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箱根駅伝連覇を成し遂げた奇跡の成長メソッド~原晋・青山学院大学駅伝チーム監督

『衆知』編集部

2016年09月02日 公開 2024年12月16日 更新

箱根駅伝連覇を成し遂げた奇跡の成長メソッド~原晋・青山学院大学駅伝チーム監督

 

半歩先の目標達成が10年先のビジョンを実現する

2009年に33年ぶりの箱根駅伝出場を果たして以降、大会の常連校となり、2015、16年に連覇を成し遂げた青山学院大学駅伝チーム。その快進撃は、原晋監督の目標達成メソッドによってもたらされた。「半歩先の目標達成で成功体験を積み重ねる」「互いに改善点をとことん議論し合う」など、営業マン時代に培った方法論によって、理想のチームに育て上げていったという。メンバーを目標に向かわせ、確かな成果を上げるために、指導者がなすべきこととは? ビジョン実現の秘訣をうかがった。

原 晋(はら・すすむ)
青山学院大学陸上競技部監督
1967年広島県生まれ。世羅高校で主将として全国高校駅伝準優勝。中京大で日本インカレ5000mで3位入賞。89年に中国電力陸上競技部1期生で入部、5年で選手生活を終え、サラリーマンに。実績を上げて「伝説の営業マン」と呼ばれる。チーム育成10年計画プランを買われて、2004年より現職。09年に33年ぶりで箱根駅伝出場、15年の初優勝に続き、16年に連覇を果たした。

取材・構成:坂田博史
写真撮影:永井 浩

 

数字の目標だけでなく意義で意欲を高める

監督に就任した1年目、2004年の箱根駅伝の予選会は、16位に終わりました。

「何かを変えなければ勝てない」と考えた私は、2年目の2005年、自分たちの目標と、その実現のために何が大切なのかを、もう一度選手たちに明確に伝えました。

そして、寮の玄関ロビーの壁に、次のような三カ条を貼り出したのです。

一、感動を人からもらうのではなく、感動を与えることのできる人間になろう

一、今日のことは今日やろう。明日はまた明日やるべきことがある

一、人間の能力に大きな差はない。あるとすれば、それは熱意の差だ

同じようなことを何度も口で言ってはいましたが、それに加えて毎日のように文字を目で見ることで、選手たちの意識が変わるのを期待したのです。

私は営業マン時代にいろいろな会社を訪問する機会があり、それらの会社が掲げる社訓をたくさん見てきました。学んだのは、「長いのはダメ」ということです。長い社訓は、理解するのにも覚えるのにも時間がかかります。それでは結局、浸透しない。そう思い、様々なフレーズを考える際には、短くわかりやすくすることを心がけています。

また、「チームのテーマ」も設けました。初期は「一体感」を掲げましたが、それが育まれてくると、「戦う集団」に変えました。

そして、選手それぞれに目標をしっかり考えさせました。目標を掲げる時には、具体的な数字を入れることが大切だと言われます。まったくその通りで、選手には試合の前には必ず目標タイムを書かせます。

しかし、それだけでは継続して目標を達成することはできません。営業でも「売上目標1億円」と掲げるだけでは、仮にその時はその目標を達成できたとしても、目標が2億円、3億円と上がったら、いつまでも続かないでしょう。「達成すると目標が次々と上がって大変だから適当なところでやめておこう」とモチベーションが下がってしまうのではないでしょうか。

そして、目標をムリにでも達成しようとすれば、数合わせが行なわれ、それが不正として発覚します。そんな事例は、枚挙に暇がありません。

数字の目標も大切なのですが、それと同時に、やはり哲学的な目標というか、目標の意義が不可欠なのだと思います。

ビジネスにおいても数字の目標は当然ありますが、お客様の生活が少しでもよくなるために、お客様に笑顔になってもらうためにといった目標が、社訓や企業理念、ビジョンとして掲げられているはずです。

同様に、スポーツでも、単に目標タイムを目指すだけでは不十分なのです。そのタイムで走ることができるようになるとどうなるのか。箱根駅伝で走ることができる、優勝することができる、そうなればどれだけ嬉しいか。まわりの人にどれだけ喜んでもらえるのか。そうしたことを具体的にイメージさせることで、目標タイムへの考え方も、練習への取り組み方も変わるのです。

一番になることが目標ではありますが、単なる順番争いだけではなく、青学が優勝することで大学駅伝の勢力図を変えることができるし、体育会の体質を変えることも、大学スポーツを変えることも、社会を変えることすらできると、私は本気で思っています。選手たちにもそう言っています。

※本記事はマネジメント誌『衆知』2016年9-10月号 特集「ビジョンを実現する力」より、その一部を抜粋して掲載したものです。

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