「学業よりも人間性の時代は終わった」 企業が学生を選ぶたった2つのポイント
2019年05月20日 公開
<<耳が痛いほどに聞かされる「社会は恐ろしいスピードで変化している。個人も変革すべき」のような話。ただ、そう言っている人も本当に「では、どう変化すべきなのか」を理解しているのだろうか?
将来に対して不安を抱いていたり、現状に不遇感を覚える人たちが急増する日本の状況で、理論社会学者の鈴木謙介氏は、著書『未来を生きるスキル』を発刊した。
同書は鈴木氏が、未来に向けてどうあるべきかを大学教育の現場の状況を踏まえながら提言している「希望論」である。ここではその一節を紹介する。>>
※本稿は鈴木謙介著『未来を生きるスキル』(角川新書)より一部抜粋・編集したものです
半数以上の日本人が「学んでいない」
自著『未来を生きるスキル』では、これからの働き方や生き方を考えていくうえで、「協働」のアプローチが有用な方法であると提案しました。これは、いま世の中で注目される、いわゆる「ひとりイノベーション」とは正反対の方向性です。
繰り返しますが、僕は「ひとりイノベーション」という働き方・生き方を否定しているのではありません。
そうではなく、「AIなど技術の変化によって雇用が失われる」とまことしやかに語られるなかで、ひとりでサヴァイヴする生き方だけが正解となる社会の仕組みは良くないのではないかということです。
ただ、現実には「これからの時代は個人で生き残ることができるスキルを持たなければ」と考え、自身の成長のために自己投資に励む人は増えています。
先に結論を述べておくと、自己投資はとても大切なもの。でも、自己投資や自己成長は、自分ひとりだけが生き残るためではなく、みんなで生き残るために取り組むものだということです。
ところで、みなさんはいま、なにか自己投資をしていますか?
自己投資といえば、資格を取ったりキャリアアップのための活動をしたりと、意識高い系の、ちょっと特殊な人の話というイメージを持たれがちです。
実際に、リクルートワークス研究所の調査データ(※)によると、じつに約51%の社会人が「学んでいない」「勉強していない」との結果が出ています。
その理由を聞いてみると、どの理由にも「あてはまるものはない」、つまり「特に理由はない」というものがもっとも多い回答でした。
この調査では、「仕事にかかわる知識や技術の向上のための取り組み」を自己投資としていますが、社会人の多くは自主的に学んでおらず、その理由も特にないとする結果が出たのです。
では、半数以上の社会人が、自発的に学ばないのにはどんな背景があるのでしょうか。
ひとつには日本全体の産業構造が、急激な変化のない業種に偏っていることが考えられます。
要するに、日々の業務が同じことの繰り返しであり、その繰り返しのなかに多少の変化はあるものの、基本的には仕事の中身自体はあまり変わらない構造のなかで生きている人が多いということです。
そんな状況であれば、あえて自分の時間と労力を割いてまで勉強する必要もないと考えるのは不思議ではありませんよね。先の調査では、医療・福祉や金融、情報通信といった変化の早い業界では、勉強している人の割合が相対的に多いことがこの分析を裏付けています。
たとえば、プログラマーなどの仕事は、日々勉強しなければ技術の変化に置いていかれるため、自己投資の活動が比較的活発になるわけです。
※リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」プロジェクト
http://www.works-i.com/pdf/180807_jpsedmanabi.pdf
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なぜ勉強する人のイメージがネガティブだったのか?