佐々木俊尚 ヴァーチャルの進化が企業にもたらす変革とは

「VR」は我々の仕事や生活にどんな影響を与えうるのか。テクノロジーについて豊富な知見を持つ作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏にうかがった。
2012年01月30日 公開
《『客家大富豪の教え』より》
客家とは、「東洋のユダヤ人」と呼ばれ、華僑・中国人社会に多大な勢力を持つ集団である。全華僑のうち、客家が占める割合は一割にも満たないが、華僑経済の30パーセント以上を握っており、有名な大富豪を多数輩出している。本書は、そのような、世界経済を裏で動かすといわれる人物を輩出している客家に伝わる、「幸福になるための18の金言」を、客家の老人の導きによって成長してゆく一人の青年実業家の物語に託して伝えるものである。ストーリー仕立てであるだけに、わかりやすく、読みやすく、しかも、説教くさくない。若い人にも気楽に読んでいただける、成功の知恵が詰まった一冊である。(出版部)
商いに成功するものには、必ず愛嬌がある。
嫉妬は成功の敵。
勝ち馬に乗れ運もお金もさびしがり屋なのである。
一人ぼっちは嫌いだから、みんなのいるところに集まるのだ。
成功する者の愛橋とは
香港ロンドン銀行(HLBC)は世界最大級の銀行で、グローバルな支店網を持つ。その本店は、中環の高層ビル街の中でもひときわ目を引く、独特な近代的デザインの巨大なビルである。しかし、このビルの建設においても、シンガポールの地下鉄同様に風水が重視されており、風水師のチェックによって(そのままだと金運が悪いということで)、途中で設計変更された箇所がある。
ビルの入り口は港側と山側に2カ所設置されている。港側(セントラル通り側で、皇后像広場があるほう)の入り口に立つと、巨大なライオン2頭がこちらを向いている。この2頭のライオンが港側にあるのは、聞くところによれば、この入り口に太陽の光が入る時間帯に生じる凶相を防ぐためらしい。
私がそこに立っていると、すぐにウォン氏がやってきて、私の顔を見るなり話しかけた。
「客人に会う前に、『第13の金言』を教えよう。『商いに成功する者には必ず愛嬌(あいきょう)がある』というものだよ。ところで、陳夫妻からは、いろいろと学んだかね?」
そうか、例のプライベート・レストランは、ウォン氏の配慮だったのか? 多分、おめがねにかなった、優秀な事業家の一人なのだろう。
「陳夫妻の、いいようのない人間的魅力には、大いに学ぶところがあったのではないかな? 機会があれば、また勉強に行ってもらいたい。それと、王さんの占いはどうだったかな?」
これには、私も驚いた。あの白髪の老人も、ウォン氏が準備した人物だったのか?
「王さんと私は、ずいぶん長い付き合いで、もう30年くらいになる。彼の超能力が本当はどれだけのものか、私にもわからない。しかし、王氏がその超能力の話をすることによって、彼が事業に成功した理由が超能力にあることになり、自分の周辺からの嫉妬を和らげる効果があるのは事実だ。他人、特に自分の周りの人間からの嫉妬は本当に怖い。私も満州で留置場に入れられたとき、自分の仲間だと思っていた人間たちにまったくでたらめな密告をされて、その怖さを思い知った。彼らが私の事業の成功をねたんでいたからだろう。
それにもう1つ、王氏は事業家としてすでに成功している。だから、私は成功している事業家の王氏、すなわち勝ち馬に、単純に乗っかっているだけなのだよ。王氏が事業に成功した理由が超能力であったとしても、それも本人の力であって、勝ち馬には違いない。
つまり、『第13の金言』 のもう1つの側面は、『嫉妬は成功の敵。勝ち馬に乗れ。運もお金もさびしがり屋! 一人ぼっちは嫌いだから、みんなのいるところに集まる』というものだ。
陳夫妻も、友人が周辺に集まることで運が開けたのだ」
受付で訪問の旨を告げると、2名の受付嬢がわれわれを前後に挟むようにして、大きなテーブルのある会議室へ案内してくれた。すると、そこには、HLBCの役員たちとともに、プライベート・レストランで会った王氏がいる!
