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生き方

先送りしない「すぐやる人」が"直観"を大切にするワケ

内藤誼人(心理学者)

2012年02月15日 公開 2024年12月16日 更新

先送りしない「すぐやる人」が"直観"を大切にするワケ

面倒なことは、さっさと片づけてしまうに限ると、心理研究科の内藤誼人氏は言う。

嫌なことは先送りにしたいと思うのは誰でも同じだが、放っておいて気づいたら問題が解決している、なんてことは100%ないのだ。

それでも動けないあなたに贈る、先送り人生と決別するためのグズ脱出プログラム。

※本稿は、内藤誼人著『グズをやめる心理術』(PHP文庫)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

「やりたくないこと」のリストを作れ

まず、仕事に関して、自分なりにやりたくないことのリストを作ろう。

「これは、絶対に、絶対に、絶対にやりたくない!」
「これは、イヤな仕事ではあるが、やってやれないことはない!」
「これは、まあ、ごく普通にできそう」
「これは、どちらかというと好きな仕事」
「これは、絶対にやりたい仕事」

そういう順位づけをしてみるのである。

なぜ、そういう順位づけをするのかというと、「やりたくない仕事」を明確化するためである。そして、明確化できれば、そういう仕事はできるだけ断るか、他人に投げてしまうか、それとも放り出してしまうかを決断することができる。

私のところには、原稿の執筆の他に、いろいろな仕事が舞い込んでくるが、自分の「やりたくないこと」を、常日頃からはっきりさせているので、その場でOKかどうかを相手に告げることができる。

「すみません、少し考えさせてください」ということになると、優柔不断な人間だと思われてしまうし、相手にそのうちお断りの電話を連絡しなければならなくなったりして、非常に面倒くさい。したがって、私はその場で、イエスかノーかをはっきり言ってしまうのである。

たとえば、私の「やりたくないこと」のリストには、「テレビには出演したくない」というものがある。

テレビに出てチヤホヤされるようになると、自分が有名人か何かになったつもりになって、謙虚な人間でいられなくなってしまう(特に私はすぐ調子に乗る人間なので、その怖れは十分にある)。だから、私は、テレビには出ない、と決めている。私は、いつでも腰の低い人間でいたいのである。

そのため、テレビの制作の人から電話があって、「○○という企画の件でお電話をさしあげたんですが。まず番組の趣旨を説明いたしますと……」と話し出そうとしても、「ちょっと待ってください、お話をいただく必要はありません。私はテレビの仕事はすべてお断りさせていただいているので」でオシマイだ。

グズな人は、おそらく根がマジメな人なのであろう。

だから、どのような仕事であれ、きちんと考慮してから引き受けるかどうかを決断するのだと思われるが、そんなことをしているから、グズなのだ。

「そうは言っても、自分にとって未経験の仕事で、やりたいかどうかがわからないときはどうするんですか?」と質問したい人がいらっしゃるかもしれない。

なるほど、それはもっともな質問だ。

そんな場合、自分の直感を信じて、好き嫌いで感覚的に決めてしまっていい。私は、そうしている。「なんとなくイヤだ」と感じたら、すぐに断る。相手の話を聞くまでもない。「感覚的にイヤだと感じたら、すべてお断りする」というルールを決めておけばよいのである。この"感覚を信じる"という点は非常に重要なので、次に項目を改めて説明しよう。

「やりたくないこと」のリストを作っておくと、そのリストに照らして、仕事を引き受けるかどうかを決めることができ、いちいち悩まなくなる。悩んでいる時間は、まったく非生産的だから、なるべく短く、できればゼロにしたい。そのための最高のテクニックが、「感覚で決める」というテクニックである。それをこれから説明しよう。

 

判断に迷ったら、とにかく直感で答えを出せ

自分では、どうしても判断がつきにくいときがある。

そんなときに便利なのが、"直感"である。

直感というと、何となく非科学的な匂いがぷんぷんと漂うが、直感に頼って決断を下すのも、決して悪いことではないのである。むしろ、直感に頼るべきなのである。どうせ考えてみても、判断できないのだから。未知の仕事、未経験の仕事なら、なおさらである。

判断に迷ったら、もう直感で決めてしまおう。

これを自分のルールとしてしまえば、グズグズせずにすむ。

米国ヴァージニア大学のティモシー・ウィルソンは、49名の大学生にジャムの品質に等級をつける、という課題をやらせてみたことがある。もちろん、大学生はジャムの良し悪しなど見抜く訓練はしていない。

このとき、ウィルソンは2つのグループに分けて、片方のグループには、「直感的に、パッと選んで、それぞれのジャムに得点をつけてほしい」と頼んだ。こちらは直感グループである。

もう片方のグループには、「じっくりと考えて、ジャムに得点をつけてほしい」と頼んだ。こちらは熟慮グループといえる。

ウィルソンはあらかじめジャムの味覚専門家にも同じ課題をお願いし、それぞれのジャムに得点をつけておいた。つまり、専門家の得点と、素人の大学生の得点がどれくらい一致するのかを調べてみたのである。

すると、何ということだろう、直感グループでは、専門家との得点の一致率が非常に高く、55%であった。熟慮グループでは、一致率は11%だったから、5倍も良い判断ができたことになる。

好き嫌いだけで、直感的に選んだほうが、かえって専門家の判断と一致する確率が高くなることを、このデータは示している。私たちの直感力は、決して捨てたものではないことがこの実験からご理解いただけるであろう。

「う~ん、どうしよう、この仕事をやったほうがいいのかな?」

と判断に迷ったときには、好き嫌いで、一瞬で決めよう。

直感というのは、結局のところ、一瞬の好き錬いで判断してしまうことだから、それでもけっこう高い確率で正解に近い答えを導くことができるはずだ。

熟慮に熟慮を重ねて、それで正しい答えが出せるのならよい。

しかし、現実にはそういうことはありえないことが多い。だからこそ、直感に頼って、パッパッと選んでいくしかないのではないか、と私は考えている。しかも、直感に頼ったほうが、かえっていい判断ができる、というデータは他にもたくさんあるので、安心してこのやり方をしていただきたい。

 

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