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日本人が知っておくべき『チベット 自由への闘い』

2018年01月29日 公開

櫻井よしこ(ジャーナリスト)

チベットへの中国の暴虐と人権弾圧の実態を日本人は知っておかねばならない

チベット 自由への闘い

国際政治は常に国益と国益のぶつかり合いのなかで展開する。力の強い国が席巻し、弱い国や弱い民族が片隅に追いやられる厳しい現実がある。

そうしたなかで、いま私たちの国、日本は、2700年近くの長い歴史を通して育くんできた穏やかな文明の力を発揮すべき局面にある。一人ひとりの人間、個々の民族を大切にし、それぞれが自らの価値観、文化、宗教、暮らし方、生き方を全うできる社会こそ、私たちの目指す国際社会である。

アメリカが中・長期的に自国第一主義で内向きになり、中国が野望に満ちた膨張主義に走る。アメリカが国際社会への関与に背を向けて生まれる国際政治の空白に、間髪を入れずに中国が侵攻する。そこに共産党一党独裁の国が持ち込む価値観は、民主主義を否定し、法治を蔑ろにし、人間の自由を阻害するものであり、決して誰をも幸福にしない。

日本の役割は従って、アメリカと共に、中国的価値観で世界が支配されなくて済むように、新たなより良い価値観を広めていくことだ。従来の民主主義や法治、人間の自由の擁護に、日本的誠実と相互尊重の要素を交えて、実践してみせることだ。より良い世界の構築に、日本こそが大いに力を発揮すべき時が、いまなのである。

本書のテーマはチベットである。チベット人の心の指導者であるダライ・ラマ法王14世、チベット亡命政権の首席大臣ロブサン・センゲ氏らとの出会いは、私にあらためて強固な信念を与えてくれた。チベット人がチベット人としての生き方を全うできる国際社会を創ることが、私たちの望む良き国際社会のあり方に通じるのであると。

チベット人がチベット人らしく、モンゴル人がモンゴル人らしく、またウイグル人がウイグル人らしく、さらにいえば台湾人が台湾人らしく生きることのできる国際社会は、日本人もまた、日本人らしく生きることのできる社会であるということだ。

本書の主役はチベットとチベット人であるが、チベットの運命を脅かす中華人民共和国も、もう一方の重要な主役である。

チベット人がチベット人らしく生きていける国際社会を創ろうと問題提起することは、中国の様々な脅威に全身を晒すことでもある。それでも私たちは、人間が人間らしく、民族が民族らしく、国が国らしく生き、存在することができるように勇気を持って発言しなければならない。チベット人も、その他の弾圧されている民族も、さらには日本人も、勇気を奮い起こし、信念を持って、自分らしい道を歩みつづけなければならない。それは最終的に中国の人びとと中国のためにもなると信じてやまない。

チベットと日本には、国の本質や中国との関係のあり方など、多くの共通点がある。チベットの人びとに深い友情を抱きながら重ねてきた交流の一端を、この書を通して読者の皆さまと共有できれば嬉しく思う。

※櫻井よしこ著『チベット 自由への闘い』(PHP新書)まえがきより。

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