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50代飲料メーカー社員「役職定年」後の逆転劇

江上剛(作家)

2018年07月25日 公開 2022年06月06日 更新

50代飲料メーカー社員「役職定年」後の逆転劇


 

五十路の壁(2)「役職定年の壁」の乗り越え方

サラリーマンの分岐点――ポストを返すとき

とにかく50歳前後は同期入社の数が多い。その中で役員になるのは多くて2、3人といったところだろう。役員にならなければいつまでも部長のポストに座ってはいられない。だいたい55歳までには役職定年を迎えるのではないだろうか。

要するにポストを若い奴に譲ってやってくれということだ。役職定年になると社内フリーランスの立場か、あるいは関係会社や、その他、取引先企業に出向なんてこともある。

最近、金融庁の幹部と銀行の将来について話をした。銀行員の大量リストラ時代が到来する可能性が高い、という話題で盛り上がった。そこで結論は、人材を抱え込んでいるのだから、それを外に出して活用すべきだということになった。若いうちからいろいろな会社に出向させ、そこで経営を学び、戻ってきて偉くなる。そんな、川で生まれた鮭が海に出て大きくなって、また川に戻ってくるような仕組みを作ったらいいというのだ。

それはいいということになったのだが、ある幹部が、「そんなに役に立つ人間が(銀行に)いますかね」ということを言い出した。こうなると身も蓋もないんだけど、「人材はいるだろう」という結論になった。たとえ50代になったとしても、取引先に出向し、そこで成果を上げたら、銀行でも偉くするという仕組みを作ればいい。

もったいないと思わないか。人生100年時代なんて掛け声が高い中にあって、50年で未来に暗い影が差し、その後、まったく面白くない人生が待っているなんて信じられない。この少子化の時代に、50代なんてまだまだ貴重な働き手だ。

私は49歳で当時勤めていた第一勧銀(現・みずほ銀行)を辞め、作家デビューした。皆さんだってまだまだやれるし、やらねばならない。50代、世間では、まだまだ若いですねと言われる年代だ。なのに会社ではおじいさん扱い。そのギャップはなぜなのだろうか。それは50代の部長あたりが、仕事に好奇心を失い、安っぽいプライドにしがみついているからじゃないか。

新しい業務や新しいシステムなどに関心を示さない。自ら、もう一丁上がり的な態度でいる。口を開けば、「俺の若い頃は」か「今の若い奴は」だ。これでは自分や周囲の身も心も腐ってしまう。だから早くどこかへ行ってくれということになる。
 

50歳になったら、1人プロジェクトをスタート

50歳というと大学卒なら会社に入って28年ほど経過している。中途採用の人や高卒の人もいるから28年という勤続年数は誰にでも当てはまるわけではないが、それでも相当な期間勤務していることは間違いない。

だったら一度、リセットしようよ。それがいい。50代になったらリセット。役職も何もかも自分の意志で捨てて、裸になって、新入社員の時のようになって、1から会社人生を始める。何をするかは、それまでに考えておく。会社の中でやり残したことを実行に移すのだ。1人プロジェクトというわけだ。50代になったら、私は会社のためにこんなプロジェクトを行って貢献しますから、会社は応援してください、と言うのだ。

50代でようやく部長になったって、そんなポストを後生大事に守っていることなんかにまったく意味はない。そんなポストは返上してしまうに限る。どうせ会社もまったく期待していないのだから。

それでも部長というポストに執着する人もいるかもしれない。だけどそんなものは意味がないことを早く知るべきだ。

そもそも、部長ポストの意味を考えてみよう。会社はあなたに大きな仕事をしてもらいたいがためにそのポストに就けているのだ。それが、もう「いいですよ」と言うのなら、返上せざるを得ないだろう。グズグズ言わないで、「お世話になりました」と言うのが筋を通すことでもある。その代わり、「私のやりたいことをやらせてくれませんか」と頼めばいい。

部長時代は、部下の人事評価や社内会議ばかりに時間をとられていたことだろう。晴れてそこから解放されるのだ。こんな楽しいことはない。もともと、忠誠心の強いあなたの要求だ。会社は「OK」を出してくれるだろう。
 

役職定年、万歳!

ある大手飲料メーカーはポストオフした元部長たちで営業部隊を組織した。「一兵卒になって缶コーヒーを売ります」というわけだ。また、ベンチャー企業を起業させたりしているらしい。そこでは新しいエナジードリンクを開発している。まだ成果があったとは聞いていないが、そのうち精力増進の「マカ」でも加えたエナジードリンクが自動販売機で買えるようになるかもしれない。

私の知り合いも、自動車販売会社を辞める代わりに自らポストオフさせてもらい、歩合制になった者がいる。「自由が欲しかった」と彼は言った。今では、会社の製品をもっとも多く販売するトップセールスマンだ。「部下の管理も不要だからいいね」と彼は満足げだ。

名前だけの地位に恋々としがみつくよりも、よっぽどいい。ポストオフの壁を乗り越えたら、そこには本当の仕事の醍醐味が待っているかもしれない。
 

※本記事は、江上剛著『会社人生、五十路の壁』より一部を抜粋して掲載しています。

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