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生き方

「ポケモンGO」大成功の陰に…ジョン・ハンケが味わった天国と地獄

大熊希美(翻訳家)

2018年12月13日 公開 2024年02月01日 更新

月間10億人が使うグーグルマップ

そして2004年、キーホールはグーグルからの買収提案を受け入れ、社員は全員グーグルに加わることになる。

ジョン・ハンケはグーグルの地図プロダクト部門であるジオチームのリーダーとして、グーグルマップとグーグルアースをはじめ、ストリートビュー、プロジェクト・グラウンドトゥルースなど大規模プロジェクトを次々と手がけていく。

最終的にグーグルマップは月間10億人以上が使う地図サービスとなるまで成長した。キーホールの創業当初にジョンが思い描いていた「地球のデジタルモデルを世界に届ける」というビジョンはグーグルの後ろ盾を得てついに達成された。

キーホールのように成功するスタートアップはほんの一握りだ。自分たちのプロダクトを訴求できる市場が見つからず、資金が底をついて事業を畳むスタートアップは無数にある。

市況が悪くて倒産する場合もあるし、社員の離職が相次ぎ解散するところもある。ビルたちもまた2000年に起きたドットコムバブルの崩壊で多くのインターネット関連会社が倒産するのを目の当たりにしていた。キーホールが彼らと同じ道をたどる可能性は大いにあった。

けれど、キーホールは倒産まで残り3ヶ月となっても最後まで諦めることはなかったし、チームが離散することもなかった。キーホールメンバーは最悪の状況でも自分たちのミッション、そしてリーダーとしてジョンを信頼していたように思う。

それは、ジョンもまた社員のことを信頼していたからだろう。本書にはこんなエピソードがある。IT企業の買収では、買収先の社員を全員雇用することは稀だ。けれど、ジョンは交渉前から社員たちが雇用されることを条件にグーグルの担当者と買収交渉をしていたという。

チームの団結力もさることながら、キーホールには運があった。奇跡的なタイミングで大型案件が決まり、それを契機にビジネスを軌道に乗せることができた。それがなければグーグルへの買収も、ひいてはグーグルマップやグーグルアースの誕生もなかったかもしれない。

スタートアップはリスクが高い仕事だ。けれど、そのリスクを引き受け、数多の困難に打ち勝ち、運を味方につけたスタートアップだけが世界の常識を塗り替える偉業を成し遂げられるのだろう。

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