世界中で横行するネット世論操作 現政府支持への誘導と批判者の攻撃
2018年12月05日 公開 2024年12月16日 更新
<<SNSを利用するうちに、知らず知らずのうちに思想が操作されている――世界各国でネットによる世論操作が行われていると指摘する『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』の著者である一田和樹氏。
本稿では、世界各国で横行するネット世論操作の目的やビジネス化する現状を、同書の一節から紹介する。>>
※本稿は一田和樹著『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)より、一部抜粋・編集したものです
ネット世論操作の4つのパターン
フェイクニュースを含むネット世論操作について整理したい。
ネット世論操作を整理する試みが、『政府の支援を受けたトロール(STATE-SPONSORED TROLLING)』(Carly Nyst, Nicholas Monaco, 2018年7月19日、INSTITUTE FOR THE FUTURE)で展開されている。これによればネット上での世論操作に対する政府の関わり方には四つのパターンがある。
・政府実行 政府自身あるいは関係組織がネット世論操作を実行する
・政府支持、調整 計画は政府が立てるが、指示と調整を行い、実行は外部にまかせる
・政府扇動、支援 政府が扇動してネット利用者が政府批判を行う個人や組織を攻撃し、世論操作を実現する。四つのパターンの中でもっとも危険
・政府承認、支援 政府が名指しして批判することで、攻撃してもよいという雰囲気を作る
ネット世論操作の基本の目的は国内の支配確立
アメリカ大統領選へのロシアの干渉で、フェイクニュースやネット世論操作を他国への攻撃に用いている印象を持った方も少なくないと思う。
しかし実際には多くのネット世論操作はまず第一に国内の安定を優先している。なぜなら同じ攻撃を他国から受ける可能性があるからだ。
ロシアもまず自国内のネット世論操作を徹底して行っている。その後で海外に手を伸ばした。ほとんどの国のネット世論操作部隊が主に国内を対象としているのもそのせいだ。2017年の資料によると中国、韓国、北朝鮮、マレーシア、タイ、台湾、フィリピン、ミャンマー、オーストリアなど、48カ国が現政権支持のネット世論操作を行っている。
そして、自国内を掌握するためには攻撃的な兵器であるネット世論操作に加えて監視の強化が不可欠となる。通信傍受(要するに盗聴)からSNSの監視までさまざまなチェックが行われている。
フェイクニュースを兵器として使うネット世論操作への対抗は難しい。もしかすると、もっとも有効な手段は自らネット世論操作を行うことかもしれない。ただし、それでは事実を共有して社会を運営することができなくなるのだが。