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人間関係を豊かにする 「ほんのちょっとの気配り」

2012年08月22日 公開

本郷陽二(著述家)

『一緒にいて楽しい人・疲れる人』より》

「~でいい」と「~がいい」の決定的な違い

 ちょっとした一言なのに妙に心にひっかかる。そんな経験がありませんか。発言した方はたいして気に留めていなくても、言われた方はなんとなくモヤモヤしてしまう……。K子さんは、友人のB子さんに対して、そういった思いを抱いていました。

 たとえば、誰かに手伝いを求めるとき、B子さんは、

 「誰か手伝ってほしいんだけど……。ああ、K子でいいや」

と言うのです。そのたびにK子さんは心の中で、「他の人でもかまわないなら、わざわざ私にふらないでよ」と思ってしまいます。

 確かに、「~でいい」という言い方には、「本当は別の人がいいのだけれど、見当たらないので、仕方ないからあなたに頼む」というニュアンスが感じられます。こんな投げやりで、どうでもいいような頼み方では、喜んで手を貸すという気持ちになれないのもうなずけますね。でも、もしB子さんが、

 「誰か手伝ってほしいんだけど……。あ、K子がいいな」

 と言ったとしたらどうでしょうか。K子さんが適任だからぜひ頼みたい、というニュアンスが伝わってきます。これなら、協力する方もやる気が出ますね。

 また、K子さんが飲み物をいれるとき、B子さんに「何にする?」と聞くと、「私はコーヒーでいい」とか、「喉が渇いてるから、アイスティーでいい」のように答えます。これにもK子さんはモヤモヤしてしまいます。

 他人が飲み物をいれてくれるのに、「~でいい」はありません。こういったシーンでは、

 「私はコーヒーがいいな。お願いしてもいい?」
 「喉が渇いてるから、アイスティーが飲みたいな」

 のように答えるべきでしょう。

 プロポーズの際に、「君でいい。結婚してくれ!」などと口にしたら、破談間違いなしですよね。「~でいい」と「~がいい」は1文字しか違いませんが、受ける印象はガラリと変わります。日頃から「~でいい」を使っているとしたら、思わぬところで出てしまわないように気をつけるべき言葉なのです。

 

落ち込んだ気持ちをスッと救う一言があります

 人生はうまくいくことばかりではありません。いえ、うまくいかないことの方がずっと多いかもしれないのです。

 しかし、いくら思いどおりにいかないとわかっていても、失敗や困難な状況にぶつかると気持ちは沈んでしまうでしょう。そんな時、そばで支えてくれる友達の存在が頼もしく感じられるものです。

 では、大切な友達が落ち込んでいる時に、どんな言葉をかけるでしょうか。「元気出して」とか「頑張れ!」といった励ましの言葉が、まず思い浮かぶかもしれませんね。しかし、頑張り抜いて駄目だった時や、精一杯やったのに結果がついてこないで落ち込んでいる相手には、この言葉は禁句です。

 なぜなら、ギリギリまで頑張っている人をさらに追いつめて、「まだまだ頑張りが足りない」と否定しているようなニュアンスを与えてしまうからです。

 落ち込んでいる友達には、まずその人の気持ちに寄り添い、悲しい時は一緒に悲しみ、悔しい時には一緒に悔しがってあげるのが一番ではないでしょうか。

 「そうなんだ、そりゃあ悔しいよ。僕だったらやけを起こしちゃうね」
 「そうだったの。つらかったね。聞いている私まで涙が出ちゃうわ」

 などといった言葉は、傷ついた心に沁みるでしょう。

 落ち込んでいる相手を見ると、何とかしてあげようと思い、つい助言をしたくなるものです。でも、気持ちが弱っている時には助言を受け止める元気もありません。だからこそ、ただひたすら気持ちを共有してあげましょう。

 また、本人はうまくいかなかったことを必要以上に気にしているものです。そこで、「そういうことってよくあるよ」「誰でも1回くらいは経験があると思う」のような言葉をかけるのもいいでしょう。失敗や挫折が自分だけでないことがわかれば、少しずつ気持ちが上向きになっていくからです。

