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『古事記』でわかる「日本人が綺麗好きである理由」

2019年07月09日 公開

吉木誉絵(よしきのりえ: 外交政策センター研究員)

吉木誉絵
(吉木誉絵:よしきのりえ)

1986年生まれの新進気鋭の研究者である吉木誉絵(よしき・のりえ)氏が、6月20日にデビュー作『日本は本当に「和の国」か』(PHP研究所刊)を上梓した。

吉木氏は高校時代、アメリカ・ノースダコタ州に留学し、隣州で起こった先住民族の少年の銃乱射事件がきっかけとなり、民族のアイデンティティについて考察を深め、その過程で『古事記』の研究に着手。慶應義塾大学大学院修了後から、コメンテーターとしてテレビなどのメディアに出演。2018年、第一子を出産し、現在は子育てをしながら研究活動を続ける。

『日本は本当に「和の国」か』は「日本人の本来のアイデンティティは、日本の神話である『古事記』が示す「和の国」の姿ではないか」をテーマに日本人の本質を問い直す論考であり、解剖学者の養老孟司氏からも「日本がどのような国か、本気で考えた一冊」と評された。

本稿では同書より、「古事記」から読み解ける日本人のルーツに触れた一節を紹介する。

※本稿は吉木誉絵著『日本は本当に「和の国」か』より一部抜粋・編集したものです。

 

日本人は清浄を好む

高校時代にアメリカに留学し、日本の外から自分の国を客観的に見ることで、日本人のアイデンティティというものを考えるようになった私は、日本の起源が記されている『古事記』を勉強するようになった。

日本神話は、『古事記』と『日本書紀』に記されているが、日本人のこころをより豊かに映し出しているのは『古事記』だということで、まずは『古事記』をじっくり読んでみることにした。

学びを進めていくにつれて、今まで当然のように行ってきた自分自身の生活習慣や考え方、また気質の起源が、『古事記』という大昔の書物に、神々の気質として記されていることを発見し、「私のことが神話に描かれている」と、自分のルーツが神話と直結していることを感じたのだった。

詳しくは拙著『日本は本当に「和の国」か』に述べているが、ここで少しだけ『古事記』に記されている物語と日本人の気質を照らし合わせてみたい。

風習でいうと、例えば、日本人は綺麗好きだとよく言われる。穢れをことごとく避け、清浄を好むという性質がある。日本人は、ほぼ毎日お風呂に入るなどして常に体を清潔に保つ、食事の前にはおしぼりなどで手をきれいにする、靴は玄関で必ず脱ぐ、食品が入った袋などはなるべく床に置かない、など、とにかく汚れを避ける。

『古事記』には、伊邪那岐命(いざなきのみこと)という男神が池で、黄泉(よみ)の国(死者の世界)でまとった穢れの禊(みそぎ)をする場面が描かれているが、これは日本人が清浄を好むという気質を表している一場面といえよう。

昔、とある西洋の経済学者による、「江戸が当時の世界で一番の人口を誇っていたのは伝染病が少なかったからだが、その理由は神道からの禊文化が続いているからだ」との趣旨の論文を読んだとき、『古事記』に描かれている神の行いが、風習として人々の間で長く残り続け、江戸の人口まで影響を及ぼしたのかと驚いた記憶がある。

また、ほとんどの日本人は自分の箸が決まっていると思う。私も、幼い頃に父の箸を自分で使おうとしたら母にすこぶる注意されたのをよく覚えている。これは、日本においては、唾液にはその人の霊力が宿るという考えが古くからあるからだと思われる。

『古事記』には、太陽神の天照大御神とその弟で海原を治める須佐之男命(すさのおのみこと)という神々が自分の口に含んだ物を吐き出して占いをする場面や、箸が川上から流れてくる場面(客人が使った箸はその人の霊力が宿っていて使えないので川に流してしまう)、海幸彦(天照大御神のひ孫)が口に含んで吐き出した玉が皿に強力にくっついたことから、力のある神様だと認識される場面が見られる。

このようにして、唾液にはその人の霊力が宿っていると考えられてきたからこそ、箸などの頻繁に口にするものは、自分の所有物と決まっている。一方で、西洋においてマイ・フォーク、マイ・スプーンなど自分の食器が決まっているとは聞いたことがない。

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