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いまも大空を舞う第二次世界大戦の戦闘機、そして零戦は……

三野正洋(元日本大学非常勤講師)

2017年05月31日 公開 2023年02月01日 更新

世界に広がるウォーバーズ熱

カラー写真・決定版 第二次世界大戦「戦闘機」列伝 ここ10年ほど欧米でいわゆるウォーバーズ、つまり広義の軍用機、とくに第二次世界大戦機についての関心が急激に高まっている。その理由はなんともはっきりしないのだが、そのペース、規模に驚かされる。このことは次に示す状況により明確となる。

〇アメリカ
大戦で使われた航空機が次々と復元され、大空を駆けている。最大のものはボーイングB‐29大型爆撃機DOCである。

〇イギリス
年2~3機の割合で増加。加えて新たにスーパーマリン・スピットファイア戦闘機の初期型が初飛行。

〇ドイツ
旧ドイツ空軍のロケット戦闘機であるメッサーシュミットMe163コメートが再生され、滑空飛行に成功。

〇フランス
フランス空軍のモラン・ソルニエMS406が、レストアを終えて登場。これもフライアブル。

この他、同種のニュースが、オーストラリア、ニュージーランド、そして南アフリカからも届いている。

そしてこれまで鳴りを潜めていた我が国も、満を持して動き始めている。日本人の所有する三菱零式艦上戦闘機を、日本国内で運用しようとする計画が始まっている。同機はすでに九州ではフライトしている。

さらに川崎重工業が、かつて先輩たちが心血を注いで設計、製作した川崎三式戦闘機飛燕のレストアに着手し、膨大な労力を費やして完成にこぎ着けた。

このような動きはまだまだ続く。兵庫県加西市の有志が、地方自治体の後押しを得て、日本海軍最強の川西N1K2紫電改の製作に乗り出している。

そのうえ河口湖にある博物館では、これまで我が国には1機も存在しなかった中島一式戦闘機隼の復元作業が進む。

このように欧米の先進諸国、そして日本においてもウォーバーズ熱は上昇するばかりと言ってよい。

先にも記したが、その理由と分析は歴史家、評論家に任せて、我々は七十数年前にそれぞれの国の技術の集大成とも呼ぶべき〝金属製の猛禽類〟の飛翔を思う存分楽しめばよい。

そのような人たちの想いを写真で応援し、また楽しむための情報をできるだけお伝えしようと、『カラー写真決定版 第二次世界大戦「戦闘機」列伝』という本を企画した。あくまでも自画自賛になってしまいそうだが、本書は多分にその目的を達成しているはずである。

この本では、まず第二次世界大戦前夜の情勢と当時の戦闘機の歩みについて語る。次にアメリカ、イギリス、ソ連、ドイツ、日本、フランス、イタリアといった主要国の、大戦中の戦闘機の特色について、約90点のカラー写真とともに紹介していく。

写真はいずれも、現存する機体、あるいはレストアされた機体を撮影したものであり、読者は「第二次大戦中の戦闘機が、これほどの数残されていたのか」と驚かれるかもしれない。そのような方々のために、巻末にはウォーバーズを実際に見る方法、乗り方、空対空の撮影、所有の方法にも触れているので、存分に楽しんでいただけるのではないだろうか。

また一般の書籍では、はじめに、あとがきの項に写真を添付することはない。しかしここではあえて一枚を掲げておく。ニュージーランドの蒼空を、密集編隊で飛ぶ猛禽類である。手元にあればルーペを用い、機種を調べていただきたい。これにより読者の大戦機に対する熱が、急上昇すると思われるからである。

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