ウォン氏の姿を見ると、5人はどの人間は立ち上がり、直立不動といってもいいような姿勢をとった。この客家の老人は、世界を代表する銀行にも大きな影響力を持っているらしい!
よく見ると、その5人の幹部の中に見覚えのある顔がいるではないか! 英国系銀行時代の同僚ヘンリー・チョウである。
お互いに礼をした後、アメリカFRB(連邦準備制度理事会)の会議で使うような、楕円形のテーブルを挟んで着席した。第一声を発したのは、王氏である。
「ウォンさん、ご無沙汰しております。本日は、わざわざお越しいただいてありがとうございます」
まるで、王氏自身が銀行の一員であるかのような挨拶である。後で聞いたところによれば、王氏は香港ロンドン銀行の重要顧客であり、追加融資もほとんど無条件で受けることができるらしい。
また、ヘンリー・チョウは、私が銀行を辞めた後すぐに香港ロンドン銀行にヘッドハンティングされ、そこで王氏と出会ったということだ。銀行時代にはまったく知らなかったのだが、ヘンリー・チョウも客家で、王氏の引き立てもあり、今では香港ロンドン銀行の大幹部に出世しているらしい。
王氏は、並んで座っている他の役員のことはあまり気にせずに、話を進めた。
「早速ですが、先日来の懸案だった、日本の沖縄への投資プロジェクトの件。銀行役員との合議の結果、全面的にご協力させていただくことになりました」
もしかして、先日の宮里弁護士というのは、この件に関係しているのだろうか。
「それは、よいお返事をありがとうございます」
ウォン氏は満足そうにうなずいている。
そのプロジェクトというのは、シンガポールに続いてカジノの合法化が期待されている日本の沖縄に投資をしようというものである。もちろん、日本でのカジノが合法化されることが前提だが、彼らはその時期は近づいていると考えているようだ。また、当初解禁される候補地には東京や沖縄があるが、過去、中国ではマカオ、シンガポールではセントーサ島とマリーナベイが選択されている。そのため、首都東京よりも、首都から離れたリゾート地である沖縄がまず選択される可能性が高いと踏んでいる。
もちろん、カジノ施設をいきなり建設しようというわけではない。沖縄にはもともとリゾート・アイランドとしての発展の可能性があるから、まず、ホテルやショップなどのリゾート関連のビジネスをスタートさせて、カジノが解禁されるまでにカジノ・ビジネスの外堀を埋めてしまおうという作戦である。
この方法なら、万が一カジノが解禁されなくても、リゾート・ビジネスとして充分収益を上げることができる。
「ところで、このプロジェクトの担当者は、お隣に座った方ですかな?」
王氏は、まるで私と初対面のような口調でいった。
すると、ウォン氏が私にこう語りかけた。
「どうだろう、あなたの事業プランとは違うが、そのかわり100億円どころか、数千億円単位のプロジェクトになる可能性を秘めている。やりがいのある仕事だと思わないかね?」
私の事業プランがすぐに使い物にならないことは、もう充分わかっている、これだけの大プロジェクトに関わることができるだけでもありがたいことだ。私は、「もちろん、喜んでお引き受けいたします」と、答えた。
その後しばらく雑談し、迎えの車に乗って、フォーシーズンズホテル香港に戻る。ウォン氏は、まだしばらく香港で用事があるとのことだったので、まずは私一人で沖縄に向かうことになった。残念ながら、その頃、香港-沖縄直行便は運休していたので、香港-台北-那覇ルートの飛行機を手配した。
(あまかす・ただし)
静岡県に生まれる。同志社大学卒業後、外資系金融機関に就職し、先端金融商品関連で活躍。その際に稼いだ資金を元手に飲食店経営など実業に進出。その事業が困難な局面に達したとき、不思議な縁で客家の老人と出会い、ビジネスの極意を伝授される。現在は、自らの投資会社を経営する傍ら、多数の企業の取締役、顧問などを務める。
「18の金言」に学ぶ、真の幸せをつかむ方法
甘粕正 著
本体価格1,400円
経営危機に瀕した青年実業家が、ふとしたことから客家の老人と出会い、その18の金言に基づく教えで成功を手中にしてゆく物語。
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