若くして頭角を現す人の「3つの条件」
2012年01月26日 公開 2022年10月06日 更新
スティーブ・ジョブズ、マーク・ザッカーバーグ、ラリー・ペイジのような時代を切り開く「突き抜ける人材」の凄さとは。
彼らのモノの考え方、行動力を徹底分析し、危機の時代に「頭角を現す」ビジネスパーソンの凄さを語り尽くします。
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※本稿は、波頭亮,茂木健一郎著『突き抜ける人材』(PHPビジネス新書)の一部抜粋・編集したものです。
若い人たちが社会を動かす影響力を発揮するには
アメリカの経営学者であるジョン・コッターの調査によると、若くして頭角を現した人には、2つの共通項があるそうです。1つは、アジェンダを持っていること、もう1つは、ネットワークを持っていることです。
アジェンダとは、日本ではよくミーティングで「その場での主要テーマ」といった意味で使われますが、ジョン・コッターのいうアジェンダは、「その人がつねに抱くこだわり」、つまり「執着するテーマ」のことです。
「自分は誰よりもレベルの高い仕事をする」「自分は受けた仕事はどんなことをしても成功させる」「自分は誰よりも仕事をスマートにこなす」といった、その人なりの極めて強い美意識や価値観を示す言葉として使っています。
コッターが指摘しているもう1つの共通事項のネットワークとは、社内や取引先、あるいはまったく無関係な外部にも、何かやろうとしたときにお願いできる人がいることです。
「この仕事を一緒にやりましょう」といったとき、「ぜひ、やろう」といってくれる人が、取引先あるいは部下や上司にどれだけいるか。そういう人たちがいれば、いろいろなノウハウを得られるし、コラボレーションもできるというわけです。
実際のところ大きな事を成す、あるいは社会的に意味のある成果を出すためには、この2つは確実に必要でしょう。現実社会の中で生きていくにあたり、それが社会の中心的な分野であろうが、周辺の分野であろうが、強いこだわりと周囲を巻き込むことは何事においても不可欠です。
また、彼は別に、大きな業績を残している人材の多くは若くして大きな実績を出していることも、共通項の1つとして挙げています。
30歳ぐらいで周囲が驚くほどの実績を上げた結果、どんどんチャンスが与えられる。そのチャンスをものにして、倍々ゲームで成功を積み上げていくことができるので、40歳頃には大きく頭角を現せるというわけです。
厳密にいえば、最初の1回は運もあるでしょうが、あとはアジェンダとネットワークという、2つの個人的資質により頭角を現していくのです。
もう1つ、コッターが1990年代に新しい時代のマネジメントの核心を喝破した分析に、属人的なリーダーシップこそが企業を変化へ対応させ、企業の革新を果たして新しい時代の発展を実現するというものがあります。
コッターが登場するまでのビジネス社会では、属人的なリーダーに依存した経営よりも、ふつうに優秀な人たちが共有化されたルールや制度とマネジメントテクニックで会社を運営していくのが、よいやり方だと思われていました。
つまり、リーダーシップに依存するのではなく、マネジメントによって企業経営を行うべしというのが常識だったのです。
ここでいうマネジメントとは、ルールや制度に基づいて組織を動かすことで、特別な人材でなくても、誰がやっても同じように成果を出せるというメリットがある経営の方法論です。
ただし人を動かすにあたり、ルールや制度といった外から強制された外発的な動機づけだけでは、限界があります。そもそもルールや制度は、想定された状況の中でつくられた1つの仕組みであり、定型的システムにすぎません。
とくに1990年代以降、競争が激化し、時代の変化がドラスティックになってくると、定型的なルールや制度だけでは、変化に対応した形でうまく組織を回すことはできなくなってきたのです。
ルールや制度は誰かがつくった単純な運用方法ですから、それこそ人工知能でも管理が可能です。「これはこういうルールだから、こうしなさい」というだけですむなら、監視と指示だけですみます。
変化の激しい時代はそれでは不十分で、啓発と動機づけによって、「この人についていこう」と思わせるリーダーシップがなければうまくいかないという考えを打ち出したのが、ジョン・コッターなのです。
こうしたリーダーシップについては、過去100年ぐらい研究がなされてきました。いまリーダーシップというと、心理学の大テーマの1つですが、もともとは帝国主義時代に、「いかにすれば我が軍が勝てるか」を知ろうとしたのが発端でした。
軍隊の中には、「なぜかいつも勝つ」という常勝軍がいます。同じ敵地に行っても、あの隊長が率いる部隊だけは毎回生き残って帰ってくるといった具合で、その理由を知ろうと研究が始まったのです。
最初のうちは、「頭のいい人」「勇気のある人」「体の大きい人」「声の大きい人」「お追従のうまい人」「両親が揃っている人」など、何百項目にもわたる資質を取り上げ、徹底的に共通項を探しました。しかし結局、普遍的な共通項は何も見つからなかった。これが最初の40年の研究成果です。
やがて固有の資質ではなく、コミュニケーションの取り方の差が重要ではないかと考えられるようになりました。
そこから言葉のやりとりを調べ、褒め上手がいいのか、桐喝する人がいいのか、あるいは率先垂範によって背中で引っ張る人がいいのか、言動や言葉遣いに秘訣があるのかなどを探っていきました。この研究にも30年ぐらいかけられましたが、やはり万能の答えは出なかった。
最終的に、「シンプルな方程式はなく、相性の問題や状況に対する適正など、要因はさまざまある」という、あまり答えともいえないような結論に至ったわけです。
強いてそれまでの研究によってわかった共通項を挙げるなら、経験から学ぶことのできる資質を持っているということです。経験から学び一皮剥ける、経験を経るたびに成長する人が、人を引っ張っていくリーダーの資質があるというわけです。
経験から学ぶとは、つねに現状の自分に対して謙虚であることでもあります。だから状況が変われば、現状の自分に固執するのではなく、新しい状況に応じて新しい考え方ややり方を柔軟に取り入れていく。あるいは自分の経験を下敷きに、どんどん変容する。これが、これからの時代を切り開ける人の資質だと思います。
つまり基本として、アジェンダを持つことと、ネットワークを持ち、それを活用すること、さらに外部との情報のやりとりを通じて自分をどんどん変えていけること。これら3つが、組織を引っ張り、大きな事を成す人の条件であり、そういう人を目指すことが大事だといえるのではないでしょうか。