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なぜ台湾では人が穏やかに死ねるのか? 看護師僧侶が見た衝撃の光景

2019年04月16日 公開

玉置妙憂(看護師僧侶:たまおきみょうゆう)

玉置妙憂(看護師僧侶)

<<看護師かつ、真言宗の僧侶である玉置妙憂さん。看護学校で教鞭を取っているなかで、カメラマンだった夫のがんが再発。そしてその死を看取った。

玉置さんの夫はがん治療を拒否し、「自然死(しぜんし)」を選んだ。「あれほど美しい死にざまを、看護師として見たことがなかった」と語る。

しかし、そんな経験を持つ玉置さんが「衝撃を受けた」のが、台湾の在宅医療の現場で見た「看取り」の光景だった。これを日本でも実現できれば、終末期のあり方も変わる、と。

ここでは著書『まずは、あなたのコップを満たしましょう』から、玉置さんが台湾での目にした光景に触れた一節を紹介する。>>

※本稿は玉置妙憂著『まずは、あなたのコップを満たしましょう』(飛鳥新社刊)より一部抜粋・編集したものです

 

驚かされた台湾の在宅医療の現場

いよいよ、人がものを食べられない状態になったら、家族は、私たちは、どうすればよいのでしょうか。

食べものを受け付けなくなったり、噛めなくなったり、嚥下(えんげ)できなくなったり、いったん飲み込んでも戻してしまうようになったとしたら――。

その体には、もう食べ物は必要ないということ。その人も、食べることに興味がないということです。そうなったらQOLよりQOD(Quality of Death/死の質)を考えるべきときです。

本人の意識がなくなった状態で、家族が治療のフルコースをしていいのか。たとえば点滴を続けてもよいのか。難しい問題ですが、逃げずに考えてほしいと思います。

そんな時期になると、本人は「幻視」を見ることも増えてきます。幻視とは、その名の通り、実際には存在しないものを見ることを言います。
人によっては「光の柱」だったり、「大量のアリ」や「人の姿」だったり。

そんなとき、医者はたいてい「精神安定剤を処方して、心を落ち着かせる」という方法をとります。「□□□が見えた!」などと真夜中に大騒ぎして、家族が眠れなくて困るということもあるからです。

2016年に、台湾の在宅医療の現場を視察させてもらったことがあります。
そのときは、現地の台湾人のHさんという方の看取りに立ち会わせてもらいました。ご家族によると、Hさんは「光の柱が立つ」と何度も訴えられるのだそうです。

すると……。

ここが日本と異なるところなのですが、Hさんのご自宅に、医者ではなく、お坊さんがいらっしゃいました。そしてこう答えられたのです。

「万事、順番通りに、うまくいっています」

すると、Hさんは「そうですか。万事うまくいっているんなら安心しました」と、薬を使うことなく、落ち着かれたのです。私は「すごいなあ」と驚きました。

もしこれが日本の場合、医者は「幻視です」と、症状名を告げるでしょう。

そして、患者さんや家族からそれ以上の説明を求められたら「脳が酸欠の状態のため、幻視が見えるのです。ただし、肺機能が落ちてガス交換がうまくできなくなっているので、酸素を補っても治らない」などと答えなくてはなりません。

患者さんやその家族は、頭では納得できるかもしれませんが、モヤモヤとした気持ちは残るはずです。

その点、宗教家であれば、説明は一切いりません。

「万事、うまくいっています」

これは非科学的なようにも聞こえますが、死に向かって「万事うまくいっている」のは、たしかに事実なのです。

このような方法で終末期のQODを高めることができるとは……。
その光景に衝撃を受けて、しばらく呆然としていたものです。

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