クールジャパンよりも…「日本最大の輸出資源はトイレ」と“WTO創設者”が断言する理由
2019年10月31日 公開 2019年11月01日 更新
WTO(世界トイレ機関)の創設者であるジャック・シム氏だ。日本に限らず世界的にも存在する「トイレをタブー視する風潮」に疑問を投げかけ、トイレ事情の改善を通して世界を変えようとしている。
彼は具体的にどういう思いで、どんな活動をしているのか? 同氏がこのたび上梓した著書『トイレは世界を救う』では、彼のユニークな社会変革を追い、世界各国の「ウンコ情勢」や「世界トイレの日」制定までのドラマを紹介している。
ここでは、同書よりジャック・シム氏が日本のトイレを単に機器として輸出するだけにとどまらず、ソフトパワーとしての「トイレ文化」を輸出すべきと提言した一節を紹介する。
※本稿はジャック・シム著『トイレは世界を救う ミスター・トイレが語る 貧困と世界ウンコ情勢』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。
ダイバーシティとトイレ
トイレの問題はおもに発展途上国のものだ。トイレがないことで、毎日たくさんの子どもが命を落とし、女性がレイプにあっている。
しかし、先進国には先進国でトイレの課題がある。
先進国のトイレの課題というのは、LGBTや身体障害者のトイレをどうするか……など様々だ。何も車いすに乗った人だけではない。目が見えない人、耳が聞こえない人など、障害の種類も様々だ。人工肛門(ストーマ)を抱えている人かもしれない。色が識別できない人かもしれない。
トイレの待ち時間平価(Potty parity (male/female) proportion)については、シンガポールで2005年に法律が改正された。女性のトイレ時間と男性のトイレ時間の平均をみると、女性は平均105秒、男性は平均35秒だ。
このことを鑑み、女性トイレの個室数を増やすべきだということが公式に制定され、個室の数だけではなく、鏡の面積も必要だということが決まったのだ。建造物には、この規定が取り込まれることになった。
したがって、2005年以降に建てられた建物において、シンガポールでは女性は並ばなくてもトイレを使えるようになった。香港や中国でも、同じ法律が導入されている。
また、トイレも社会の進化、変化とともに進化を続けている。アメリカでは、自分が自身の性をどのように定義づけるかによって自分が使うべきトイレを決めるべきだ、という議論が当たり前のように起こっている。
多くの大学ではジェンダーレス・トイレが当たり前になっている。ジェンダーというのは──この間、フェイスブックで調べたら、選択できるジェンダーの項目数は少なくとも50種類以上あったが──信じられないほど多様になっている。
生物学的に男性で、男性の外見だが、女性の心を持っている人。女性に生まれ外見は男性で、男性の心を持っている人……といった比較的理解しやすいケースから、ジェンダーの種類がはるかに増加しているというのだ。
社会課題の先進国である北欧ではすでに、公共トイレはジェンダーレスになっているところが多い。最近では東京でもホテルやホステルで、ジェンダーレスな場所が出てきた。トイレというのは、その時代の、またその社会の鏡となる場所なのだ。