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人間とロボットは、どのように共存しうるのか

丹羽宇一郎(元伊藤忠商事会長/元中華人民共和国特命全権大使),石黒浩

2018年07月24日 公開 2023年01月12日 更新

ロボットや技術を通して「人間とは何か」を問う

丹羽 クリエイティブな仕事の分野がもっと高度化、複雑化していくと、人間の働く領域が広がっていく。そうなった時、最大の問題は、「人間とは一体何者か」を考えることだと私は思います。

石黒 おっしゃる通りです。私は世の中のありとあらゆる仕事は、自分に対する問いかけだと思っています。詰まるところ、人間が生きる意味とは「人間とは何か」を問うことではないでしょうか。

丹羽 私は長く経営者を経験して、企業にとっても国にとっても、人間が最大の資産だと思ってきました。人間とは何者かを知らなくては、会社も国も運営できません。フランスの科学者アレクシス・カレルは、世界的ベストセラーとなった自著『人間 この未知なるもの』で、人間の肉体と精神は一体化しているということを科学的な知見から記しています。この本を読むと、ロボットが人間にすべて取って代わる、あるいは超えることは難しいのではないかと感じます。

石黒 私もそう思います。ある意味、ロボットや技術は、人間を理解するための道具でもあるわけです。人間は歴史上、新しい技術が生まれると、必ずロボットっぽいものをつくってきました。例えば、スイスで時計の技術が発明された時、これで人間に似たものをつくろうとして、「オートマタ」(機械人形)がつくられました。

そもそも人間が人間である条件は、「技術を使う」ということです。人間と技術は切り離せません。技術によって生活は便利になりますが、技術を積み上げながら「人間とは何か」を深掘りしていくのが、技術の存在する本来の意味だと私は考えています。

重要なのは、ロボットと人間を区別することではなく、うまく組み合わせることです。極論すれば、ロボットと人間の境界はありません。例えば、人間が臓器をどんどん人工臓器に置き換えていけば、どの時点で人間でなくなるのか。そのうち脳の機能も、部分的にチップで置き換わる可能性があります。もはや生身の身体が人間を定義する要件とはならないのです。

実生活でも、コンピューターはすでにわれわれのライフラインとなっていて、その使用をやめた途端、生活が立ち行かなくなります。ロボットも同じく切り離せない存在となるはずです。

※本記事は、マネジメント誌「衆知」2018年3・4月号特別企画《ロボットの進化によって産業社会はどう変わるのか》より、一部を抜粋編集したものです。

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