パワハラ上司ほど隠している「自分の屈辱的な過去」
2019年07月25日 公開 2024年12月16日 更新
パワハラが大きなニュースとして取り上げられた企業のひとつ、スルガ銀行では、2018年にシェアハウス運営会社の経営行き詰まりによって、不正融資問題が発覚した。その背景には、過大な営業目標と過度のプレッシャーがあったようだ。
数字が優先されるあまり、目標未達だと上司から厳しく叱責され、ときには恫喝まがいの暴言を浴びせられることへの恐怖が強く、わが身を守るために書類改ざんという悪に手を染めたという側面もあるように見受けられる。
片田珠美氏は著書『怖い凡人』の中で、この事件を題材にして、パワハラをする上司の心理メカニズムを分析しているので、紹介したい。
※本書は片田珠美著『怖い凡人』(ワニブックスPLUS新書)より一部抜粋・編集したものです
パワハラ上司の原点は、自身の屈辱的な体験
ノルマを達成できない部下に暴言を浴びせたり、暴力的なふるまいで威嚇したりしたパワハラ上司にしても、自分の部署がノルマを達成できないと、その上の上司から厳しく叱責され、場合によっては降格処分を受けかねないので、そういう事態への恐怖から自己保身に走ったのではないか。
しかも、こうした恫喝まがいの叱責は、昨日今日始まったものではなく、上司自身も若い頃から上司に恫喝されながら育ったので、それと同じことを繰り返しているにすぎないと思う。
このように自分がやられたのと同じことを目下の相手に繰り返すのは、「攻撃者との同一視」という防衛メカニズムが働くからである。
「攻撃者との同一視」とは、自分の胸中に不安や恐怖をかき立てた人物の攻撃を模倣して、屈辱的な体験を乗り越えようとする防衛メカニズムであり、フロイトの娘、アンナ・フロイトが見出した(『自我と防衛』)。
いじめ、しごき、虐待…、繰り返される連鎖
このメカニズムは、さまざまな場面で働く。たとえば、学校の運動部で「鍛えるため」という名目で先輩からいじめに近いしごきを受けた人が、自分が先輩の立場になったとたん、今度は後輩に同じことを繰り返す。
あるいは、子どもの頃に親から虐待されていた人が、自分が親になると、自分が受けたのと同様の虐待をわが子に加える。
同様のことは職場でも起こりうる。その典型がスルガ銀行で行われていた恫喝まがいの叱責であり、代々連鎖してきた可能性が高い。
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不安や恐怖が生み出す被害者意識を言い訳にしてしまう