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人生も仕事も充実する「大人の趣味」の見つけ方

名越康文(精神科医)

2017年02月21日 公開 2023年09月12日 更新

 

苦痛を超えてこそ大きな喜びが得られる

 ただし、出合ってすぐに熱中できるケースはほぼ皆無であることも心得ておきましょう。予備知識もスキルもゼロの状態で臨むのですから、最初は楽しみ方がわからないことのほうが多いのです。

 逆に言えば、すぐに楽しめてしまうくらい簡単な趣味なら、飽きがくるのも早いに違いありません。人は、「苦痛を超えて手に入れる」ことにこそ、強い快感を覚えるものだからです。複雑なパズル、難解な芸術、激しいスポーツ──どんなジャンルであれ、苦しくストレスフルな段階を通り抜けることで、喜びが得られるのです。

 ですから、すぐ辞めるのは禁物。まずは3カ月、黙ってトライしてみましょう。そう私が言うまでもなく、「ご縁」のある趣味というのは「ツラくてもなぜか続けてしまう」もの。その先で、あるとき突然楽しさがわかり、あとは夢中で突き進めます。

 なお、「趣味に夢中になると仕事がおろそかになるのでは」という心配は無用です。仕事一色だった日々にメリハリがつくことで心が切り替わり、より業務への集中力が増します。さらに、「夢中になる感覚」「回復した直観力」は仕事にも活き、新しいアイデアも生まれてくるでしょう。

 そして何より、「苦痛を超えて楽しむ」経験をしたことで、じっくり腰を据えて物事にあたる姿勢が身につきます。早々に投げ出さない粘り強さ、目先の利益ではなく長期的成果を見通す視点。趣味のある生活は、仕事人としての成長をも、もたらしてくれるものなのです。

《『THE21』2017年2月号より》
《取材・構成 林 加愛  写真撮影:まるやゆういち》

著者紹介

名越康文(なこし・やすふみ)

精神科医

1960年、奈良県生まれ。相愛大学、高野山大学客員教授。専門は思春期精神医学。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現・大阪府立精神医療センター)精神科主任を経て、99年退職。引き続き臨床に携わる一方、テレビ・雑誌・ラジオなどのメディアで活動。近著『僕たちの居場所論』(角川新書)など著書多数。

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