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還付請求で相続税の過払いが戻ってくる人が8割! 難解な相続税の実態とは⁉

保手浜 洋介(税理士法人アレース代表社員 税理士、公認会計士、行政書士、宅地建物取引士)

2018年08月02日 公開 2022年08月16日 更新

 

「道」と「道路」で納税額が大きく変わる

ところで、なぜ「土地の評価」が難しいのでしょう。

それは、土地というものは一つとして同じものはなく、形がいびつだったり、住みづらかったり、使い勝手が悪かったりなど、その土地独特の“クセ”がある場合が多くあるからです。

相続税法上では、そんな“クセ”を考慮して、土地の評価を下げることが認められます。これを、私たちは「減価要因」と呼んでいます。

では、たとえばどんな条件が「減価要因」となるのか、一例を挙げて解説しましょう。

みなさんは、家の前の道が「道」か「道路」(ここでは建築基準法の道路を指します)かを知っていますか? 日常生活において、私たちは「道」と「道路」をあまり区別して使っていないと思いますが、不動産の世界ではこれら2つを明確に区別しています。

まず、「道」は人や自動車などが往来できるもので、とくに細かい条件や意味が定められていません。

これに対し、「道路」については建物の建築について定めた「建築基準法」という法律の42条によってきちんと定義づけられています。

難しい話になるので建築基準法の細かい規定の説明は割愛しますが、同法42条1項で1号~5号のタイプ別に分類したうえで、4メートル(特定行政庁が指定した区域では6メートル)以上の道幅のあるものを道路と呼んでいるのです。

「道だろうが道路だろうが、そこに住んでいる人間がとくに不便を感じていないならどっちでもいいんじゃない?」と思った人もいるでしょうが、そうではありません。

というのも、建築基準法の43条によって、「建物を建築する敷津は建築基準法に定める道路に2メートル以上接しなければならない」と規定されているからです。

これはつまり、「建築基準法の道路に2メートル以上接していない土地」には建物を建てられないということを示します。

そういった土地は建物が建てられないことから、建物を建てられる土地と比べて著しく取引価格が下がります。こうした側面を相続税の計算時における土地の評価に反映するかしないかで、相続税額に大きな違いをもたらすのです。

しかし、それが道なのか道路なのかについては、外見から簡単には判断できないものですから、不動産に関わる法律の知識がなく、きちんと確認もせずに申告手続きを進めてしまうケースが少なくないのが実情です。

しかも、驚いたことに、建築基準法で認められた道路ではなく、その道に接していても建物が建てられないにもかかわらず、誤って、国税庁によって路線価が定められていることも少なからずあります。

結果として、建物が建てられない土地なのに「建てられる土地」として評価され、高い相続税を収めさせられているケースもあるのです。

これは、大きな過払いの原因なのですぐにでも原因を正してもらいたいものですが、税理士がきちんと土地評価の知識を身につけ、その事実を判明させれば、ムダな相続税を払わずに済むはずのものです。

相続税を依頼するのに最適な税理士は、このような知識を知っているかいないかといったことでも見極めることができるでしょう。

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