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管理職だけがすべての決定を行う組織は衰退する

南和気(SAPジャパン株式会社 人事・人財ソリューションアドバイザリー本部 本部長)

2018年07月18日 公開 2022年08月08日 更新

 

パルテノン型組織とリーダー型組織

■計画的に人材を育成すること……事業戦略のブレを人材戦力で埋める

事業計画を推進するための人材ニーズをグローバルに把握したら、次は、今どんな人材がどこにいるのかを把握し、ニーズに合わせて人材を供給できるよう、将来に向けて計画的に採用、育成、配置をしていきます。

数年後のあるべき姿を目指して、どのように人を配置していきたいのか、どういった人員構成にしたいのか、どういう人を育てるべきなのか、といったことを定義し、それに向けて候補者たち計画的に経験を積ませ、能力を高められるように育成していくのです。

といっても、昨今の変化が激しい時代においては、事業計画が突然変更になる可能性もありますし、そもそも確固とした中長期経営戦略を定めることが非常に難しいといえます。また、中期経営計画の途中でトップが変わって戦略が大きく変わるということもあるでしょう。

だからこそ、「事業戦略はある程度ブレることが当然であり、戦略の変化に柔軟に対応した企業が勝つ」と考えることが大切です。

■グローバルで人材を組織として機能させること……組織開発・組織活性化

グローバルで人材育成を行い始めると、一つの壁に突き当たります。

それは、「優秀なリーダーを育成するだけでは、組織としての成果が十分にあがらない場合がある」ということです。また、「いくら研修を行っても、ガバナンスが強化されず、海外現地法人で不正やコンプライアンス違反などが解消されない」といったケースもしばしば見られます。

もちろん、優秀なリーダーを育てていくことは、組織運営においては重要な要素です。

しかし最終的には、たった一人のリーダーに依存するのではなく、価値化や理念がしっかりと全社員に共有されていて、ルールで縛る必要もなく、またはリーダーが全部監視する必要もなく、それぞれが組織内で役割を持ち、リーダーシップをもって動いていける――そういったエンゲージメントの強い組織こそが、組織として一番成熟している状態、つまり第三段階の組織といえます。

この組織モデルでは、管理職も役割の一つとなり、管理職がすべての決定を行うのではなく、権限と情報は常に双方向に共有されます。役割によって分散されたリーダーシップが複数の柱となって組織を支え、変化に迅速に対応します。

つまり、ルールやリーダーとのつながりによって組織を運営するのではなく、組織文化そのものにつながるような形です。

私はこのタイプの組織を「パルテノン型組織」と呼んでいます。

アメリカのマーケティングコンサルタント、ジェイ・エイブラハムが提唱した「パルテノン戦略」という経営理論に基づいていますが、一本の大黒柱に頼るのではなく、複数のリーダーによってそれぞれが自立し、支え合う組織が、最も変化に強く、勝ち残る組織と考えています。

リーダー型組織とパルテノン型組織

※本記事は、南 和気著『人事こそ最強の経営戦略』 (かんき出版) より一部を抜粋編集したものです。

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