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人生も仕事も充実する「大人の趣味」の見つけ方

名越康文(精神科医)

2017年02月21日 公開 2023年09月12日 更新

 

「好きだったこと」を思い出せますか?

 定年前後、そうした危機に陥っている「夫」は数知れず。

 そう、仕事以外に楽しみを見つけるのが、男性は女性よりも不得手なのです。もちろん個人差はありますが、基本的には、どんな環境にも対応して自分らしい生き方を見つける力が女性には備わっているものです。

 とはいえ、男性ならではの強みもあります。それは前述の「没入感」。好きなことに向き合うときの集中力は、全般に男性のほうが上。女性の場合、さほど強い興味を持たないまま何かを始めてはすぐやめる、といった例が多々見られますが、男性はいったん好きになると高揚感のままに突っ走れます。そういう意味では、「好きなこと」を見つけてしまえばこちらのもの、と言えるでしょう。

 問題は、それを見失っている、というより「覚えていない」人が多いこと。ほぼすべての人が、少年期・青年期までにそうした没入体験をしているのですが、社会人になってからそれを忘れてしまうのです。

 ちなみに、私は子供の頃から歌が大好きで、将来の夢は歌手になることでした。2番目の夢は漫画家で、暇さえあれば漫画を描いていました。そして、3番目になりたかったのが医者。今の私は、「第3志望」を叶えたことになります。

 第2志望の漫画家は、漫画の原作という仕事をしたことで間接的に叶えられました。

 では1番の夢だった歌手はというと──それが、今の私の趣味です。年に1度はライブを行ない、月2回はボイストレーニングやレッスンに通っています。

 つまり、自分に合った趣味を見つけるには、少年期に好きだったことをヒントにするのが一番の近道。小中高校時代、夢中になったことはなんだったでしょうか。写真でも、野球のカード集めでも、ガンダムのマニアックなキャラクターでもなんでもかまいません。「○○についてはアイツが一番」と一目置かれるようなことが、何かしらあったのではないでしょうか。

 これは、いわゆる競争ではありません。学業成績やスポーツの試合のように、外から与えられた基準の中で一番を競う相対評価ではなく、自ら選んだ対象にどれだけ没頭したか、というきわめてパーソナルなもの。それは、企業人としての立場が競争原理のもとにあるのに対して、趣味の世界が個人の喜びに依拠していることと重なります。仕事が「勝負」なら、趣味は「愛」なのです。

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趣味がない人にまずやってほしいこと

著者紹介

名越康文(なこし・やすふみ)

精神科医

1960年、奈良県生まれ。相愛大学、高野山大学客員教授。専門は思春期精神医学。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現・大阪府立精神医療センター)精神科主任を経て、99年退職。引き続き臨床に携わる一方、テレビ・雑誌・ラジオなどのメディアで活動。近著『僕たちの居場所論』(角川新書)など著書多数。

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