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「もてる人」―職場でひっぱりだこになるコツ

2015年04月17日 公開

小川仁志(哲学者、山口大学准教授)

《PHP新書『もてるための哲学』より》

もてるための哲学

もてる人ほど成功する

 編集部から、
 「もてるための哲学について書いてください」
 という依頼を受けたときには、正直、とまどいました。

 というのも、自分がもてているなんて考えたこともなかったからです。とくに“もてる”というと、異性からもてるという印象が強く、イコールそれはイケメンであったり、容姿がいいということを意味したりするように思っていたからです。

 しかし、話をよく聞いてみると、決して異性にもてるということだけではなく、人間としてあらゆる人からもてる、つまり、魅力があるということについて書いてほしいという意図だとわかりました。

 そのとたん、自分でも急に、この問題について関心が湧いてきたのです。

 メディアなどでは、「モテ期」という言葉が使われたりします。人生には数回、人気が高まる時期があるというのです。芸能人などを見ていると、たしかにそうですね。一度ブレイクした人が下火になったものの、再ブレイクする。そんな様子をたびたび目にします。

 つまり、本書でいう「もてる」ということの意味は、たんに異性あるいは同性から、恋人になることを目的としてもてるというだけでなく、幅広く人気があるということだと思っていただければいいでしょう。

 

 ところで、なぜ、もてる必要があるのか?

 周囲の人が元気になるのはいいことですが、自分にとってのメリットはあるのでしょうか。これから本書を読まれる方の士気を上げるためにも、そこははっきりさせておきたいと思います。

 ずばり、もてることのメリットは、人生において成功するという点にあります。先ほども書いたように、私のいう「もてる」とは、幅広く人気があるということです。ですから、ひっぱりだこで、気持ちよく日々を過ごせるのはまちがいありません。

 人間関係はトラブルの最大の原因でもあるので、そこがうまくいっていれば、日常のほとんどは楽しく過ごせるわけです。

 そして、人間関係がスムーズにいくということは、仕事でも何でも、チャンスがまわってくることを意味します。世の中は人のつながりでできています。能力が求められるのは当然ですが、そのうえで差がつくのは人間関係だと思えばいいでしょう。だから、多くの人にもてるほど得をするわけです。

 何を隠そう、私自身が、もてることで成功してきたのだから嘘ではありません。

 くわしくはあとで書きますが、20代後半に約5年もフリーターをしていた私が、その後、働きながら哲学の博士号を取得し、高等専門学校(高専)に採用され、哲学者として多くの本を出版してこられたのはなぜか?

 さらに、この4月からは、大学の教員として活躍のステージを広げることにもなっています。

 これらはすべて、“もてた”からです。能力や資格も大事ですが、それでは差はつきません。最後は、もてるかどうかです。はじめに、この点をぜひ強調しておきたいと思います。

 こんなことをいうと、「もてるとやっかまれるのでは」と反論する人がいるかもしれません。たしかに、万ばん人にんからもてないかぎり、自分のことをよく思わない人が一人でもいれば、そういう可能性はあるでしょう。

 でも、私は、万人からもてることは可能だと思っています。そうでないといけないとさえ思っています。

 なぜなら、自分を嫌う人が一人でもいると、気分が悪くなるからです。

 万人からもてるって、すごいですよね。でも、本書はそんなすごい人間になることをめざしています。意外と(!?)野望に満ちた本なのです。

 だからといって、何もマジックのような怪あやしい話をしようというのではありません。なんといっても、私の専門は理屈と論理に満ちあふれた「哲学」なる学問です。したがって、ここでも哲学を用いたいと考えています。

 とりわけ、コミュニケーション能力に着目します。なぜなら、もてるのは良好な人間関係を築けるからであって、そのためには、うまくコミュニケーションを図らなければならないと考えるからです。

 要は、コミュニケーションのあり方について哲学しようというわけです。これでようやく、哲学者である私が「もてる」ための本を書いた理由がわかっていただけたのではないでしょうか。

 

 ちなみに、コミュニケーションとは、『大辞泉』によると、次のように定義されています。

――社会生活を営む人間が互いに意思や感情、思考を伝達し合うこと。言語・文字・身振りなどを媒介として行われる。

 すこし漠然としているので、語源から探ってみましょう。

 すると、これはラテン語の「communis」(共通の)に由来していることがわかります。いわば、コミュニケーションとは、共通性を可能にする行為にほかなりません。コミュニケーションがうまくできないと人間関係もうまくいかないのは、相手との共通性が欠けてしまうからかもしれないのです。

 そこで、本書では、最高の人間関係を築き、万人からもてるための最良のコミュニケーション能力について、提案を行いたいと思います。それは、「思いやりのあるコミュニケーション」という提案です。思いやりとは、他人の身の上や心情に心を配ることをいいます。

 コミュニケーション自体は、べつに思いやりを意識したものではありません。ふだん、みなさんもそのようなことは意識せず、ただ必要だからとっているという感じだと思います。

 じつは、そこが問題なのです。コミュニケーションを、たんなる連絡手段ととらえていると、思わぬトラブルが生じます。

 電子メールの表現が誤解を招き、トラブルになったという経験は、だれしも一度くらいあるのではないでしょうか。あれはまさに、コミュニケーションをただの道具であるかのように軽視した結果だといっていいでしょう。

 私はつねづね、「お互いさま」の倫理を説いています。お互いさまとは、相手の気持ちを考えながら行動することですが、それは「思いやり」と言い換えることも可能です。本来、コミュニケーションには、そんな相手の気持ちに配慮した思いやりが不可欠なのです。

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著者紹介

小川仁志(おがわ・ひとし)

哲学者、山口大学准教授

1970年、京都府生まれ。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。博士(人間文化)。哲学者・山口大学准教授。米プリンストン大学客員研究員(2011年度)。商社マン、フリーター、公務員を経た異色の哲学者。商店街で「哲学カフェ」を主宰するなど、市民のための哲学を実践している。専門は欧米の政治哲学。
著書に『市役所の小川さん、哲学者になる 転身力』(海竜社)、『人生が変わる哲学の教室』(中経出版)、『アメリカを動かす思想』(講談社現代新書)、『7日間で突然頭がよくなる本』(PHPエディタース・グループ)、『超訳「哲学用語」事典』(PHP文庫)などがある。

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