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大規模な事業創造は「超」業界で発想せよ!

三宅孝之(ドリームインキュベータ執行役員),島崎崇(ドリームインキュベータ執行役員)

2015年05月29日 公開 2023年02月02日 更新

 

《『3000億円の事業を生み出す「ビジネスプロデュース」戦略』より》

 

ビジネスプロデュース力が企業の命運を握る

 

業界と業界の間にビジネスチャンスは転がっている

 日本企業が、なぜ数千億円規模の事業を生み出せないのか、その理由をいろいろと考えてきた。それをひと言で言えば、「つながれない」からだ。企業同士がつながれない、業界や国を超えてつながれない、政府や行政とつながれない……。

 大きくなる事業の種は。業界をまたぐところにある。既存の業界内だけではすでに成熟しているためにどうしてもある一定以上には大きくならない。

 かつて新規事業と言えば、成長している別業界への進出が大半であった。

 例えば、トヨタ自動車やパナソニックが成長著しい住宅業界に進出し、トヨタホームやパナホームで事業をなすといったパターンだ。成長している業界に進出すれば、その業界の成長に伴って進出企業も成長することができた。それは、さほど難しい新規事業ではなかった。

 イトーヨーカ堂がセブン・イレブンを、ダイエーがローソンをつくってコンビニ業界に進出する。ソニーがソニー損保で損保業界へ、ソニー生命で生命保険業界へといった他業界進出を行う。こうしたものであれば成功例はいくらでも挙げられる。

 しかし、こうして他業界に進出しても、その業界の成長が止まれば、進出した企業の成長も止まる。業界が成熟すれば、企業も成熟する。つまりは、業界成長依存型の新規事業と言える。

 だから、成長する業界がなくなったら新規事業が大きくならなくなった。成長していない業界に新たに進出してもパイの奪い合いになるだけで大きく成長するのは難しい。東芝や日立製作所など、進出できそうな業界にはもうほとんど進出してしまったような大企業もある。

 ひところ「事業の多角化」が盛んに言われたが、それも要は他業界への進出であった。そしてその後、「選択と集中」に変わり、業界上位に入れなかった進出企業は撤退を余儀なくされ淘汰された。

 こうした他業界への進出という発想で、いまだに新規事業を考えている企業は多い。だから新規事業が大きく成長しない。

 事業サイクルという観点からまとめると、ビジネスには「創業期」、「成長期」、「成熟期」がある。成長期には業界が「タコツボ化」しやすいが、この時期の「タコツボ化」は悪いことではない。業界が成長している時期には、むしろ「タコツボ」のほうが効率的だからだ。

 しかし、業界が成熟し、衰退に向かう時期には、業界の「タコツボ」から出て、もう一度広い視野で新たな事業を発想する必要がある。

 特に、インターネットなどによってつながりやすくなっている現代のビジネス環境では、業界と業界の間にこそビジネスチャンスが転がっている。

 大きくなる事業の種は、業界をまたぐところにあり、単独ではなく、他のプレイヤーとつなげることで新しい市場が生まれる。「業界をまたぎ、融合することで事業を創造する」という発想への転換が必要なのだ。

 こうした業界をまたいだ大きな絵を描いて、他のプレイヤーとつながりながら行う事業創造を我々は、「ビジネスプロデュース」と呼んでいる。

 そもそも「業界」というのは、後付けでつくられた枠に過ぎない。

 その業界をまたぎ、業界を超えて、新たな業界をつくるのがビジネスプロデュースであり、業界と業界を結び、他のプレイヤーとつながり、ときには政府への働きかけも行う人材が「ビジネスプロデューサー」である。

 業界をまたぐところにビジネスが生まれやすくなったのは、それができるようになったからでもある。

 業界と業界の間には、まだまだブルーオーシャンと呼ばれる競争空白地帯があり、ビジネスチャンスが転がっている。だが、そのことに多くの日本企業は気づいていないのではないだろうか。

 

「構想」とは~業界を超えて考えることの意味~

「業界をまたぎ、業界を超えて、新たなものをつくるのだ」と言うと、「すでに異業種でのコラボは十分やっているよ」とか、「だからオープンイノベーションが必要だ」といった声が聞こえてきそうである。

 しかしながら本書で、業界を超えた取り組みを……と言うときは、その超えた取り組み自体にフォーカスを当てているのではない。業界を超えることはあくまでも手段であって、超えることで他の業界の人や付加価値を相手側の目線で理解し、自社の付加価値と融合させたり、自社の取り組みの形を変えたりしながら、新しい付加価値を生み出していくことを指している。

 そのためには、少しイメージが湧きにくいかもしれないが、自分の業界も相手の業界も超えた「神の視座」から見渡し、両者が何をすべきか、そして両者が頑張っても足りないものは何か、ということから考える必要が出てくる。

 本書では、そういう神の視座から見たあるべき姿を「構想」と呼んでいる。構想を打ち立てて、その構想の中で改めて各業界やその中の企業がどう振舞うべきか、どう変化すべきかを定義していくことは、今のような時代において、新たな付加価値を生み、新たなビジネスを創造していくために最も筋のよいやり方であると確信している。

 例えば、スマ-トグリッドは、エネルギー業界とIT業界をつなぐことで生まれた。さらに、建設業界や住宅業界、自動車業界をつなぐことでスマ-トコミュニテイが生まれている。こうした発想で事業創造を考えていくと、まだまだいろいろなコンセプトを生み出すことができそうだ。

 

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すべては1人の勝手な「妄想」から

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