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Amazonを超えたサブスク!? 米国男性が圧倒的に支持する「あのサービス」

雨宮寛二(あめみやかんじ:ジャーナリスト)

2019年07月12日 公開 2019年07月17日 更新

 

サブスクリプションが「時間とお金」を節約する

DSCは寡占市場となっている米国の髭剃り業界に、自社制作によるプロモーション動画で風穴を開けました。このプロモ動画は、僅か1日で50万円ほどの低予算で制作され、時間も約90秒と短いものでした。

しかし、2012年3月に「DollarShaveClub.com - Our Blades Are F***ing Great(ダラーシェイブクラブドットコム――我社の髭剃り刃は優れモノ)」のタイトルでYouTubeに公開されるとすぐに多くの人の共感を集め、2日で1万2000件の注文が殺到したのです。

これまでに2600万回以上も再生されているので、まさにバイラル動画の典型と言ってもよいでしょう。ウィルスが感染するように、口コミやシェア機能によって人から人へと次々に広がっていったのです。動画は短時間で多くの情報を伝達できることから、コンテンツの中でもバイラル性は高くなります。

DSCが制作したこの動画の内容は実にシンプルなものでした。この動画は、DSCの創業者でありCEOである主役のマイケル・デュビン氏がオフィスから工場内を歩きながら、DSCの良さを得々と訴えるというものです。ただ、構成はなかなかのものです。

まず、冒頭で「我社の髭剃りの価格は超安いのに、髭剃り刃の質は業界水準だ!」と放送用語ではNGとされるF-Wordを使って、歯切れの良い強烈なメッセージを視聴者に訴えかけます。

これで視聴者を惹きつけてから、競合他社の価格が無駄に高い点に触れて追い撃ちを掛けます。「ブランド髭剃りに月に20ドルもかけるのがお前は好きかい? そのうちの19ドルはロジャー・フェデラー(プロテニス選手。ジレットフュージョンの広告塔)のところに流れているんだぜ。

グルグル回るハンドルや色んな機能が付いた10枚刃の髭剃りが必要なのかい? お前のハンサムなじいちゃんの時代は1枚刃だったよな!」といった具合です。

さらに、「無駄な機能の付いた髭剃りを買うのはやめて、もっと賢い金の使い方をしようぜ! 俺たちは、ダラーシェイブクラブドットコム、パーティーはもう始まっているのさ!」と言って、DSCの髭剃りに誘導していきます。

最後に、字幕で「Shave time, Shave money(時間と金を節約しようぜ!)」と投げかけて締め括るのです(shaveとsaveを掛けています)。

 

マーケティング費用を小売価格に転嫁しない

このプロモ動画の中では、DSCが激安である点が強調されていますが、それでは、競合に比べてどの程度安いのでしょうか。替刃カートリッジで比較してみると、DSCは、3つのコースから選べるようになっています。

1つ目は、月額4ドルで2枚刃カートリッジが5個配送される「THE HUMBLE TWIN」コース(送料無料)で、2つ目は、月額7ドルで4枚刃カートリッジが4個配送される「THE 4X」コース(送料無料)、さらに、3つ目は、月額10ドルで6枚刃カートリッジが4個配送される「THE EXECUTIVE」コース(送料無料)です。これに対して、大手ブランド事業者の替刃カートリッジの主力商品は、概ね1個で4~6ドルしますので、DSCの方にかなりの割安感があると言えます。

このプロモ動画のメッセージは、勿論、顧客に既存のブランド髭剃りは高いので、無駄なお金を使うのはやめて、我々が提供する経済的な髭剃りを使うようにしようというものですが、社内向けにもメッセージが隠されています。

それは、「無駄なマーケティングにはDSCはお金を一切かけない」という考え方です。それゆえ、DSCはこのプロモ動画以降のマーケティングを全て内部で制作してきました。

これは、DSCの中で今も変わらない流儀になっているのです。つまり、マーケティング費用を小売価格に転嫁しないで、リーズナブルな価格で消費者に髭剃りを提供するという理念です。

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