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「とにかく行動、ダメなら修正」ハウステンボス“超速”黒字化のワケ

澤田秀雄(ハウステンボス社長/エイチ・アイ・エス会長)

2011年10月27日 公開 2022年09月29日 更新

――売上2割増については、どのような取り組みをされましたか。

【澤田】去年(2009年)の4月に経営を引き継ぎましたから、まず最初の集客期は5月のゴールデンウィークになります。とにかく時間がないので、いろいろなことをやりました。

先ほどお話ししたフリーゾーン開設のほか、入場料の値下げ、ミュージカルや体験型宝探しなどのイベント、佐世保グルメストリートなどの特色あるフードゾーン、マーチングバンドフェスタやパレードなどの企画によって、入場者数が前年比2割増になりました。

あと、季節ごとに来てくださるお客様の層が異なります。そこで、季節に合わせたイベントを行うことで顧客の明確化を図りました。

たとえば、夏休みは子ども連れの家族や若者が多いので、人気漫画「ONE PIECE」を主題にした「ONE PIECEメモリアルログ in ハウステンボス」を開催したり、人気アイドルグループとのコラボ・イベント「AKB48 DAY」を開いたり、フジテレビさんと組んで"明るいお化け屋敷ゾーン"「スリラー・ファンタジー・ミュージアム」をつくったりしました。

一方、秋には人が少なくなるので、熟年マーケットをねらって「ガーデニングワールドカップ2010ナガサキ」を開きました。ねらいどおりシニア層がたくさん来てくださいました。

冬には花も咲かず、さらにお客様が減るということだったので、東洋一を誇る700万球のイルミネーションで「光の王国」をつくったところ、大盛況になり、クリスマス期間の入場者数は前年比6割増になりました。

秋冬期間の10月から3月まででみますと、前年同期比で入場者数は29パーセント、売上は24パーセント、それぞれ増加し、営業利益も10億円以上の赤字から、2億円以上の黒字へと大幅に良化させることができました。

――ものすごい良化ですね。でも、イベントを増やすと経費も増えませんか。

【澤田】その点は、先ほど言ったようにさまざまな工夫の積み重ねで抑えるように努力しました。それと、他社さんとの"共同事業"というスキームもつくりました。ディズニーさんは1つのアトラクションにものすごいお金をかけられる。うちもそうできればいいのですが、残念ながらお金がない。

そこでフジテレビさんとの共同事業で「スリラー・ファンタジー・ミュージアム」を開設したほか、シャープさんとは「5D MIRACLE TOUR」というアトラクションをつくりあげました。共同事業ですから、オープン後もお互いが努力してさらに内容がよくなっていくという効果も生まれました。

ハウステンボス内へのベンチャー企業の誘致というのも新しい試みです。フリーゾーンで展開している「イングリッシュスクウェア」には、われわれも少し出資していますが、基本はアイディアを出してくださったジャイロスコープという東京の会社が運営しています。経費をかけずにお客を増やす仕組みの1つです。

 

衆知を結集した上で「最後はカン」

――さまざまなことを矢継ぎ早に、猛スピードで取り組んでこられたのですね。澤田社長はこれまで多くの会社を経営されてきましたが、経営では「速さ」をいつも重視されますか。

【澤田】もちろんです。遅いより速い方がいい。だって速くやれば、それがよかったのか、間違っていたのかが早く分かるじゃないですか。一歩、速く取り掛かる。間違っていたら一歩、速く立ち直る。

経営は速度です。速く情報収集して、速く修正したところは生き残りますが、情報収集も遅く、修正にも時間がかかっていたら、競争に負けてしまいます。今は変化の激しいときですから、変化に対応するには速さが鉄則です。

たとえば、日本のモノづくりの技術は世界最高です。これは今も変わりませんが、昔は電気製品をつくるには技術の集積に時間がかかりましたから、日本は世界をリードできていたのです。でも今や半導体の能力が上がって、昔ほど技術の集積が問題ではなくなった。だから世界で勝つにはスピードが昔よりずっと大事になってきているんです。

――スピードが大事というのは、どのビジネスパーソンも分かってはいますが、実際にはできる人とできない人がいます。速くやるコツは何でしょうか。

【澤田】行動力です。とにかく行動する。ダメだったらすぐに戻ればいいんです。逆に遅かったら、戻るにも時間がかかる。そして戻るに戻れなくなる。

人間ですから、誰でも失敗をするし問題もあります。慎重にやったほうが失敗の確率は減るかもしれませんが、多少失敗しても速く一歩を踏み出していれば、速く引き返せるし、うまくいけばさらに前に速く進めます。だから、スピード感というのは行動力だと思うんです。

それと決断力も大事です。決断は衆知を結集した上で、最後はカンで決める。人間、100パーセント正解できるわけじゃありませんが、その確率は高めたい。そのためには衆知を結集することは欠かせません。ふだんから専門家に聞いたり、現場のスタッフに聞いたりという努力をします。

最終的に決裁するときは自分のカンです。カンが一番速いですから。カンというのは裏づけのある経験知です。経験しないとカンは働かないし、勉強していなくてもカンは働きません。でも経験と勉強ができていれば、緻密な計算をしてから決めるより、カンで決めたほうが当たるように思いますよ。

ただそれでもやっぱり失敗します。私もしょっちゅう失敗していますから。この1年間にもだいぶ間違いをしたと思いますし、今この夏だって私の作戦はちょっと間違えてます(笑)。

それでもいいんです、来年の資料にしますから。今年間違えたことは、来年は絶対にしません。とりあえずやってみてダメなら修正する。それでいいんです。

 

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