

・大切なことは、あらゆる失敗から学ぶこと。ひとしきり落ち込んだ後、次に何をすべきか探し出すことが大事。

・どの方向に進むべきかは、「心のGPS」が教えてくれる。その感度を高めることが大事。

・私たちにとって、一番大切なことは、人生の目的を見つけること。人生の目的は、最初から明らかになることはないが、いつか必ずわかる時が来る。

・私たちが真の幸福を実現するために必要なことは、本当の自分らしさを最高レベルで表現すること。

・つまずいたり、倒れたりした時は、心のGPSが告げる小さな声に耳を傾け、自分を活き活きとさせるものが何かを見つけ出すこと。そうすれば、必ず上手くいく。

3人のリーダーが失敗を通じて学んだ教訓は、不思議なことに、表現の違いこそあれ、皆、同じことを述べているように感じられます。

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著者紹介

佐々木繁範(ささき・しげのり)

ロジック・アンド・エモーション代表、経営コンサルタント/エグゼクティブ・コーチ

1963年、福岡県生まれ。1987年、同志社大学経済学部卒業後、日本興業銀行に入行。1990年、ソニ一に入社。盛田昭夫会長の財界活助を補佐しながらスピーチ・ライティングを学ぶ。 1995年から97年まで、ハーバード・ケネディスクールに留学し、公共経営学修士号を取得。帰国後、出井伸之社長の戦略スタッフ兼スピーチ・ライターとして、ソニーの全社改革を補佐する。その後、様々な規模・業種の企業現場で経営改革に携わり、2009年に経営コンサルタントとして独立。経営者やリーダーの潜在能力を引きだして、リーダーシップの発揮をサポートしている。
著書に「思いが伝わる、心が動く スピーチの教科書」(ダイヤモンド社)がある。交通遺児育英会心塾のスピーチ講師を務める他、中央大学ビジネススクール戦略経営アカデミーなど、大学でもリーダーシップ・コミュニケーションを教えている。

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