 困難を乗り越えるたびに友情は深まり、互いの距離は近づくといいます。あまり難しいことは考えずに、ただ友達の気持ちを素直に受け止めるのが一番の励ましになるようです。

 

おごられ上手、おごり上手

 会社の先輩に同僚数人が誘われ、居酒屋で乾杯。すっかり盛り上がって、お酒もすすみ、さて会計という時になって先輩が、

 「今日は僕が誘ったんだから、おごりだよ」

 と伝票を持ちました。会計は決して安くないはずだし、先輩といっても給料がそんなに高いわけでもない。つい、

 「いいです、いいです。割り勘にしましょう」

 と固辞してしまいがちです。でも、これではせっかく「おごろう」としている先輩の好意をないがしろにしてしまいます。また、先輩としてのプライドを傷つけることになるかもしれないのです。また、

 「すみません。ごちそうになります」

 と頭を下げれば、先輩の顔は立ちます。でも、スマートな人は、

 「ごちそうさまでした! おいしかったです」
 「ほんとうですか? ありがとうございます!」

 というように、素直に喜びを伝える言葉を選びます。そうすれば、相手もおごりがいがあったとうれしくなるでしょう。さらに、いつもおごられるわけにはいかないという気遣いのできる人は、

 「今日は、ごちそうになります」

 と、「今日は」という言葉を付け加え、「今日は特別、次は割り勘にしましょう」と暗に伝えるようにするでしょう。そして、翌日には必ず、

 「昨日はありがとうございました」

 と、もう一度お礼を言うことを忘れません。このような人なら、先輩もまたごちそうしたいという気持ちになりますね。

 さて、立場が逆転して、あなたが後輩におごる立場になった時、どんなおごり方がスマートでしょうか。

 後輩に一部を払わせて自分が多めに支払うようにすれば、頻繁に後輩を誘うことができるかもしれません。しかし、このやり方では、せっかく出したお金に効果がありません。

 後輩にしてみれば、少し多めに出してくれても、結局、自分もいくらか払わなければならないのだから、おごってもらったというありがたみをいまひとつ感じられないでしょう。それに、後輩自身がそんなに頻繁に先輩や同僚と飲みに行きたいと思っているかどうかも疑問です。気持ちよく相手が「ごちそうさま」と言えるのは、やはり全部すっきりおごってもらった時ではないでしょうか。

 たとえ高級な店でなくても、全員分が予算内に収まる店を選んで飲みに行く方が効果はあります。そうすれば、後輩たちも心から「ごちそうさま」と言えるし、先輩としての顔も立ちます。

 「今日は俺のおごりだから、好きなものを選んで」

 と最初に恰好をつけたいものですが、これでは、おごられる方はできるだけ負担にならないように安いものを頼もうかと気を遣いがちです。冒頭に話した先輩のように、支払いの段になって「おごるよ」と言う方がスマートですし、意外性もあって効果的かもしれませんね。

 相手も自分も疲れてしまうことのない、楽しい飲み会をしたいものですね。

 

本郷陽二 (ほんごう・ようじ)
 
東京都生まれ。早稲田大学文学部卒業。光文社カッパ・ブックス編集部でベストセラーとなった『冠婚葬祭入門』(塩月弥栄子著)のシリーズなどを担当。その後、話し方や歴史関係の著作やプロデュースで活躍。
主な著書に『誰とでもうまくいく「人間関係」のルール』(日本文芸社)『人を動かす「ほめ言葉」』(中央公論新社)『話し方で損する人、得する人』(PHP研究所)『ひと言で心をつかむ話し方』(ぶんか社)などがある。


◇書籍紹介◇

一緒にいて楽しい人・疲れる人

本郷陽二 著
本体価格 1,200円   

自分では気づかずに相手をうんざりさせたりしていませんか? さまざまな場面を想定しながら、自分の言動を見直すテキストです。



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