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アメリカで暮らす犬が“幸せ”な理由…飼い主に大人気の「ご褒美サービス」

雨宮寛二(あめみやかんじ:ジャーナリスト)

2019年07月19日 公開 2023年10月19日 更新

 

すでに巨大なペット市場なのに、まだまだ成長を続けている

バークボックスは、この費用項目の中の、フード、フードトリート、玩具の3つを合わせた市場(年間354億ドル)をターゲットにしています。この数値に照らせば、バークボックスが展開する3つのタイプのサブスク・ボックスのプライシングを22ドルから29ドルに設定しているのも概ね妥当であると考えられるわけです。

このように、米国ではペット産業の市場規模が巨大であるばかりではなく、市場自体が成長し続けています。なぜでしょうか。その理由は、近年、犬や猫などのペットが人間に近い扱いをされている点にあります。

米国では、自分の子供と同じようにペットに接し育てる人たちのことを、「ペットペアレンティング」と呼んでいます。こういった人たちは、我が子にお金を使うように惜しみなくペットにお金をかけるのです。

より安全で良質な商品を求めて、多少高価なものでも購入してしまうという行動は、子育てをする親にとっては当然なことなのかもしれません。

こうしたペットの家族化の要因のひとつとして、核家族化や少子化といった社会的な背景が挙げられます。これに加え、ペットの平均寿命が長くなったことで、これまで以上にペットを家族として扱う人が増え、ペットにかける費用も増加するようになったのです。

ペットの家族化といったペットペアレンティングの存在は、バークボックスがターゲットにする顧客層とも一致します。バークボックス利用者の80%は女性で、その多くが「25歳から35歳の子供のいない女性」もしくは「子供が既に独り立ちした45歳から55歳の女性」です。

バークボックスは当初より、「犬は家族の一員である」というコンセプトを掲げており、実際、犬に対して子供と同じように接する人たちに好まれて利用されています。

バークボックスは、こうしたペットペアレンティングの心理を突いて、関連事業の拡大も図っています。

サブスク・ボックス事業の他にも、これまでに、バークパーク(愛犬と飼い主のための屋外クラブハウス)やバークリテール(ヒット商品とシーズングッズ)、バークショップ(バークボックスで買った商品を再度購入できる通販サイト)、スーパー・チュワー(長持ちする愛犬用のモノを配達)、バークバディ(養子縁組などができるサイト)、バークライブ(犬同伴で楽しめるイベントや企画の紹介)、バークポスト(ペット関連の情報サイト)などを手掛けています。

バークボックスで会員の入り口を押さえた上で、こうしたサービスの多角化により、愛犬家同士のコミュニティの構築やファン化の促進で会員のリピート購入の導線を張っているのです。

バークボックスは、ペットペアレンティングといった会員とペット用グッズのメーカーという2つのユーザーグループを結び付けるプラットフォームを構築して、両者の従来からある問題を解決しました。

それまで、会員は、愛犬が興味を持ったり好んだりするグッズを見つけ出すことが難しく、たとえそれが分かったとしても、ピッタリ合う最適なグッズが店舗に行っても見つからないという問題を抱えていました。

一方、メーカーは、自社製品の潜在顧客にリーチするための最適な販売チャネルが見つからないという問題に直面していました。バークボックスは、「ご褒美グッズ」というコンセプトのもとに、会員とメーカーを結び付けることで、これらの問題を解決したのです。

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