見えてきた「新卒採用だけ」の限界 天才たちは大学すら卒業せず"億万長者"に
2019年03月13日 公開 2024年12月16日 更新
<<人生をゲームにたとえたときに「人生は攻略できる」とまで言い切る、橘玲氏。ベストセラー&新書大賞受賞『言ってはいけない』の著者である橘玲氏が語る、これからの時代の会社と働き方とは。>>
※本記事は、橘玲著『人生は攻略できる』(ポプラ社)より、一部を抜粋編集したものです。
会社はプロのスポーツチーム
最近は日本でもネットフリックスを利用しているひとが増えてきたようだ。既存の映画だけでなくオリジナル作品も積極的に配信し、アメリカだけでなく世界190カ国以上で事業展開している。
そのネットフリックスが2009年、自分たちの人事方針を説明した「カルチャーデック」という社内文書を一般公開すると、「革新的」なシリコンバレーですら大騒ぎになった。そこには、これまでの常識とはぜんぜんちがうことが書かれていたからだ。
たとえば、有給休暇の制度は廃止する。これは有給がとれないということではなく、上司(マネージャー)が合意すればどれだけ(無制限に)有給をとってもいいということだ。同様に、経費精算の規則も廃止された。
どちらも人事の専門家からは「そんなことしたら大変なことになる」と警告されたが、社員はこれまでどおり常識的な有給の使い方(夏とクリスマスシーズンの1~2週間の休暇と、子どものサッカーの試合観戦など)をし、経費を悪用したりもしなかった。これは、社員を「大人」として扱うということだ。
あるいは、すべてのポストに優秀な人材を採用し、業界最高水準の報酬を支払うこと。ネットフリックスでは、必要な人材を年収数千万円とか、あるいは1億円以上でヘッドハンティングしているのだ。
ここまでなら、「そんな会社もあるのか」で終わるだろう。でもほんとうに驚くのは、優秀な人材を採用するために、これまで会社に貢献してきたそこそこ優秀な社員(でも期待には満たない)には解雇手当をはずんで辞めてもらうという方針だ。
とはいえ考えてみればこれは当たり前で、ポストに空きがなければ、新しい人材に来てもらうことはできない。
ネットフリックスがこうした大胆な人事戦略を採るのは、ビジネス環境がものすごい勢いで変わっているからだ。映画などのDVDの宅配からスタートしたネットフリックスは、オンラインでの映像配信へと事業を大きく変え、オリジナル作品を積極的につくるようになった。
わずか数年でこれほどの変革を達成するためには、従来のやり方にこだわっていたり、新しい技術や知識に適応できないひとには、どれほど功績があっても辞めてもらわなければならないのだ。
ほとんどの日本人は、これを「冷たい」と思うだろう。それは無意識のうちに、会社を共同体(家族)のようなものだと思っているからだ(だから、「家族的経営」を自慢する経営者がたくさんいる)。でもネットフリックスは、会社をプロスポーツのチームのように考えている。
それに対して日本の会社は、ビジネス環境がどれほど変化しても、たまたま新卒で採用した社員だけでなんとかやりくりしようとする。
これは、フォワードがいなくなったら「陸上部のあいつ、ちょっと足が速いからどう?」とか、「ゴールキーパー、身体がデカいからあいつにやらせればいいんじゃないの」とかいっているのと同じだ。そんな素人チームが、メッシやクリスティアーノ・ロナウドがいる世界的なクラブと互角の勝負ができると思っている。
ぼくはこれを「妄想」だと思うけど、その結果はあと10年もすれば誰の目にも明らかになるだろう。