ネット依存症になりやすい人の3つの特徴
2016年01月18日 公開 2024年12月16日 更新
PHP文庫『やめたくてもやめられない人』より
ネットをやめたくてもやめられない……
インターネットは、現代社会において避けて通れないツールです。インターネットを使っていない人間は、いまや「遅れている」とみなされます。数時間メールの送受信ができなかっただけで、家族や友人から責められ、ネットにつながっていなかった理由を説明しなければならない羽目になることさえあります。
インターネットを利用するようになると、誰もが口をそろえて言います。
「一度使い始めたら、これなしではやっていけなくなる」と。さらに、新しい使い方を発見し、ますます「これなしではやっていけなくなる」ということになります。しかも、インターネットは我々に万能感、そして一瞬のうちにどこにでも行ける感覚をもたらしてくれます。もちろん、これは錯覚にすぎないのですが、一度でもこういう感覚を味わうと、忘れられなくなってしまうのです。
たとえば、映画ファンであれば、同じような嗜好を持つ映画ファンとネット上で交流することができます。また、崇拝する監督や俳優のツイッターやブログにアクセスすることだってできます。
もっとも、こうしたバーチャルな空間にのめり込みすぎると、外の世界に開かれた窓がネット空間だけというような事態に陥るかもしれません。たしかにインターネットは新しい体験や友人を我々に与えてくれますが、その反面、現実空間での友人から遠ざかってしまうようなことにもなりかねません。さらに病膏肓に入ると、現実から逃避して、逃げ場をネット空間に求めるようになります。中には、現実世界をバーチャルリアリティーに置き換えてしまい、それを唯一の心のよりどころにしているような人もいます。理由は簡単です。その方が心理的に耐えやすく、居心地がいいからです。
このような影響を最も強く受けているのが思春期の若者です。精神科医として診察室に座っていると、息子や娘がパソコンの画面に釘づけになっており、オンラインゲームやチャットなどに熱中していて、心配だという相談をしばしば受けます。相談内容はほぼ同じです。家族とは話もしない。勉強はほったらかしで、友人と遊びに行く様子もない。だいたい、自分の部屋に閉じこもったままで、家族と旅行に行くのも嫌がるといった調子です。
成人してからも、ネット漬けの生活からなかなか抜け出せない場合もあるようです。たとえば、私の外来に通院している患者さんは、家族以外とは話をせず、外部の人間とのコミュニケーション手段はツイッターだけなのですが、「ツイッターで嘆いていたら、ぼろくそにけなされて落ち込んでしまった」と訴えました。この患者さんは、長年ひきこもりの生活を送っています。昼夜逆転していて、夜になると起き出して、お菓子を食べながらパソコンの画面に向かうそうです。ほとんど外出しないので、インターネットが、社会に対して開かれた唯一の窓になっているのです。
こういうケースでは、インターネットが依存対象になっていると認識すべきでしょう。実際、インターネットに没頭するあまり、学業や仕事に支障をきたす「ネット依存症」が最近は増えており、専門外来を開設している病院もあるほどです。
「ネット依存症」が増えた一因として、携帯電話、とりわけスマホの登場を挙げることができます。いまや、携帯を電話のためだけに使っている方はむしろまれでしょう。24時間、肌身離さず持ち歩き、ネットにつながっていることによって安心している方が多いのではないでしょうか。
ただ、これは両刃の剣です。ネットとのつながりが切れた途端、強い不安にさいなまれることになるのですから。携帯を忘れた、あるいは電池が切れたときに感じた不安がいかに激しかったか、誰でも覚えがあるでしょう。ネットにつながっていないと不安になる理由は、いろいろあるようです。家族や友人など、愛する人とずっとつながっていたいとか、情報を常に得ていたいというふうにさまざまでしょうが、ネットから遮断されると不安になるということ自体、ネットが依存対象になっていることの裏返しなのです。
それでは、どんな人がネット依存症になりやすいのでしょうか? 学校や職場の人間関係にあまり興味を示さなくなり、家族との会話も減って、常にネットにつながっていたいという強い衝動に抗しきれなくなるのは、若い男性が多いようです。しばしば、次の3つの特徴が認められます。