フィロソフィに基づき、お客さんの期待に応える仕事を
――いまでも社長が直接、幹部や店長さんに対して考え方を伝えていく、というやり方をされているのですか。
清水 幹部や店長もそうですし、パートさんなども含めて、全社員に僕から直接メッセージを伝えます、お店を回って。たとえば5分、10分、朝礼の場などでですね。これをとにかく、時間を見つけて繰り返し行っています。
そこでは、「はなまるフィロソフィ」という、経営理念をまとめたものを使うときがあります。たとえば、「人柄を売る」「お客様を感じる」という文言が記されています。
お客さんに対して、マニュアルっぽい、気持ちの通じないような接客をするのではなく「人柄を売る」。要するにお客さんのことを思って行動するとか、親切に接する、やさしい対応をするなど、このようなことを意識した仕事の仕方をしてほしいとのメッセージです。
また、「お客さんを感じる」というのは先に少し紹介しましたが、お客さんの何げない行動、表情、お話などから読み取れるものがたくさんある。それを店員自ら積極的に受け止め、考えていこうということです。
僕の話は、以上のような接客の基本の意識づけを図ることが入口になりますが、じつはそれよりも多くの時間を、フィロソフィを語ることに割いています。
僕の口から出る言葉の7~8割が、稲盛塾長のフィロソフィを代弁している感じですね。先に述べた「心の構造―利他と利己のバランスの問題」や「人生方程式」などです。
その中で、十分ではないかもしれませんが、稲盛塾長の考え方に対しての僕の理解力が進んだ部分については、自分の言葉で話します。ただ、自信がないところは、お力を借りるしかありません。「僕の言っていることがわからなくてもいい。だけど稲盛塾長がそう言っているから、そうなんだ」という言い方をします。
――このような話を聞きつづけている社員の皆さんは、普通の会社の方に比べたら、正しい生き方、立派な考え方をされているのではないでしょうか。
清水 長い年月をへて、すこしずつ変わってきたと思います。結果として第三者が見たならば、「ああ、20年ほど前に比べて、随分変わったね」という風にみえるかもしれません。
ただ、私も含めた当事者は、それで満足するとかしないとか、そんな意識はないと思います。本当の意味での正しい生き方に到達するのは、できっこないと思います。死ぬまで追い求めても、到達できないと思います。
しかし人間は野放し状態だと、利己心に覆われて欲望の赴くままになってしまいます。そうならないために利己心を抑えることをしなければならないと思います。そして自分に繰り返し利他の心言い聞かせることで、少しはマシな行動に移せるのではないかと思います。「人格を高めようとする努力の繰り返しこそ尊い」と、稲盛塾長も言われています。
だから僕はフィロソフィを語り続けるのです。また、自分自身を律していくためにも。
この、「人として正しいこと」を追求していきながら、目の前のお客さんの期待にとことん応える仕事を地道に続けていく先に、目標としている「店舗数50店舗、売上高100億円」が確実に見えてくる。私はそう信じて経営をしていきます。